台風、大雨、猛暑・・・と記録ラッシュの8月になりました。台風が続々と日本に上陸した影響で、北日本では「記録的大雨」に。8月の天候を振り返ります。

【台風】週1~2ペースで4個上陸+根室半島通過

今年8月は台風が頻繁に発生し、お盆頃から、週に1~2度ペースで台風が日本に上陸しました。台風が8月中に4個上陸するのは、1962年と並び過去最多となり、1962年以来54年ぶりの多さです。また、北日本にとっては異例のケースが多々ありました。北海道に3つの台風が上陸するのも過去最多です。また、台風10号が、東北の太平洋側に上陸しましたが、台風が太平洋から入り、東北の太平洋側に上陸するのは、統計を取り始めてから初めてのことです。
※気象庁は1951年(昭和26年)から、台風の統計を整備しており、この記事における「過去」も、この統計資料に基づくものです。
まず、この夏最初に通過した台風は、台風6号。8月15日午前8時に北海道の根室半島を通過しました。ここから続々と北海道に台風が上陸することとなり、その2日後、台風7号が8月17日午後5時半頃に北海道の襟裳岬付近に上陸、更にその4日後、台風11号が21日午後11時過ぎに釧路市付近に上陸しました。その翌日、台風9号が22日午後0時半頃に、千葉県館山市付近に上陸し、関東、東北を縦断した後、23日午前6時頃に北海道日高地方に再上陸しました。そして、きのう30日午後6時前に、台風10号が岩手県大船渡市付近に上陸となりました。このため、北海道や東北では、大雨災害による甚大な被害が出ています。
※上陸と通過
台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「日本に上陸した台風」としています。ただし、小さい島や半島を横切って短時間で再び海に出る場合は「通過」としています。
台風10号の被害状況について、北海道から齋藤眞澄さんが写真を送ってくださいました。室蘭市にあるイタンキ浜から北に2キロほどの中島町という町の様子です。倒木は室蘭市内のあらゆる所で見られるそうで、大雨だけでなく、暴風の影響もひどかったことが一目で分かります。

台風10号の被害状況 北海道室蘭市内 写真提供:齋藤 眞澄さん
台風10号の被害状況 北海道室蘭市内 写真提供:齋藤 眞澄さん

【大雨】北日本の太平洋側で大雨記録続々

北日本では前線や台風の影響を次々と受けたため、北日本の太平洋側では記録的な多雨となりました。特に網走では8月1日~30日までに425ミリの大雨が降っていて、これは8月1か月に降る平年の降水量の4.2倍の雨量に匹敵します。網走や釧路、根室の月降水量は、いずれも統計を取り始めてから8月として1位になりました。8月の降水量は、札幌でも平年に比べて2倍以上となり、北海道は広い範囲で多雨だったといえます。また、東北の太平洋側に位置する大船渡や宮古でも8月の降水量が400ミリを超えていて、2000年以降最も多くなりました。
北日本で、台風の影響を頻繁に受けた理由は、主に3つあります。1つに日本の南東海上の対流活動が活発で、低気圧性の渦の影響もあり、台風が発生しやすい状況だったこと。また、日本周辺、特に東経140度以西にあたる地域での海面水温が記録的に高く、台風が勢力を維持して日本へ近づきやすい状況だったこと。また、本来であれば平年、太平洋高気圧が南海上から日本付近へ広がるのですが、今年は高気圧が東西の2つに分かれていて、1つの高気圧は平年よりも北東へ偏って位置し、もう1つは、西日本を覆うような形となりました。このため、日本の南東海上から進んだ台風は、太平洋高気圧の縁辺をまわるように、風に乗って、日本の東海上を北上しやすく、北海道に過去最多となる3つの台風が上陸し、異例のコースを通ったと考えられます。

【暑さ】大阪で猛暑日最多

全国的に暑い8月となり、特に、西日本や北海道で厳しい暑さとなりました。特に、西日本は8月上旬から中旬にかけての気温が高く、8月1日~22日の西日本の平均気温は、平年の同時期に比べて1.4度高くなり、この期間、2010年に次いで過去2番目の暑さで経過しました。大阪市の8月の猛暑日は23日間となり、記録が残る1883年以降で最多となりました。また、福岡県久留米市では、7月27日~8月15日まで20日間連続猛暑日となり、1977年に統計をとり始めてから初めてのこととなりました。また、南に位置する鹿児島では、8月22日に37.4度まで上がり、1883年以降133年間で最も暑くなりました。
また、一方で降水量が少なくなっている所もあり、静岡県や愛知県東部では、7月中旬頃から降水量がかなり少なくなっています。7月11日~8月30日までの降水量は、静岡市は100ミリで平年の24%、愛知県伊良湖岬は41ミリで、平年の17%と極端に雨が降らない地域もありました。

9月スタートに台風発生か

8月のお盆頃からは、週1~2回ペースで台風が日本に上陸しましたが、まだ台風の発生しやすい状況は続きそうです。31日(水)、沖縄の南海上に台風の卵、熱帯低気圧が発生しています。この先も発達を続け9月1日には新たに台風が発生する見込みです。
8月の海面水温は記録的に高くなり、東シナ海北部、日本海南部の8月中旬の旬平均海面水温は、解析値のある1982年以降で最高となりました。特に、東経140度以西の海水温が記録的に高くなっているとみられます。海面水温が高いと、台風が日本に近づく際、あまり台風の勢力が衰えないまま日本に近づく恐れがあり、今後も警戒が必要です。