人間関係については、クラスのコンパに参加したり自分からコミュニティーに入ったりすることはないですね。ただ、自分に興味を持って話し掛けてくれた学生や学問的な興味が近い学生とは個人的に話したりご飯を食べに行ったりしています。彼らからは、恋愛相談や人生相談をされることが結構ありますね(笑)。学生にとっては、20代後半という、おじさんではないけれど先輩にしては年が離れている世代に会う機会が少なく、相談するにはちょうど良いのかもしれません。もし僕が18歳の時に同じ科類に10歳年上の人がいたとしても、その時自分は話し掛けられなかっただろうなと思うので、すごいなと思います。

──家庭とはどのように向き合っていますか

 学生生活と家庭での生活を両立できているかと聞かれると、とてもできているとは言えないです。日中は授業やインターンがあるのでどうしても家事や子どもの世話はできないですが、最低限授業が終わりやることがなければ早く帰り、子どもが寝た後でもできることはその時間に回しているという感じです。そのため、本当に妻のサポートには感謝していますし、自分にできることとして妻や子どもと過ごす時間を最大限作るように頑張っていますね。具体的には、家に帰るとまず子どもにご飯を食べさせ、少し遊んだ後にお風呂に入れ、着替え、歯磨きをして寝かせていますし、妻とは子どもが寝た後に会話をしています。家事については、今のところ基本的には先に気が付いた方がやり、どちらかが忙しかったり体調が悪かったりするときはもう一方がこなすという感じで特にルールはないですが、妻も僕も不満なくやれていると思います。お互い必死ですが、自分が相手を思いやっている姿勢を示すことが大事だと思いますね。

 子どもの成長は本当に早く、見ていてすごくうれしいですね。初めて歩いたり言葉をしゃべったりする度に喜んでいます(笑)。昔は子どもの成長に喜ぶ大人を見ても、そんな大したことかなと思っていたのですが、自分が親になったことで人として温かくなったような気がしますね。一方、子育てで大変だったことも。2度目の受験生時代のことなのですが、当時子どもは生後3~5カ月で、毎晩大体3時間おきくらいにお腹が空いて起きてしまいました。僕は夜中の2~3時まで起きて勉強や仕事をしていたので、子どもが1、2回起きた時にはミルクを作っていました。

──今後の進路の展望はありますか

 まず、自分の興味の追求・生活費を稼ぐための職・社会貢献の現実的な折衷案として医者を目指し続けると思います。ただ、その目標は絶対的なものではなく、先ほども言ったように人間の脳の仕組みや人間とは何なのかということに興味があるので、それについて数学的・物理的側面から説明したいなというのが今の思いです。自分の知識や勉強してきたことを生かすこと・お金をそれなりに稼ぐこと・困っている人を助けられる仕事が医者以外にあるなら、そちらへ進んでも良いのかなと考えています。

(文/東京大学新聞社・杉田英輝)