「ゆとり世代」の鍛え方 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「ゆとり世代」の鍛え方

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週刊朝日#仕事

 東京・汐留の電通本社2階とJR新橋駅をつなぐ通路がある。ちょっとしたイベントができるくらい広い。

 そこにスーツ姿の男女が三三五五集まりだしたのは06年4月14日、金曜日の午後5時を少し回ったところだった。20代、30代、40代の男女が数人ずつ、固まってはヒソヒソ話している。花束を持つ者もいた。

 警備員が「何かイベントですか」と聞いても、一様に首を振って「いいえ、別に」と言葉を濁す。赤い毛布を巻いたような太い筒を抱えた屈強な男は、警備員の目を避けるようにして立っていた。

 5時半を回り、電通社内に退社の挨拶を終えた柴田明彦は、本社1階から新橋駅に向かうべくエスカレーターに乗った。彼は社内の気配から、苦楽を共にした後輩たちが何か企んでいるらしいと、感づいてはいた。

 2階でエスカレーターを降りた途端、彼の足が止まった。その数400人は優にいたろうか。一斉に拍手が起こったからだ。

「花は桜木、男は柴田。柴田さん ありがとうございました」と大書した、3メートルはある横断幕が目に入った。

 気が付くと、足元に赤いカーペットが敷かれ、駅に向かって延びていた。太くて赤い筒と見えたのは、このカーペットだった。

 脇から「この上を歩いて下さい」と、耳元にささやいたのは、退社を思いとどまるように、泣いて訴えた後輩の一人だった。

 柴田が人事異動に納得できなくて退職したことは、電通社内でも社外でも知られていた。

 彼はカーペットの両側から起こる拍手に会釈で応えながら、一歩一歩進んだ。こんなにゆっくり歩くのは、結婚式以来のことだった。右から左から、花束を次々と渡された。

◆人は誉めるより叱ってやること◆

 背中を突(つつ)かれて振り返ると、彼が5年前に新入社員研修のチームリーダーをした時の女子社員だった。涙をためた目が「お花は私がお預かりします」と言っていた。彼女は、逞(たくま)しい男性社員たちが手放しで号泣するのは見たことがなかった。

 彼女が入社した01年4月、約160人の新入社員は10人前後の班に分けられた。第20班のチームリーダーを務めたのが柴田である。このリーダーが社内で「鬼」と呼ばれていることは、新入社員の間で知れ渡っていた。

 他の班では、夜の研修は週1回か2回だった。しかし鬼からは研修初日に、
「第20班は毎晩やるぞ」
 と、言い渡されていた。


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