あえて菅を辞めさせない 時限総理の有効活用法 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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あえて菅を辞めさせない 時限総理の有効活用法

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週刊朝日

◆政界を再生させるために...小沢、鳩山、仙谷は公認するな◆

「敵対的買収の脅威にさらされている企業みたいなものですよね」

 現在の永田町をこう表現するのは、弁護士の牛島信氏(61)だ。企業合併・買収(M&A)の舞台裏で活躍し、敵対的買収から企業を救って「M&Aの守護神」とも呼ばれる同氏は、さらに力説する。

「国会が取締役会で、国民が株主と考えればいい。株主の利益を無視して社長の菅さんが居座り、取締役会で内紛をやってるんですよ。普通はこんな会社の株は売却しますけど、国民にはそれができないですから。不幸と言うしかない」

 敵対的買収を仕掛けるのは小沢氏か、鳩山氏か、はたまた仙谷氏か。

 そこで本誌は菅首相に提言する。若い世代に引き継ぐため、この「古株3人衆」を駆逐すべきだ。解散・総選挙のカードを切った際、3人を公認から外せばいいのだ。

 牛島氏も、菅首相は脱原発総選挙の準備をしていると見ている。

「菅さんはユニークなことを考えていると思う。節電をアピールしてるのも準備の一環ではないですか? 例年以上に暑い夏を過ごせば、国民は原発で本当にひどい目に遭ったことが身に染みる。菅さんはそっちへ世論を誘導しようとしてるのでは。その機運が非常に高まった瞬間に『脱原発、この指とまれ』と。それで勝てなきゃ、菅さんは総選挙で勝てませんから」

 一方で同氏は、菅首相が名を残すためには、延命をやりきることだと言い切る。

「ズルズルといつまでもやるんです。もうこうなったら、やり通すしかない。菅さんは、ただ生き延びることだけを考えてるんじゃないと思いますしね。ズルズルいく中で、失われた20年の後の日本がどうあるべきか、そういう大きな構想があるはず。あの権力への執着心は、単なる私利私欲とはどうしても思えないんですけどね」

 1997年に小説家デビューも果たし、『利益相反(コンフリクト)』などの作品がある牛島氏。小説家として見た際、現在の菅首相の生きざまは非常に興味深いという。

「小説とは人がある環境に置かれて、どのようにそれを認識し、対応し、克服するかという物語だから、菅さんの物語は魅力的ですよね。今は周囲の誤解を利用することをやってでも、生き延びようとしている。ただものではないですよ」

 さらに小説家としての目で眺めると、おもしろいことがあるという。

「3月11日の朝から、外国人献金のニュースで菅さんは窮地にいた。それが午後になって東日本大震災が起きました。その瞬間、彼は一種の神の啓示に似たものを聞いたのかもしれない。あるいは悪魔と握手したのかもしれないですね。『人生は何が起こるかわからない』と誰よりも強く感じた菅さんに、怖いものはないのでしょう」

◆脱・原発のために...経産省を解体せよ◆

「菅政権が国民のためにやれる最後の大博打は"脱原発宣言"でしょう」

 こう提言するのは経済産業省大臣官房付の古賀茂明氏(55)。東電処理などの問題を所管する経産省の現役官僚だ。

「海江田経産相が今、原発は安全です、と宣言しても、国民は誰も信じようとしない。政府と東電が癒着し、原発を復活させようと目論んでいると疑うでしょう。脱原発の道筋をつけるためにはまず、政府が信頼を回復し、その本気度を国民に見せる必要がある。そのため、菅首相は経産省に徹底的にメスを入れるべき」

 古賀氏は福島原発の事故を「人災」などと主張した著書『日本中枢の崩壊』を5月に出版。ベストセラーとなった。著書では経産省、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院の関係を「(原発を)監視する側と推進する側が、同じ屋根の下で同居する異常な状態」と指摘し、経産省解体の必要性を説いている。

