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中学受験のダークサイドに堕ちないために、親は何を心がけるべきか? 中学受験を描いた、漫画『二月の勝者』の作者・高瀬志帆さんと、小説『翼の翼』の作者・朝比奈あすかさん、ノンフィクション『勇者たちの中学受験』を上梓したばかりの教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、過熱する一方の中学受験の問題点について、熱論を繰り広げました。中学受験関係者必見の鼎談全3回、後編をお届けします。
※こちらは東洋経済オンラインからの転載記事です
>>前回の記事はこちら【無料「灘受験ツアー」が子どもに与える怖い影響】
見えてない世界をそのままにして社会がよくなるのか
おおたとしまさ(以下、おおた):中学受験には構造的な問題点やいびつさみたいなものがあるって話をしてきました。それに対して大人にできることって、どんなことですかね?
高瀬志帆(以下、高瀬):漫画にも描いているつもりなんですけど、あまりの伝わらなさにちょっと困ったな、と感じている部分でもあります。貧困家庭の描写が出てきた時に「中学受験漫画にこういうのいらないよね」っていう人もいて……。
何が言いたいかというと、見えてない世界を、見ないで過ごせる人たちが、見ないままで過ごして、はたして社会全体がよくなるのかということです。「本当にこのままでいいの?」っていうメッセージは、『翼の翼』(光文社)からも『勇者たちの中学受験』(大和書房)からもすごく伝わってくる。そういう大きなものを描くために中学受験っていう世界を深掘りして描いていますよね。
子どもたちには、その全体が見える人になってほしい。少なくとも見ようとする人であってほしい。もう少し、人が幸せに暮らすためにはどうすればいいかっていう俯瞰した視点で子どもたちに接することが、大人もできないのかなっていうのは思っているんです。

おおた:『二月の勝者』(小学館)では、貧困問題も描いているし、教育虐待を受けて不登校になっている子も描いていますよね。教育にまつわるいろんな問題の結節点に黒木蔵人という主人公がいて、彼は目を背けたくなるところにちゃんと向き合う。その視野の広さですよね。
だから僕は「『二月の勝者』はただの中学受験漫画じゃない」って言ってます。朝比奈さんは、『翼の翼』のあとに『ななみの海』(双葉社)を書かれています。たぶん私たちの身近にああいう子がいるんですよね。親と一緒に暮らせない子が。気づかないだけで。
朝比奈あすか(以下、朝比奈):施設で成長している子は、今、全国で2万5000人いますし、家事や介護を引き受けているヤングケアラーも、数ははっきりわかっていないけど、たくさんいます。そういう子たちは、生きるために必死で、勉強どころじゃない。
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