9月1日防災の日。この夏は雨のニュースが多い年となりました。地震・津波・火事に比べると、大雨に対する防災訓練はまだ少ないのではないでしょうか。「大雨災害」といっても、様々な事象があり、それぞれ対策や避難方法が異なります。しっかりと理解して、万が一の時に行動できるようにしましょう。

「平成29年7月九州北部豪雨」朝倉市杷木林田地区のようす(2017年7月8日撮影)
「平成29年7月九州北部豪雨」朝倉市杷木林田地区のようす(2017年7月8日撮影)

「大雨の防災訓練」したことありますか?

きょう9月1日は「防災の日」。すでに防災訓練をされた方も多いのではないでしょうか。
地震・火事・津波・・・さて、大雨に関する訓練をした方はどれくらいいらっしゃるでしょう?地震などに比べて、まだまだ実施率が低いと言われています。
しかしながら、この7月も「平成29年7月九州北部豪雨」が発生し、大雨により島根県浜田市波佐、福岡県朝倉市朝倉、大分県日田市日田などで記録的な大雨を観測し、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生。福岡県や大分県を中心に人命や住家に大きな被害をもたらしました。
こうした大雨による被害は、ほぼ毎年発生しており、地震や津波による災害以上に高い頻度で発生しています。
その一方で、大雨によってもたらされる災害は、地震などとくらべると、起こりうる場所やその事象が、ある程度事前に予測できるという特徴もあります。
起こりうる可能性が高いからこそ、そして事前に予測できる可能性があるからこと、知っておくこと・備えておくことが、減災・防災にとって大切なのです。

最近の主な大雨災害の事例
最近の主な大雨災害の事例

実は、「大雨警報」や「大雨特別警報」は2種類ある

「大雨警報が発表されました。」といわれたら、どんなことに注意し、どんな行動をとろうとしますか。
早めに帰宅する?川に近づかない?「大雨警報が出ても、雨が降っていないから大丈夫」なんて考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したとき、気象庁は「大雨警報」を発表します。そして、さらに警報の発表基準をはるかに超える大雨が予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まると「大雨特別警報」を発表します。
とはいえ、単に「雨に警戒しましょう」と言っても、雨が引き起こす災害はさまざまです。意外と知られていないのですが、大雨が予想されるとき、特に警戒したい災害ごとに警報は出し分けられています。大雨警報の種類には、「大雨警報(土砂災害)」と「大雨警報(浸水害)」の2種類があります。特別警報も同様です。
今後、万が一お住まいの地域に大雨警報が発表された際は、どちらがの大雨警報が発表されているのかを、ぜひ気をつけてみてみてください。
(※なお、「大雨注意報」は1種類です。また、「大雨警報(土砂災害、浸水害)」と両方出ることもあります。)
なお、土砂災害と浸水害では、とるべき防災行動や、発生しやすい場所がやや異なります。これらの違いを事前に知っておくと、万が一の時、スムーズに避難することができます。
各自治体が作っている「ハザードマップ」には、土砂災害用と浸水害用(※さらに洪水と内水氾濫用にわかれている場合もあり)でわけて作成されているものも多くあります。ぜひ、それぞれを見比べて、自分のいる場所のリスクの種類を把握しておきましょう。(※ハザードマップで危険地域に指定されていない場所でも、災害が発生しないわけではない点に注意しましょう。)

大雨警報の種類と表示例
大雨警報の種類と表示例

【土砂災害】早めの避難+雨が止んでも続く危険に注意

大雨によって地盤が緩み斜面が崩れ落ちる「がけ崩れ」と、渓流にたまった土砂が雨によって一気に下流に押し流される「土石流」など、すさまじい破壊力で一瞬にして被害をもたらす恐ろしい土砂災害。
土砂災害が発生するとニュースで大きく取り上げられますが、なんと、ここ数年で平均して1年間におよそ1000件もの土砂災害が発生しており、さらに土砂災害が発生するおそれのある区域は、日本全国でおよそ67万区域もあるそうです(国土交通省調べ)。
2014年8月に発生した「平成26年8月豪雨」では、広島市北部で大雨による土砂災害は発生し、77名の方が命を落とすという悲しい災害がありましたが、この時、自分たちの居住地が土砂災害の危険地域であることを、多くの方が知らなかったそうです。
このことからも、自分がいる地域の危険性を事前に知っておくことの重要性が伺えます。
<土砂災害の危険がある場所>
ハザードマップで対象地域を確認の上、以下の地域に該当する方は、雨の時は、特にこまめに気象情報=危険度をチェックするようにしましょう。
・土砂災害危険箇所・・・図上や土砂災害防止法が施行される前の調査結果から土砂災害の恐れがあると想定した区域
・土砂災害警戒区域・・・現地調査の結果、土砂災害防止法に基づき、土砂災害のおそれがあると指定した区域
・土砂災害特別警戒区域・・・現地調査の結果、土砂災害防止法に基づき、建物が破壊され,人命に大きな被害が生ずるおそれがあると指定した区域
なお、大雨による土砂災害の危険性が高まった場合は、
大雨注意報 → 大雨警報(土砂災害) → 土砂災害警戒情報 → 大雨特別警報(土砂災害)
と段階を踏んで情報が発表されます。
あわせて「土砂災害警戒判定メッシュ情報」などの視覚的にわかりやすい情報も有用です。
土砂災害は、発生するとものすごいスピードで襲ってくるため、災害が起きてから避難しても間に合いません。やはり最もベストなのは「早めの避難」です。危険地域にお住まいの方は、上記の情報がでたら、あるいは情報が発表されていなくても雨が降り出して不安を感じたら、早めに土砂災害危険箇所の外に避難するのがよいでしょう。
また、あわてて避難することは逆に危険です。その場の状況を冷静に判断し、どうしても屋外に避難することが難しい場合は、斜面とは反対側の2階に移動してください。
それから、雨が止んでも、地面が雨水を含んで危険な状態は続きます。このため、大雨警報(土砂災害)はすぐに解除されません。
ですから、「雨が止んだから」といって安心せず、引き続き気象情報を確認するようにしましょう。

