東日本大震災後に芸能界に表れた最も顕著な変化は、結婚の増加です。この半年弱で、名の知れた人だけでも30組以上。これは震災前の2倍以上のペースです。

 5月に、夏木マリさんが3年以上続けてきた事実婚から結婚に踏み切ったのは象徴的でした。大物カップルでは、及川光博さんと檀れいさんもそう。及川さんにメールをすると、
「震災後、やはり思うところがあり、気づかされたことがありました。愛し合い、支え合うことの尊さを強く感じました」

 と、理由を明かしてくれました。

 年の差が話題となった加藤茶さん、堺正章さんも「震災婚」と言っていい。震災をきっかけに、家族という絆を意識するようになったことが一番でしょうが、しばらくは芸能マスコミの目が届かなかったことも大きいと思います。
 
 その半面、震災が原因で離婚したカップルはゼロ。震災後の離婚でも、以前から揉めている原因があり、震災が理由ではない。これくらいじゃ離婚はしないのが、芸能人カップルなのかもしれませんが。

 阪神大震災のときとはボランティアのやり方も変わりました。東日本大震災では事務所主導ではなく、タレントが自発的に動いたケースが多かった。

 ロンドンブーツ1号2号の(田村)淳(あつし)くんは、吉本興業と関係なく、電池やカイロを現地に送って支援していた。ブログ、ツイッターという芸能人自らが発信できるメディアができたことや、ハリウッドで活躍する渡辺謙さんのような存在のおかげで、芸能人の意識がグローバル化したことが大きいと思います。

 彼らが動くことで世間は注目し、ときには巨額のお金が動く。それは立派な復興活動の一環だし、政治家以上の役割を果たした芸能人もいたと思います。

 僕ら芸能リポーターは、有事の際には無力かもしれない。でも、ひとりで瓦礫(がれき)の処理をするのは限界があるけれど、影響力のある芸能人の活動を伝えれば、それが一般の人に広がっていく。人が動員され、経済活動につながる。そして被災地にエンターテインメントを届けることで、被災地の活力も戻ると思う。

 震災後、被災者の方から、

「もう普通に芸能情報を伝えてください」

 というメールをもらいました。震災直後は落ち込んでいた僕も1カ月くらい後には、芸能リポーターの仕事を「普通に」やることが、被災者の方の役に立っているんだと思えるようになりました。

 閉塞した状況だからこそ、芸能界くらいは明るくあるべき。今だからこそ、僕たちが芸能情報を伝えることは、すごく重要な意味があると感じています。

 芸能リポーター 井上公造


週刊朝日