宇宙からみた 梅雨前線による大雨 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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宇宙からみた 梅雨前線による大雨

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日本付近の梅雨前線に伴う雲とGPM/DPRの観測による降水のようす(2016年6月20日 日本時間18時00分)

日本付近の梅雨前線に伴う雲とGPM/DPRの観測による降水のようす(2016年6月20日 日本時間18時00分)

期間総降水量分布図と上位5位の観測地点(2016年6月19日~6月24日)※気象庁災害時気象報告より

期間総降水量分布図と上位5位の観測地点(2016年6月19日~6月24日)※気象庁災害時気象報告より

気象レーダが観測した九州付近の線状降水帯のようす(2016年6月20日21~24時)

気象レーダが観測した九州付近の線状降水帯のようす(2016年6月20日21~24時)

GPM/DPRによる降水の3三次元布図(日本時間2016年6月20日21時52分)

GPM/DPRによる降水の3三次元布図(日本時間2016年6月20日21時52分)

2016年6月20日21時の実況天気図

2016年6月20日21時の実況天気図

宇宙からみた気象現象シリーズ第9弾 2016年の梅雨は、西日本を中心に大雨となり、多数の人的被害や、住家・ライフラインへの影響が出ました。この大雨をもたらした「線状降水帯」について、気象レーダや全球降水観測計画(GPM)主衛星の観測をもとに詳しく解説します。

2016年6~7月 梅雨前線活発化・西日本を中心に大雨

2016年の6月6日から7月15日にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線の影響を受け、全国各地で大雨となりました。特に西日本で降水量が多くなり、期間総降水量がもっとも多かった宮崎県えびの市では、約6週間で年間降水量のおよそ3分の2にあたる2218ミリの雨が降りました。
中でも、6月19日から24日にかけての九州付近の大雨は深刻でした。停滞する前線上を二度にわたり低気圧が通過したため、断続的に雨が降り続き、九州の各地で日降水量が200ミリを超えました。さらに、宮崎県・熊本県・大分県の一部では期間中の総降水量が500ミリを超え、熊本県南阿蘇村では、6月の月平均降水量が635ミリのところ、この6日間でおよそ1ヶ月分にあたる667ミリの雨が降りました。

6月下旬 熊本地震の被災地で地震と大雨による複合災害が発生

2016年4月、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が2回発生し、熊本県・大分県を中心に家屋の倒壊や土砂災害など多くの被害が発生しました。その後も余震が相次ぎ、2017年2月末までに震度1以上を観測した地震は4258回にのぼりました。
大きな地震が発生すると、その瞬間に発生する家屋の倒壊や地すべりなどの災害はもちろんですが、地震により地盤が緩み、その後も雨による土砂災害などの複合災害が発生する恐れが高くなります。こうした状況の中、この梅雨前線による大雨が被災地を襲いました。19日から断続的に降り続いていた雨でしたが、20日の夜遅くから急激に雨脚を強め、数時間で一気に雨を降らせました。熊本市の隣、甲佐町では、6月21日0時19分に全国の観測点で史上4位となる1時間150ミリの雨を、熊本市中央区でも20日23時4分に1時間94ミリの猛烈な雨を観測しました。この大雨により、熊本県内では6人が亡くなりました。そのうち5人は土砂災害によるものでした。

大雨の原因は『平成26年8月豪雨』と同じ「線状降水帯」

この大雨について、さらに詳しく見ていきましょう。6月20日夜から21日朝にかけて、長崎県・熊本県では、1時間降水量が100ミリを超え、一晩で総降水量が200ミリを超える大雨が観測されました。この時の雨のようすを気象レーダで見てみると、東西に延びた強い降水域「線状降水帯」が観測されていました。ひとつの塊に見える降水帯ですが、実は複数の積乱雲群(いくつかの積乱雲が組織化したもの)が連なって形成されたもので、同じ地域の上空をこの積乱雲群が次々と通過したため、局地的な大雨になったと考えられます。
また、一見、雨雲が北東に移動したように見えますが、よく見ると降水帯が少しずつ北東へ延びています。これは『バックビルディング型』に形成される線状降水帯の特徴で、風上側で繰り返し新しい積乱雲が発生し、積乱雲群が風下から風上にかけて連なっていくためです。複数の数十キロ規模の積乱雲群が並び、100キロを超える線状降水帯を形成します。これが、「雨雲が移動する」のではなく、「雨雲が延びていく」原因です。
この「線状降水帯」は、『平成24年7月九州北部豪雨』や、『平成26年8月豪雨』における広島市を中心とした集中豪雨の原因にもなりました。
全球降水観測計画(GPM)主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)による降水の三次元分布図で、この線状降水帯のようすを詳しく見てみましょう。日本の南西上空から九州付近の降水の様子を観測したもので、左上が北、右下が南で、九州付近の鉛直構造をあらわしています。もっとも強く(赤く)なっているのが線状降水帯の積乱雲にあたる場所で、周辺の積乱雲の2倍近い高さで、高さ15~16kmの対流圏界面付近まで達しており、周囲に比べて著しく発達していたことがわかります(図4)。
●GPM/DPRが捉えた梅雨前線による西日本を中心とした大雨の動画
①2016年6月20日日本時間18時頃 https://www.youtube.com/watch?v=wfkkmCeVzHA
②2016年6月20日日本時間22時頃 https://www.youtube.com/watch?v=xi15fF_9dk8

なぜ、大雨がこの場所を襲ったのか

なぜ、この場所に集中して、これだけ強い積乱雲や積乱雲群が発生したのでしょうか。線状降水帯は、下層における暖かく湿った空気の継続的な流入や、極端な大気の不安定などによって引き起こされます。当時、例年よりも西に張り出した太平洋高気圧に沿って、南から暖かく湿った空気が流れ込んでいました。さらに梅雨前線上を低気圧が通過し、南からの暖湿気流の流入をより強めました。また、日本の上空には寒冷渦に伴うやや冷たい空気が流れ込んでいたため、大気が大きく不安定となり、線状降水帯が発達しやすい場になっていたと考えられます。
日本おける大雨や集中豪雨は、線状降水帯によって引き起こされることが多いと言われています。そのため、現象を精度よく観測・監視・予測することが、被害を事前に防ぐために重要になってきます。また、まだ完全には明らかになっていない線状降水帯の発生メカニズムを解明するためにも、高度な観測・解析技術が必要とされています。こうした防災・減災への取り組みとして、GPM/DPRをはじめとした新しい降雨観測技術の活用が期待されています。


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