(2)国際線の旅客単価が平均30%も上昇するはずがない

 国際線の旅客単価は2011年度には平均5万1千円と、09年度の3万9千円の3割増しになる。国内線も1万6千円を維持し続けるとしている。

 だが、国際線ではエアアジアなどの格安航空会社が次々と日本就航を予定している。国内線も格安のスカイマークが路線拡大を計画している。しかも、羽田空港と成田空港の容量は今後拡大し、格安航空会社の参入がさらに容易になる。運賃は安くなっても、上がることはない。あまりに楽観的すぎる想定だ。

 (3)エコノミー席は相変わらず団体客頼み

 国内線旅客数の内訳をみると、団体旅行が2010年度でも36%と、昨年度の37%と変わらない。エコノミー席を利用する団体旅行は旅行会社頼みの販売のため、JALはこれまで多額の報奨金を旅行会社に支払い、これが経営を圧迫してきた。こうした構造は残されたままだ。

 (4)現実には飛べない便が計画されている

 10月に国際化する羽田空港は当面、2500メートル滑走路しか用意できないため、長距離便は旅客数や貨物量を制限しなければならない。にもかかわらず、羽田発パリ行きの便は旅客も貨物も満載を想定。また、小型機B737は機体構造上から貨物がほとんど積めないが、計画案では満載できるとしている。

 どの疑問点も航空業界の人間なら誰でも知っていることばかり。企業再生支援機構はJALに丸め込まれているのだろうか。

■JAL更生計画案の概要

(会社更生法申請時との比較)

    項目            会社更生法の適用申請をした1月時点    今回の更生計画案

銀行などの債権カット率                 83%               87.5%

企業再生支援機構の出資額          3000億円              3500億円

主力銀行に要請する新規融資額        5000億円             約3200億円

国内・国際線の撤退路線数            31路線                45路線

グループ全体の人員削減        3年間で約1万6千人        今年度中に約1万6千人

2013年3月期の営業黒字           904億円                1175億円

注:原稿中のデータ、肩書などは記事発売当時のままです。

週刊朝日