東 ロシアでもそうですけど、基本的に革命は「亡命知識人」が起こすんですよね。その点では僕は海外への頭脳流出を歓迎すべきだと思う。この国はいちど、徹底して没落して、外国に出た人たちが戻って根本的に改革するようなことがないとだめかもしれない。

堀江 でも、日本にいる価値もある。単純にそれって食べ物だったりするんですよ。こればかりは日本がナンバーワンだと思う。食文化とロケット開発があるから僕は日本に残っている。でも、僕は出所したら"ノマド"になるつもりです。今後はこういう対談もインターネットのテレビ会議システムを利用してお受けすると思いますよ。

東 あれ、さっきおっしゃった政治の話はどうするんですか!? 転々としてるノマド集団に選挙の票は集まらないですよ。それは近代国家の原理に反してます。

堀江 だって近代国家の原理に反して生きたいんですもん(笑)。

東 個人的にはいいと思いますが......。堀江さんが政党政治と選挙の枠内で強烈なリーダーシップを獲得したいのなら、生活のすべてを政治に尽くしますとならないと風は起きないんじゃないですかね。

堀江 そうかなー。

東 堀江さんは先日の記者会見でも謝罪していましたし、質問に対しても真摯に答えていました。けれど、日本人の大方の反応からすると、まず「スーツを着ていないのがけしからん」「会見を始める前に立って深々と頭を下げていない」となったりするわけでしょう。反省の色がないと報道される。無理ですよ。

堀江 じゃあ、橋下さんがやる。できれば、僕は橋下さんのサポートをしたい。役に立つかどうかはわかりませんが。

東 なるほどね。

堀江 でも、気分が変わると自分で4年くらいどっぷりやってみようかとなるかもしれない。まあわからないですよ。2年半後の気持ちなんて。もしかしたら、心底嫌になって絶対に日本から出ていってやるとなってるかもしれない。

東 ちょっと観念的な話になりますけど、内発的な何かでは、この国は変わらない。外側から全然違う正当性を調達してこないと変わらない。

堀江 となると、やっぱり宇宙開発ですかね。

東 外っていえば外ですよね。

堀江 実は宇宙開発って意外と周りから馬鹿にされるんですよ。「なんでそんなことやってんの?」ってよく言われるんです。だけど、成功するとガラリと見方が変わると思いますよ。

東 それはそうですね。

堀江 ロケットはかなりみんなの心を刺激すると思いますよ。「はやぶさ」であれだけ騒がれますからね。

東 いずれにせよ、そういう大きなことを考えて、夢を追っている人間が打たれる国というのは本当に困ったもんですね。

堀江 やっぱり最終的には亡命するしかないのかなー。

東 まあ、亡命して革命というのはスタンダードではある。そんなこと言っていると、僕も「破防法」とかで捕まりそうな気がしますけどね(笑)。 (構成 本誌・竹内良介)

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ほりえ・たかふみ 1972年、福岡県生まれ。ライブドア社長だった2006年に証券取引法違反容疑で逮捕。一貫して無罪を主張したが、11年4月、最高裁に上告を棄却され、懲役2年6カ月の実刑が確定することになる。

「六本木で働いていた元社長のアメブロ」

http://ameblo.jp/takapon-jp

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あずま・ひろき 1971年、東京都生まれ。作家・批評家。「批評空間」でデビュー。著書に『存在論的、郵便的』『動物化するポストモダン』など。2009年に発表した初の小説『クォンタム・ファミリーズ』で、第23回三島由紀夫賞を受賞。出版社コンテクチュアズを起業し、言論誌「思想地図β」を発刊中

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今回の対談の全容は、6月7日(火)に朝日新聞出版から発売された堀江氏の著書

『収監 僕が変えたかった近未来』

に収録されています


週刊朝日