A(夕刊紙記者) 日ハムの自主トレがこれだけ注目されたことなんて過去に例がないだろう。

 B(全国紙記者) 05年にダルビッシュ有が入団したときだってこんなに騒がれませんでしたよね。

 C(スポーツ紙記者) 新人選手の歓迎式典が行われた1月16日には、鎌ケ谷スタジアムに約1万1千人の観衆が集まった。報道陣だけでも300人近く。その後も連日100人超えだからね。

 D(スポーツライター) スポーツ記者だけでなく、テレビ各局のワイドショーが集結した。斎藤のコメントを取れるのは基本的に練習後のみで、グラウンドから寮までの100メートル弱の間に、いわゆる「ぶら下がり」をやるんだけど、多くの報道陣やカメラが殺到するからまさに修羅場と化す。

 A あそこは坂道になっているから危ないんだよな。

 D 僕もテレビクルーに押されて転んでしまった。斎藤の歩行にも支障が出るほどで、さすがに球団スタッフが自制を促したね。

 C リポーターたちのトンチンカンな質問もあった。

 B 「今日は天気が良くてよかったですね」だとか「朝ご飯、何食べましたか?」だとか。揚げ句の果てに、同じ新人の乾真大を斎藤と間違えてコメントを求めたリポーターもいた。乾も苦笑いしてましたけどね。

 A 斎藤の偉いのは、どんな状況でも嫌な顔せずに対応するところだよな。

 B ワンクールに1回、囲み取材が設けられているけど、現時点ではわれわれの質問もありきたりになりがち。普通なら「またかよ」と思うかもしれないが、真摯に対応してくれます。

 C それでいて、「ぶら下がり」ではユーモアも交える。「夜もこっそり練習しているの?」と聞いたら、「夜はしていません。あっ、でも夜もしているって言っちゃいますか? ストイックな感じがしますもんね」なんて笑顔で答える。

 D 報道陣が喜ぶことを即興で答えられるのは才能だよね。口うるさいわれわれも、日に日に籠絡されている感じ。

 A 球団幹部もしかりで、山田正雄GMなんか、目尻が下がりっぱなし。「噛みつきたくなるくらい可愛いでしょう?」だって(笑)。

 B 球団側の気の使いようは相当なものですね。何ていったって営業効果が抜群ですから。

 C 入団早々、タオルやTシャツといった佑ちゃんグッズが作られたが、あっという間に売り切れた。21日からは第2弾として、シリアルナンバー入りのマグカップまで発売している。

 D 練習を見る限りでは、チームメートにも溶け込んでいるようだよね。

 A 同じ大卒新人の乾や榎下陽大と仲がいい。キャッチボールの相手はほぼ乾だし、寮内では3人でゲームをやって過ごしている。

 B 彼らと斎藤は、アマ時代から選抜チームで一緒にプレーしていて気心が知れている。斎藤が孤立しないために指名したと言われているほどです。

 D 他の若手選手も、「これだけ注目されると下手なトレーニングはできないから刺激になる」と話している。

 C 一方で、「一日中、寮の前にマスコミがいるからコンビニにも行けない」とこぼす選手もいる。出てくる選手に片っ端から斎藤の様子を聞くメディアもあるからね。主力選手はその辺をわかっているから、今年は鎌ケ谷以外で自主トレをする選手が多かった。

 A なにせ自主トレの休日でも、寮の前にはわれわれが大勢たむろしているんだからね。斎藤は最初の完全休養日だった19日には、朝早くから買い物に出かけたらしいけど。

 B もっとも、入りと出をつかまえられたメディアはなかったので、どこで何をしていたかは確認できていないんですけどね。

 C デートじゃなかったのかな?

 D その辺は球団よりも、斎藤のメディア対策を仕切っている大手広告会社のスタッフが神経を使っているみたいだけど、若いんだから恋人くらいいてもいいんじゃない。

 B 斎藤だって特別、堅物じゃないですしね。学生時代は、出入りの運動具メーカーの人間にエッチなDVDを差し入れてもらったりしてたみたいだから(笑)。

 A キャンプになれば、主力選手たちとも一緒になるわけだけど、斎藤ならうまくやっていけそうだな。

 B エースのダルビッシュとはすでに昨年末、食事をともにしていますからね。斎藤自身も「目指すところはダルビッシュさんなのかなと思います」と話しており、ダルビッシュ門下としてチームの輪に入っていくんじゃないですかね。

◆指導法めぐって首脳陣が対立?◆

 C ただ、キャンプでは、斎藤がチームメートに溶け込む前に、引っ張りだこじゃないかな。OBや野球解説者、女子アナたちが群がるような感じになって。

 D スーパースターのおこぼれにあずかろうとしてっていうこと?

 C そう。昔、オリックス監督時代の仰木彬さんが酒場の女のコに「イチローに会わせたる」と言ってイチローを呼び出したりしてたじゃない? 

 A あったね。いい格好したいという気持ちはわかるけどな。実際、斎藤も昨年末には早大OBからのお座敷がすごかったらしい。

 C 酒場に呼び出すくらいなら他愛ないことだけど、「斎藤を育てた」という手柄をほしがる存在も少なくないからね。

 B その点は吉井理人投手コーチも懸念していますよね。「教えたがる人がいっぱい寄ってくる」って。

 D で、その最右翼が梨田昌孝監督(笑)。捕手出身で、昔から投手のフォームなんかをいじりたがる傾向がある。吉井コーチとは微妙に考え方が違うだけに、斎藤の指導法をめぐって意見が割れることもあるかもしれない。

 C 僕が心配するのもそこなんだ。周囲の喧騒をよそに、吉井コーチは斎藤を冷静に見ているでしょう?

 B 「先入観を持ちたくないから体ができあがるまでは投球を見ない」と言っていますが、学生時代のピッチングからは、「プロで通用するにはまだ課題が多い」と見ているようですね。

 D スカウトたちからも、踏み込んだ際に左足に体重が乗ってこない点が指摘されている。これだと、左肩が早く開いてボールがシュート回転してしまう。

 C だから吉井コーチは、場合によっては2軍でじっくり鍛えるという判断をするかもしれない。一方で、今年で2年契約が切れる梨田監督は、人気のある斎藤をうまく使いながら結果を出したい。早々に斎藤の1軍キャンプ参加も決めた。ここで対立なんてことにならなければいいけど。

 A とにかく、久々に現れた"1面"を張れる選手なんだから、つまらないことで潰されず、球界を背負う投手に育ってもらいたいね。  (構成 本誌・吉田洋平)


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