──6月18日のページにはこんな記述もある。

<冒頭、雇児局(編集部注=雇用均等・児童家庭局)から原稿料のプール金がみつかったが、知っているかと聞かれた。(中略)当時、障害部にもあったと資料を見せられる>

 遠藤検事から「裏ガネあるでしょ?」と言われたので、「裏ガネって何ですか? 裏ガネなんてありません」と答えました。すると、遠藤検事は「裏ガネではなくてプール金です。確かにプール金は違法ではありません」と認めましたが、何か私にやましいところがないか探していたのだと思います。ほかにも、私の業務日誌に、ある政治家の人から「君は危ない橋も渡ってくれた」と感謝された、という記述があるんですが、そのフレーズについても調書にされました。弁護士の先生と相談して、事件とは関係ない時期の話だからと署名はしませんでした。すると、保釈請求の際に検察が「サインをしていない調書があるから保釈を認めるな」と意見を出してきたのにはびっくりしました。

──冷静でいることを心がけていたという村木氏だが、一度だけ感情をあらわにしたことがあるという。

 遠藤検事から「どうせ執行猶予がつくのだから、大した罪ではない」と言われたときです。私は喜怒哀楽のなかでも、「怒」が比較的少なくて、周囲の人からも「沸点が高いね」と言われるのですが、このときだけは怒りで涙がこぼれました。われわれふつうの市民にとっては、犯罪者にされるか、されないか、これまで築いてきた信用を失うかどうかの問題です。検事さんの物差しは特殊だと訴えました。すると、遠藤検事は割とまじめな人で、休憩の後、「さっき物差しが違うと言われましたが、確かにそうかもしれません」とおっしゃいました。ほかにも、私が複数の知り合いから「検察はストーリーを無理やりつくって、それに合わせた供述をとるから気をつけて」とアドバイスされた話をすると、「全員がそう言ったんですか?」と聞かれて、「例外はなかった」と答えると、がっかりした様子でしたね。

──遠藤検事以上に違和感を感じたのが、7日目から取り調べにやってきた国井弘樹検事だった。

 遠藤検事は私の話を丁寧にメモにとりながら聞いていたのですが、国井検事は、私の話も聞かず、自分の考えるストーリーを一方的に話すと、「つまりこの事件はこういうことなんですよ」と言ってきました。

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