 そして同省の天下りOBを東電がこれまで大量に受け入れてきたことなどで生み出された"癒着"が、原発事故対応の不手際を次々と生じさせる要因となったと分析する。

「菅首相はまず、電力各社の経産省OBを退任させ、癒着を断ち切り、これまでの原子力行政の監督責任を経産事務次官、エネ庁長官、保安院長ら現職幹部に問うべきです」

 松永和夫事務次官は原子力安全・保安院の次長時代に福島原発の堤防の高さを5・7メートルと決めた張本人で、古賀氏に退職を迫ったことで知られる。

 そして古賀氏は原発に代わる再生可能エネルギーの自家発電など電力分野における規制緩和を早急に行う必要があると訴える。

 だが、その大きな障害になっているのは、日本の電力各社が発送電を完全独占している旧来システムだ。

 震災前も電力の自由化はたびたび議論されてきたが、電力会社の巨大な力で潰されてきたという。

 だが、東電を象徴とする電力会社の権威が失墜した今こそ旧システムを瓦解させる千載一遇の時だ。

 経産省出身で慶応大学大学院の岸博幸教授はこう指摘する。

「現在、政府のエネルギー・原子力関連の予算は約1兆円だが、うち4300億円は原発関連が独占し、再生可能エネルギーはわずか650億円に過ぎない。菅首相は発送電分離を前提とした電力自由化の方向性を明確に打ち出し、予算配分のアンバランスを是正し、再生エネルギーの促進に思い切って舵を切るべき」

 菅首相は6月27日の会見で、その第一歩として太陽光、バイオマスなどの自然エネルギー普及促進のための「再生可能エネルギー電気調達特別措置法案」(再生エネ法)の国会成立を自身の退陣3条件の一つとして掲げた。

 併せて瓦礫に含まれる木質バイオマスを燃料とする大規模なバイオマス発電所を釜石など被災地に造り、瓦礫処理と自家発電をビジネスにし、街に電気と雇用を生み出すという復興計画を披露。2次補正で予算をつけることも表明した。

 内閣官房参与の五十嵐敬喜・法政大学教授はこう言った。

「この計画が実現すれば、日本のエネルギー革命の第一歩となる。これを担保するのが再生エネ法なので、首相には是が非でもやり遂げてほしい」
 
◆安心して暮らすために...放射能除染を徹底せよ◆

「福島にお嫁に来ました」を合言葉に、千葉7区から福島2区に国替えして当選した衆議院議員の太田和美氏(31)は、"嫁ぎ先"の避難所で言葉を失った。

「避難所で暮らすおばあさんに『何か足りないものはありますか?』と尋ねると、おばあさんは手を合わせ『みんながよぐしてくれっから何もない。ありがとね』と。ただ、続けてこうも言いました。『(原発が)こうなることはわかっていたんだ。んなもん、つくんねばよがった。早く帰りたい』。私はこの言葉を聞いたとき、何も言い返せませんでした」

 太田氏の選挙区は福島第一原発から30~90キロの間にあり、30キロ圏内から避難してきた人も数多くいる。そんな選挙区に戻るたびに、住民たちからはたくさんの要望や「お叱(しか)り」を受けたという。

「これまで私は県民の皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいで、謝り続けてきました。政府は『年間100ミリシーベルト以下であれば、ただちに人体への影響はない』と言い続け、県民の不安は募るばかり。私の事務所の前にある小学校は、約600人いる全校生徒のうち、100人近くが転校したとも聞きました。今からでも遅くないので、早く政府から安心できる"メッセージ"を出すべきなんです」

 そのためには、まず放射線のきめ細かな測定と、徹底した除染作業が必要だと太田氏は言う。

「住宅地図を使って、草っぱらや公園の砂場といった子どもたちの遊び場、それに通学路の脇や側溝など、細かく放射線の計測をする必要があります。そして、どんな放射性物質があるのか、それが何年後にはどれくらい減るのかを明確にさせなければいけません」

 その上で、太田氏は、国が責任を持ってそれを減らしていく努力をしなければならないと説く。

「自衛隊が次々と被災地から撤退していますが、線量の高い地域にもう一度自衛隊を動員し、一斉に除染作業をしてもらいたい。それくらいの力強いメッセージが政府から欲しいですね」

 また、内部被曝の調査についても、太田氏は政府の対応の遅さに憤りを感じているという。

「ホールボディーカウンターを使った健康調査を一刻も早く実施してほしい。ただ、『機械が足りない』とか『予算がかかる』とか、いろいろな言い訳をされ、極めてスピードが遅い。それなら、子どもだけでも優先的に尿検査を実施してもらいたい」

 季節はこれから、夏から秋へと変わっていく。風向きなどで、ホットスポットも移り変わっていく。放射性物質への「絶え間ない監視」が必要なことは言うまでもない。

「これまで、何度も政府や関係省庁に掛け合ってきましたが、まだまだ非力で、自分が情けなくなります。ただ、政治というものは、トップが決断さえすれば、すごい力が出せるもの。なので、菅首相には迅速な決断を求めたい」  (本誌取材班=篠原大輔、村岡正浩、森下香枝)


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