さまざまな種類の水害ハザードマップ(日本気象協会「トクする!防災」アプリより)
さまざまな種類の水害ハザードマップ(日本気象協会「トクする!防災」アプリより)

【浸水害】川のそばだけではない!都市化で増える街中浸水

大雨によってあふれた水に、建物や道路、田畑が水につかってしまう「浸水害」。
浸水害には、川の水が堤防を越えてあふれてしまう「外水氾濫(はんらん)」と、側溝や下水道だけでは排水が追いつかず水につかってしまう「内水氾濫」があります。
「外水氾濫」のように、川の堤防が決壊すると、一気に水があふれて広範囲に大きな災害が発生します。土砂災害と同様に、早めの避難を心掛けましょう。
一方で、災害の規模としては「外水氾濫>内水氾濫」ですが、ここ最近の水害における被害額をみてみると、
外水氾濫が20.3%に対して、内水氾濫は46.4%と、「外水氾濫<内水氾濫」となっています。つまり、規模が小さくても、内水氾濫は発生しやすいということがわかります。
さらに、東京都でみてみると外水氾濫が1.8%に対して、内水氾濫は97.8%と、ほぼ内水氾濫が割合を占めています。
アスファルトに覆われると、雨水を地中に浸透させて水をはけることができなくなります。水をはけるための設備として排水溝やマンホールが用意されているわけですが、これらの排水能力を超える量の雨水が流れ込むと、水があふれてしまい、みるみる内に道路は川のようになり、地下街などに水が流れ込み、地下室に閉じ込められたり、地下鉄などの交通がマヒし、床上または床下浸水、アンダーパスで車が立ち往生するなどの被害が発生することが想定されます。
従来の下水道は、1時間あたりの降水量50mm程度に対応しているのが一般的です。都市化が進む一方で、下水能力を超えるような雨が観測されるようになってきており、内水氾濫のリスクが高まってきているのです。
そう、浸水・氾濫と聞くと、危険なのは川のそば、というのはもう昔の話。都市化された地域では、こうした内水氾濫のリスクが高くなっています。河川や山のそばに住んでいなくても、自分の住む街で水害が起こる可能性があるということを忘れないでください。
浸水害(内水氾濫)のハザードマップを確認してみると、驚くことに、意外な場所が浸水予想区域になっているかもしれません。
(浸水害のハザードマップは、外水氾濫と内水氾濫を分けている場合や、一緒になっている場合など、自治体によってさまざまです。)
<浸水害(内水氾濫)の際の避難方法>
浸水害(内水氾濫)ハザードマップには、最大浸水深が記載されています。浸水の深さが50センチを超えると、歩行は困難になります。浸水が発生する前に、
・浸水する恐れがある階にいる方・・・避難所や安全な建物
・浸水の恐れのない階にいる方・・・建物内の安全な場所
へ避難してください。
また浸水が浅くても、お子さんやお年寄りは歩行が難しくなる場合があります。その場合は、無理をせず、自宅や頑丈な建物のできるだけ高いところに避難するようにしましょう。

「大雨警報が出ても、雨が降っていないから大丈夫」、「まだ大雨警報が出ているけれど、雨が止んだから大丈夫」、「うちのそばには山も川もないから大丈夫」。
なにも知らずに「たぶん大丈夫」と思うことはとても危険です。
近年、大雨の発生が増えているといわれています。高まるリスクから身を守るために、大雨に備える訓練を始めてみませんか。

水害原因別の被害額(2014年の場合)
水害原因別の被害額(2014年の場合)