視察先選びも「小沢潰し」意識!?

菅直人首相は4月1日、震災後初となるフリー記者も入れたオープンな記者会見を開き、「復興」への決意を語った。

 菅直人首相は4月1日、震災後初となるフリー記者も入れたオープンな記者会見を開き、「復興」への決意を語った。

「3月11日の震災から2週間となる25日にやった前回会見の評判がものすごく悪かったんで、今回は若手の意見なども入れてスピーチを作ったんですけど、どうでした?」(官邸関係者)

 しきりにウケを気にする官邸だが、東京電力や原子力安全・保安院で連日、濃密な会見をこなしている記者たちからすれば、肩透かし感は否めない。身内である官僚からも、

「『エコタウン』とか『福祉都市構想』と言ってるけど、福島第一原発が危機的な状況なのに、そんなことを言ってる場合か。福島なんか、これからどこまで住めるのかもわからないのに」(中堅財務官僚)

 と呆れられる始末。霞が関でも、官邸が機能していないことへの不満がたまりにたまっているのだ。

「菅首相がやたらと周囲に当たり散らすそうです。特に、震災の翌日に強行した首相の福島第一原発視察が原因でベント(水蒸気の放出)が約7時間遅れた--と報道で指摘されてからがひどい。こんなときに怒ってちゃダメだよね。官邸が機能しなきゃ、動くものも動かない」(経産省OB)

 その結果、各省庁の官僚たちは一部を除いて、"ちょーヒマ"なのだという。

「原発の監督官庁である経産省だけは併任の連発で、すさまじい忙しさのようですが、ウチ(警察庁)は、遺体確認などの仕事がある鑑識や刑事1課、警備など一部の部署を除いて、実はヒマです」(若手警察庁官僚)

 他省庁の官僚たちも、家族を実家に帰したため、

「家に食事がないから結局、夜は飲んじゃいますよね。海外から原発専門家が来ても抱え込むのは経産省だから、僕らはすることがない」(外務省中堅幹部)

 戦後最大の国難なのに、国を動かすこの人たちがヒマで本当にいいのか、と心配になってくる。
 すっかり白ける霞が関と相反して、菅首相は不思議と意気揚々としているように見える。4月2日には久々に被災地視察に出かけたが、これには、こんな裏事情があるのだという。

「行き先が岩手県陸前高田市と聞いて驚きました。菅さんは、小沢(一郎・元民主党代表)さんにケンカを売るつもりかって、みんな言ってます」(民主党幹部)

 もともとの計画では、宮城県石巻市を訪問することになっていた。それがなぜか撤回され、次に官邸が指定してきたのが陸前高田市だったという。

「地元の黄川田徹・衆議院議員(民主党)は、いまも家族が行方不明で声をかけるのも痛々しい。黄川田さんは小沢さんに近い議員だし、岩手県ですから市長も当然、小沢さん寄りで菅さんに批判的。『本当にいいのか』と何度も念を押したが、『変更はしない』というので仕方なく決まったんです」(同前)

 というのも、菅首相やその周辺にはこんな思惑があるようなのだ。

「陸前高田市を選んだのは、福山哲郎官房副長官だと言われてます。『小沢さんのお膝元でいちばん被害が大きい場所に行って徹底的に潰(つぶ)す。菅さんの大きさを見せつける』なんて言ってるそうです」(別の官邸関係者)

 震災被害ですら党内抗争のネタにしようというのか。ある経産官僚がAC(旧公共広告機構)のテレビCMをもじってこう言った。

〈「原発メルトダウン」といえば「官邸メルトダウン」という
「最小不幸社会」といえば「宰相不幸社会」という
「浦安液状化」といえば「民主党液状化」という
こだまでしょうか? いいえ、誰でも〉

週刊朝日