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北陸では師走の声を聞くと季節は急速に進むでしょう。自動車や農業関連施設の雪対策など、計画的に行って下さい。

今冬もラニーニャ現象続く 上空には西廻りで寒気が流れ込み里雪型となりやすい

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10月25日、新潟地方気象台より、福井・石川・富山・新潟の4県を対象とした「北陸地方の向こう3か月の天候の見通し」が発表されました。

そのポイントは、「冬型の気圧配置が強く寒気の影響を受けやすいため、向こう3か月の気温は平年並か低く、降水量は平年並か多い」ということです。

現在ラニーニャ現象が続き、今後、冬の終わりまで、ラニーニャ現象が続く可能性が高くなっています。上空の偏西風は日本付近で南に蛇行しやすいでしょう。シベリア高気圧は南東側への張り出しが強く、日本付近には西廻りで寒気が流れ込み、沿岸部や平野部を中心に降雪となる里雪型となりやすくなる見込みです。

北陸地方では、師走の声を聞くと、季節が急速に進む見込みです。寒気の流れ込みの程度によっては、気象台での初雪観測日がそのまま初積雪となることもありそうです。自動車で雪道や凍結路面の走行に有効な冬用タイヤの準備を急いで下さい。スノーブレードや車載用のスノーブラシ、スコップ、牽引ロープ、ブースターケーブル、防水保温手袋、冬用の濃度の高いウォッシャー液、タイヤチェーンなども忘れないようにしましょう。エンジン始動(システム起動)用のバッテリーが劣化していないかを確認しておくことも重要なチェックポイントです。

2000年以降の近年 ラニーニャ現象発生時 冬日が多く最深積雪が多い傾向

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2000年度以降の冬の期間(12月~2月)の1日の最低気温が0度未満の冬日日数(折れ線グラフ)と最深積雪(棒グラフ)について、高田(新潟)、福井、富山の3地点の実況を見ていきましょう。

冬日日数(折れ線グラフ)は、ラニーニャ現象が発生していた年度が多く、気温のベースが低い寒冬傾向だったことがわかります。

最深積雪を表す棒グラフどうでしょうか?
高田(新潟)は、平野部としては世界に冠たる豪雪地帯であり、複数のピークが確認されています。それでも2000年以降の近年では、ラニーニャ現象が発生していた2020年度が249センチで最大となっています。また、福井で最深積雪が100センチを超えた2010年度、2017年度、2020年度は全てラニーニャ現象が発生しており、富山でもラニーニャ現象が発生していた2020年度に最深積雪128センチを観測しています。

過去70年まで遡ると「エルニーニョ=暖冬少雪」や「ラニーニャ=寒冬多雪」とは限らない年も 更に平常年で多雪や少雪の年も

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グラフは1952年度から2021年度までの過去70年間の冬の期間(12月~2月)の金沢の合計降雪量と平均気温の関係を示したグラフです。(現在の平年値はグラフ上の赤の楕円)

1976年度はエルニーニョ現象が発生していましたが、平均気温は2.6度、降雪量は561センチで降雪量はかなり多くなりました。
一方、1988年度の冬は、ラニーニャ現象が発生していましたが、3か月の平均気温は5.5度、降雪量は53センチで、平均気温は平年より高く、降雪量はかなり少なくなりました。

また、記録的な大雪として後世に語り継がれている「38豪雪」や「56豪雪」の冬は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象も発生していない平常の状態でした。

こうしたことから、「エルニーニョ=暖冬少雪」「ラニーニャ=寒冬多雪」とは必ずしも言い切れず、寒気の南下状況を左右する要因は他にもありそうです。

3か月予報で考慮できていない北極振動 ラニーニャ現象下で正の北極振動が強化されれば「寒さ」は相殺される?

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ラニーニャ現象とは別に、北半球の冬の天候を大きく左右する要因の一つとして、北極振動があります。これは、日本への影響という観点で平たく言えば、北極圏からの寒気が日本に流れ込みにくく、日本は高温傾向になる「正の北極振動」と、北極圏からの寒気放出パターンとなり寒気が日本に流れ込みやすく低温傾向になる「負の北極振動」があります。

北極振動のメカニズムについては十分に解明されていませんが、負の北極振動が強化される一因として「成層圏の突然昇温」が挙げられます。ジェット気流が弱まると極渦が分裂、「北極圏からの寒気放出パターン」である負の北極振動が強化されやすくなることがあります。事実、2021年1月4日頃から2月13日頃にかけて大規模な突然昇温が発生、その後の1月下旬から2月前半にかけての対流圏では負の北極振動が強化されたという報告がなされています。2020年度の冬がどのような状況であったかは、北陸在住の皆様には周知の事実でしょう。

1976年度、エルニーニョ現象下での負の北極振動の強化は低温多雪をもたらす一因となった可能性があります。また、1988年度、ラニーニャ現象下での正の北極振動の強化は高温少雪をもたらす一因となった可能性があります。

エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、熱帯域の海洋現象を主な根拠にしていて、その温度変化の時間スケールは長く、1か月予報、3か月予報、暖候期予報、寒候期予報などの季節予報に考慮されています。一方、北極振動は時間スケールが数週間から1ヵ月程度と短く、比較的短期スパンで負の北極振動が急速に強化されることがあります。このため、季節予報では十分に考慮することが難しくなっています。このため、冬季の気温動向については常に最新の1か月予報等を確認する必要があります。

降雪(降水)量の多寡はJPCZの動向に大きく依存

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大陸からの冷たい風は、朝鮮半島の付け根付近に位置する長白山脈で二分されます。その後は、風下側の日本海上で再合流、日本海からの大量の水蒸気を含んだ気流は行き場を失い激しい上昇気流をおこします。ここで形成される発達した帯状の雪雲を「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」と呼びます。JPCZが北陸地方のどこを指向するかは、直前まで見極めが必要となります。南まわりの西よりの風と北まわりの北よりの風とのせめぎあいで強雪の予想地域が刻一刻と変わるためです。

1952年度の冬の金沢の平均気温は3.7度、合計降雪量は128cmとなりました。これは、現在の平均気温の平年値ではかなり低い階級区分に分類されますが、降雪量は平年値に及んでいません。風の様々な条件でJPCZの強雪帯が金沢にかかりにくかったことが一因と考えられます。

降雪は強い寒気と降水の産物。強い寒気があっても降雪のもととなる降水域が該当エリアにあまりかからなければ、降雪量としては多くはなりません。1952年度の金沢の降雪状況は「強い寒気必ずしも大雪とはならず」の一例とも言えそうです。