秋は、植物が春とはまた違った美しい色に染まる季節。各地でススキの草原が黄金色に染まり見ごろを迎えています。

黄金色に輝くススキ(長野県松本市 10月18日撮影)
黄金色に輝くススキ(長野県松本市 10月18日撮影)

この時期おすすめのスポット「ススキの草原」

日本列島は秋まっさかり。いよいよ紅葉シーズンに突入し、植物たちも冬への準備を始めている今日この頃ですが、この時期、紅葉以外にも見逃せない美しい風景があります。その風景とは「ススキの草原」。関東や関西のススキの名所では例年10月から11月の半ば頃が見ごろで、比較的長く楽しむことができるも特徴です。
今日は、そんなススキにまつわる話をお届けします。

ススキの草原
ススキの草原

ススキにも「開花」がある

「開花」と言えば、”サクラ”のイメージが大きいと思いますが、各地の気象官署ではさまざまな生物・植物の季節観測をおこなっており、約70種類もの観測を行っています。「たんぽぽの開花日」や「チューリップの開花日」をはじめ「かえでの紅葉日」や「うぐいすの初鳴日」、さらには「あきあかね(トンボの一種)の初見日」まで。そしてその中の一つに「ススキの開花日」があります。(※各地の生物季節観測の情報は、各気象台のHPなどでご覧いただけます。)
「ススキの花?」と首をかしげた方も多いかもしれませんが、実は、ススキの穂は花の集まりです。そして葉鞘(ようしょう)から抜き出た穂の数が、穂が出ると予想される全体の約20%に達したと推定される状態を「ススキの開花日」と言います。やがて晩秋になると花は綿毛をつけた種子へと変わり、風に乗って飛んでいきます。

気象官署がおこなう生物季節観測の種類
気象官署がおこなう生物季節観測の種類

ススキと季節の大事な関係

ところで、なぜ気象官署が生物や植物の観測を行っているのか、不思議に思われた方もいるのでは。それは、生物や植物が季節の変化によって行動をする習性を利用し、季節の遅れ進みや、長期的な観測結果から気候変動の影響を調べるために行われているからなのです。この観測は、各官署の職員が、実際に目や耳で観測を行っています。
ススキが観測項目に入っているのも、やはり季節の進行を調べることに適しているからで、ススキと気温の間には相関関係があり、気温が高くなると開花が遅くなる傾向があると言われています。また、地域差はあるものの全体的にススキの開花は遅くなる傾向にあり、温暖化との関係も注目されています。なお、今年の東京のススキの開花日は9月23日で、平年よりも2週間遅い開花となりました。

見ごろは今!黄金色のススキの絨毯を見に行こう

花が咲き始めたころはまだ緑色のススキたちも、花が開ききるころには穂がふわふわと白くなり銀色に輝きます。さらに季節が進むと、ススキ全体が黄金色に変わってきます。この銀色から黄金色に輝く頃が、ススキの草原のベストタイミング。特におすすめは夕方で、夕日を浴びてキラキラと黄金色に輝く姿は圧巻で、まるで光に包まれているような気分になります。
ちなみにススキの花言葉は「秋風に想いを乗せて」。まさに、秋のさわやかな風にふわりと揺れるススキにぴったりですね。
さてこの週末は、31日土曜日はやや雲が多いものの、北陸地方を除いて晴れ間があるでしょう。1日日曜日は西から天気が崩れ、西日本は雨が降るでしょう。夕日に輝くススキの草原を見るなら、土曜日がおすすめです。
今見ごろを迎えている代表的なススキの群生地は、神奈川県の仙石原ススキ草原、静岡県の稲取細野高原、奈良県の曽爾高原や兵庫県の砥峰高原などです。各地とも見ごろ後半を迎えているようですから、ぜひこの美しい景色をお見逃しなく。

10月31日、11月1日の天気(10月29日11時発表)(左)と太陽に照らされて黄金色に輝くススキ(右)
10月31日、11月1日の天気(10月29日11時発表)(左)と太陽に照らされて黄金色に輝くススキ(右)