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緑地活用ビジネスに前のめりの業者たち

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筑紫 祐二:東洋経済 記者東洋経済

生産緑地セミナーの様子。講師は生産緑地の危機をまくしたてる

生産緑地セミナーの様子。講師は生産緑地の危機をまくしたてる

【図1】すぐに解除したい人はわずか ―生産緑地指定から30年経過後の営農意向―

【図1】すぐに解除したい人はわずか ―生産緑地指定から30年経過後の営農意向―

【図2】市街化区域内における税制などの違い

【図2】市街化区域内における税制などの違い

【図3】「放出」先送りを促すか―「特定生産緑地」制度を導入―

【図3】「放出」先送りを促すか―「特定生産緑地」制度を導入―

「2022年に都市農地が大量供給されるので、地価が暴落すると思われます」「(税制も)今まで優遇されていたほどの特典はつかないかもしれません」

 のっけから講師が、生産緑地の危機をまくし立てる。緑地オーナーとみられる参加者たちは、静かに耳を傾けている。

 これは9月某日、東京都内で開かれたある生産緑地セミナーに記者が潜入したときの様子だ。

 主催したハウスメーカーは、「セミナーの内容は講師にお任せしている。危機感をあおるよう依頼した事実はない」と強調するが、そうは見えなかった。

 別のセミナーを開催したハウスメーカーは抗弁する。「警鐘を鳴らすのが目的。生産緑地が指定解除されたとき、こんなことが起きますよ、大慌てしないようにしてくださいよ、と伝えるのがセミナーの主旨だ」というのだ。

 この4月に生産緑地法が改正され、30年が経過した生産緑地は、10年更新が可能となった。つまり、22年になっても、生産緑地の指定解除が大量には行われないようにする仕組みだ。税制体系にしても、決まるのは今年末の税制大綱を待ってからだが、緑地法改正に合わせた形で税制優遇が継続される見通しだ。だが、いずれのセミナーでも、こうした制度改正に関する説明はあっさりしたものだった。セミナー主催者の真の狙いは、生産緑地の指定を解除させ、アパートなどの収益物件をそこに建てさせることにほかならない。

 だが、国土交通省が練馬区と世田谷区の農家を対象に実施したアンケート調査によれば、約6割の農家が30年経過後も農業を継続したいという意思を見せている。アンケートの実施時期は2014年12月とやや古いが、先行きがまだ不透明な時期にもかかわらず、半数以上が営農を継続すると回答している。

 先行きに対する不透明感が薄れたせいか、「最近、顧客のノリが悪くなっている」と中堅ハウスメーカーの1社は言う。生産緑地の指定解除を当て込んだ賃貸アパートの建設誘致セミナーの勢いは、一時期よりも落ち着いている。

●宅地化の推奨から農地保全の指南まで

 活況を呈しているビジネスもある。

 その一つが、市民農園運営の最大手である農業ベンチャーのアグリメディアが主催する農地・遊休地活用セミナーだ。

「毎日、貸農園に関する問い合わせが70~80件ほど来るが、うち10件くらいは生産緑地関連。しかも相談件数は増えている」

 そう語るのはアグリメディアの諸藤貴志社長だ。同社は遊休地や生産緑地を活用し、体験農園の運営サポートなども行う。1都3県で65カ所を運営し、今夏には関西への上陸も果たした。

 国交省と農林水産省による生産緑地の維持対策が話題になったせいか、最近、増えてきた相談は「生産緑地のまま残したい」「生産緑地も賃借が可能になるのか」といったものだという。

 また、土地区画整理や街づくり設計を手掛ける建設コンサルタント業のオオバには、生産緑地の相続に関する問い合わせが最近増えているという。


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