ムスリムがみそ煮込みうどん店に殺到するワケ (2/2) 〈東洋経済〉|AERA dot. (アエラドット)

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ムスリムがみそ煮込みうどん店に殺到するワケ

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永谷 正樹東洋経済
名古屋市千種区にあるみそ煮込みうどん専門店「山本屋 大久手店」にはムスリムの客が月に300人訪れ、手羽先も食べる(写真:青木さん提供)

名古屋市千種区にあるみそ煮込みうどん専門店「山本屋 大久手店」にはムスリムの客が月に300人訪れ、手羽先も食べる(写真:青木さん提供)

「山本屋 大久手店」外観(筆者撮影)

「山本屋 大久手店」外観(筆者撮影)

ハラール対応の「親子入り味噌煮込みうどん」(1150円)。味も見た目も一般客に提供しているものとまったく変わらない(筆者撮影)

ハラール対応の「親子入り味噌煮込みうどん」(1150円)。味も見た目も一般客に提供しているものとまったく変わらない(筆者撮影)

山本屋の専務取締役、青木裕典さん(筆者撮影)

山本屋の専務取締役、青木裕典さん(筆者撮影)

店で使用しているハラール対応の食材と調味料。中央の調味料は、「デーツ」という甘味料。みりんの代用品として使っている(筆者撮影)

店で使用しているハラール対応の食材と調味料。中央の調味料は、「デーツ」という甘味料。みりんの代用品として使っている(筆者撮影)

ハラール対応の「名古屋めし」。中でも「手羽先」がいちばんの人気(筆者撮影)

ハラール対応の「名古屋めし」。中でも「手羽先」がいちばんの人気(筆者撮影)

ハラール対応メニューの調理器具。「ハラールセット」と名付けられ、管理している(筆者撮影)

ハラール対応メニューの調理器具。「ハラールセット」と名付けられ、管理している(筆者撮影)

●目指すのはフードダイバーシティを軸とした街づくり

「ムスリムフレンドリーポリシー」は、以下のとおり。

(1)当店は第三者機関によるハラール認証は受けておりません。
(2)厨房は一般調理も行うため、ムスリム専用ではありません。
(3)ムスリム対応メニューにおいて、食肉はハラール認証を受けたものを使用。
(4)ムスリム対応メニューにおいて、調味料もハラール対応したものを使用。
 ※ハラール認証のないものは内容成分を確認して使用。
(5)まな板や包丁、ボール、フライヤーなどの調理器具は分けて使用。
(6)希望がある場合は使い捨てのフォーク・ナイフ・割り箸の対応可能。

(3)の食材と(4)の調味料で、店の看板メニューである鶏肉と卵が入った「親子入り味噌煮込みうどん」を作る場合、大豆と塩のみで仕込む八丁みそも水と小麦粉だけで打つ麺も問題ない。

 また、ベースとなる鰹だしも魚なので問題ない。具材の卵やネギも普通に使用している。唯一、ネックとなるのが鶏肉だ。イスラム教のルールに従って処理したものでなければならないというルールがある。

「ハラールチキンは、業務用食品スーパーでも入手できるんですよ。トルコ料理店やブラジル料理店のために用意しているのだと思います。

また、ハラールと知らずに使っている日本の料理店も多いと思います。実はハラール対応のみそ煮込みうどんに入れるのを諦めた具材があります。それはかまぼこです。酒精が入っていますから、ムスリムには御法度なんです」(青木さん)

 かまぼこのみならず、日本の食べ物や調味料はアルコール成分が入っているものが多い。

 ハラール対応の和食店が頭を抱えているのが、料理酒やみりんだ。ゆえに、メニューはかなり限定されるが、「山本屋 大久手店」では「親子入り味噌煮込みうどん」(1150円)のほか、にハラールチキンを使った「味噌串かつ」(3本500円)や「天むす」(2個480円)、「手羽先」(5本850円)など、いわゆる名古屋めしを中心に7種類のメニューを用意している。

●食材より大変だった調理器具

 食材や調味料選びにはかなり気を遣うが、いちばん大変だったのは、(5)のハラール対応メニュー用に調理器具を別に用意しなければならなかったことだ。通常、串かつや手羽先などは業務用のフライヤーで揚げる。ハラール専用のフライヤーを新たに導入するにはコストがかかるため、フライパンを使っている。

「ムスリムのお客様が来店したときのオペレーションに慣れるまでが大変でした。調理は主に私の父が担当していますが、普段とは勝手が違うので、文句を言いながら作っていました。でも、今はムスリムのお客様がみそ煮込みうどんや手羽先を喜んで食べている姿を見て、感動しています(笑)」(青木さん)

 現在、「山本屋 大久手店」に来店するムスリムは月に約300人。その8割は在留者で2割は観光客だという。皆、食べたものをインスタグラムなどのSNSにアップするため、店の評判は口コミでどんどん広がっている。
最近では、ハラール対応のみならず、ベジタリアン向けのメニューも考案しているほか、青木さんはほかの飲食店にも積極的にハラール対応を勧めている。

「将来は、観光スポットを中心に、ハラールやベジタリアンに対応した宿泊施設や飲食店、お土産物店などのネットワーク、“フードダイバーシティ”を構築できないかと思っています。イスラム圏からの観光客の利便性をアップさせることができれば、街の活性化にもつながると思っています」(青木さん)

(永谷 正樹 : フードライター、フォトグラファー)


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