7月から10月にかけては台風シーズンです。発生や接近、上陸ともに、最も多くなります。台風が日本付近に接近する際、特に気を付けなければいけないのが「台風の右側」と言われていますが、なぜ「台風の右側」が危険なのか、その理由についてお伝えします。

台風接近の際に注意するポイントは

7月から10月にかけては台風シーズンです。発生や接近、上陸ともに、最も多くなります。台風が日本付近に接近する際、その周辺地域では雨風が強まるため、注意をしなければいけないのはもちろんですが、その時に特に気を付けなければいけないのは「台風の右側」です。

ニュースなどで、「台風の進行方向右側の地域にお住まいの方は特に警戒をしてください」などと聞いたことがあるかもしれません。つまり右側の方が特に危険ということですが、なぜ台風の右側が左側よりも特に危険なのでしょうか。

台風の右側が特に危険な理由

高気圧は「時計回り」、低気圧は「反時計回り」の風が吹いています。台風は低気圧ですので、反時計回り(左回り)に渦を巻いています。進行方向右側では、台風の反時計回りの渦と、進行方向の風が重なります。そのため、台風の風に移動速度が加わるため、風が強まります。この台風の進行方向右側は「危険半円」と呼ばれます。

反対に、「可航半円」と呼ばれる台風の進行方向左側は、台風に向かう反時計回りの風向きと進行方向の風が異なるため、右側ほど強くはありません。

過去にも台風の右側で甚大な被害に

◎2019年台風15号◎
まだ記憶に新しい2019年9月に首都圏を襲った台風15号。この台風では、まさに台風の進行方向右側にあたる地域で、特に甚大な被害を受けました。
台風15号は小笠原近海を北西に進みながら発達し、「非常に強い勢力」を保ったまま、三浦半島を通過、その後、千葉県千葉市付近に上陸しました。台風の右側(東側)地域にあたる房総半島の広い範囲で、倒木や建物倒壊、送電線の鉄塔や電柱の倒壊により、大規模な停電をもたらすなど甚大な被害となりました。

暴風だけでなく高潮による被害も

◎2018年台風21号◎
2018年の台風21号で大きな被害を受けた関西国際空港も、台風の進行方向の右側でした。台風21号は、「非常に強い勢力」で徳島県南部に上陸したのち、大阪湾に侵入、その後、兵庫県神戸市に再上陸しました。この時、台風の進行方向右側にあたる関空島(関西国際空港)では観測史上一位である最大瞬間風速58.1メートルを記録、その直前には同じく台風の進行方向右側の和歌山市で観測史上一位の57.4メートルを観測、大阪市では47.4メートルと観測史上3位の猛烈な風を記録しました。
海岸に近い所では高潮被害も大きく、特に台風の右側の地域で、南に開いた湾の場合は、南風が吹き続けるため、高潮被害が起こりやすくなります。まさに大阪湾は南に開いた湾で、この時、大阪では観測史上最高潮位329cmを記録しました。この高潮や暴風により、タンカーが流されて関西国際空港の連絡橋に衝突、物流や人の流れがストップするなど、大きな被害をもたらしました。

台風の右側はもちろん左側でも油断禁物

毎年、台風は年間で平均およそ25個発生しています。これからまだまだ台風の発生が予想されます。特にこれから秋にかけて発生する台風は、日本付近の上空を吹く、偏西風に乗って、移動速度をさらに増しますので、進行方向右側の地域では一層風が強まります。

これからの台風シーズン、特に台風の進行方向右側を意識しながら細心の注意をするようにしてください。ただし、台風の進行方向の左側だからといって、決して安心なわけではありません。右側の地域は右側と比べて多少弱まるということであり、台風の強風域や暴風域に入りますので、台風周辺の地域ではどの地域でも警戒が必要であるということはお忘れなく。