ムスリムがみそ煮込みうどん店に殺到するワケ

永谷 正樹東洋経済

名古屋市千種区にあるみそ煮込みうどん専門店「山... (16:18)東洋経済

名古屋市千種区にあるみそ煮込みうどん専門店「山... (16:18)東洋経済
ハラール対応の「名古屋めし」ができるまで

 日本人にとってはあまりなじみがないが、ベジタリアンや宗教上の理由で肉を食べない人が世界中にはたくさんいる。彼らが日本へ旅行したときに困るのが食事。東京や大阪ではベジタリアン(ヴィーガンも含む)やイスラム教徒向けにハラール対応している和食店は増えつつあるが、名古屋ではインド料理やトルコ料理、モロッコ料理などが中心。せっかく日本に、それも名古屋へ来たのに、名古屋めしが食べられないのである。

 そんな中、名古屋市千種区にあるみそ煮込みうどん専門店「山本屋 大久手店」は昨年12月より、ムスリム対応のみそ煮込みうどんをはじめ、手羽先やみそ串かつなどの名古屋めしの販売をスタートさせた。

●ムスリムの友人に店の料理を食べさせたい

「店を継ぐ前に、中古の建設機械をマレーシアやインドネシア、サウジアラビアなどに販売していました。取引していた外国人バイヤーは今でも友人としてつき合っていまして、彼らにみそ煮込みうどんを食べてもらえないかと思ったのがきっかけです」と、話すのは、店の5代目で山本屋の専務取締役、青木裕典さんだ。

「山本屋 大久手店」では、2014年ごろからインバウンドにも積極的に取り組んできた。多言語のメニューを作成しただけではなく、うどんの手打ち体験を企画して、海外の旅行情報サイトに載せた。

 その内容は、名古屋の食文化や八丁みその歴史、みそ煮込みうどんの発祥などの話を聞いた後、麺のこねと延ばし、切りを実際に体験してもらうというもの。もちろん、自分が打った麺は食べることができる。これが大ヒットとなった。

「食事に親子煮込みうどんのほかに天ぷらとみそおでん、ご飯、漬物が付いて参加費は4200円。しかも、開店前の10時と客足の少なくなる16時のスタートにもかかわらず、満員御礼。中国人の富裕層が多かったので、アルコールを追加注文したり、高いワインもよく出ました」(青木さん)

 中国人観光客の「爆買い」ブームが終わると、うどんの手打ち体験の申し込みもだんだんと少なくなっていった。そんな背景もあり、ハラール対応メニューは、これから増加するといわれるイスラム圏からの観光客の来店にもつながると思った。そこで青木さんはハラールについて認証の手続きなどについて調べた。

「ハラール認証の飲食店として登録するには年間約100万円から200万円と、ものすごくコストがかかることがわかったんです。もともとは友人に食べさせたいと思って始めたことですし、月に10人くらい来てもらえればという程度の考えでしたから、諦めざるをえませんでした」(青木さん)

 しかし、ひょんなことから東京・浅草に本社があるフードダイバーシティの代表取締役、守護彰浩氏と出会い、ムスリム対応の飲食店は、ハラール認証団体からの認証取得を受けないまま商品を提供しているところが大半であることを知った。

 そこで、ムスリム対応の店が情報を公開し、食べられるかどうかはムスリム(イスラム教徒)に判断してもらうという「ムスリムフレンドリー」という事業に参加することにした。

「ハラールは必要不可欠ですが、イスラム教の宗派ごとにさまざまな考え方があるんです。すべてに対応するのは不可能ですし、実は全世界共通の基準も存在しないんです。ムスリムに開示するのは、ハラールに対する6つのポリシーです。それを見て、店を利用するかしないかをムスリムの判断に委ねるというわけです」(青木さん)

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