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緑地活用ビジネスに前のめりの業者たち

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筑紫 祐二:東洋経済 記者東洋経済

生産緑地セミナーの様子。講師は生産緑地の危機をまくしたてる

生産緑地セミナーの様子。講師は生産緑地の危機をまくしたてる

【図1】すぐに解除したい人はわずか ―生産緑地指定から30年経過後の営農意向―

【図1】すぐに解除したい人はわずか ―生産緑地指定から30年経過後の営農意向―

【図2】市街化区域内における税制などの違い

【図2】市街化区域内における税制などの違い

【図3】「放出」先送りを促すか―「特定生産緑地」制度を導入―

【図3】「放出」先送りを促すか―「特定生産緑地」制度を導入―

●新規の緑地指定を受け付けない自治体も

 実際、相続にまつわる問題は、生産緑地の指定を受けた農家にとっては悩みの種となっている。生産緑地を宅地転用すると、固定資産税はそれまでの農地並み課税から宅地並み課税となり、税額は一気に約120倍に膨らんでしまう。さらに相続税の納税猶予を受けていたら、猶予開始時期にまでさかのぼって利子が課税されるのだ。

 たとえば、07年に2.5億円分の相続が発生し、2億円の納税猶予を受けたとする。17年に特別な事情がなく生産緑地の指定解除を申し出ると、納税猶予額の2億円に10年分の利子6000万円がプラスされ、2.6億円の相続税を納付しなければならなくなる。

 オオバが得意とするのは、「1人施行」の区画整理事業だ。1人が保有する分散した生産緑地を1カ所にまとめ、新たに生活道路を整備し、自宅や保留地などを整理する。将来、高齢化などで生産緑地の指定を解除せざるをえなくなるときのために、あらかじめ分筆可能な土地を造成しておくといった手法だ。事業ソリューション部の岡田寛之部長は「地権者の事情はさまざま。場合によっては生産緑地指定を継続したほうがいい場合もある」と解説する。

「ほんの10年前ですよ。農地を残しましょうと言うと、まるっきりドン・キホーテ扱いだったのは」と述懐するのは、JA全中の高塚明宏氏だ。

 1反(10ヘクタール)の田んぼから取れるコメは約8俵(480kg)。今のコメの値段は60kgで約1万3000円なので、1反の田んぼで10万4000円の売り上げとなる。しかし都市部で宅地並み課税なら固定資産税が21万円強もかかり、赤字となってしまう。やる気のある農家が農業を継続していくためには、収益的に安定する必要がある。このため「特定生産緑地」の指定を受けてもらうよう、積極的に働きかけているのだ。

 生産緑地には農地としての側面だけでなく、災害時の防災空間としての役割もある。都市農地の保全のためには、固定資産税の減免措置などは必要といえる。

 政府は都市部の農地保全に舵を切っている。だが、中には「税収が下がる」「指定のための手間がかかる」などの理由で、新規の生産緑地指定を受け付けない自治体もあるという。

 一方、生産緑地に指定されながら耕作放棄、ひいては不当な利益を得ているケースも見られる。生産緑地制度が始まって30年。いまだ成熟には程遠いようだ。


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