今年も年の瀬となりました。COVID-19による新しい生活様式など、今までにない大きな変化のあった2020年。

今回は古来、天変地異や事変、疫病を鎮静するとされ拝されてきた「不動明王」についてご紹介します。現世利益をもたらすとして信仰された神仏が、この世に縁をもつ日を「縁日」といいます。各寺社で特定の日を縁日として定め、供養や祭典が行われています。今年最後の縁日となるのは、毎月28日に行われる「お不動さま」の縁日です。

12月の「納めの縁日」、年明け1月の「初縁日」

その寺社と縁のある神仏の供養や祭祀を行う縁日。毎月28日はお不動さまの縁日です。12月は年の最後の縁日となるため、「納めの不動」と呼ばれています。一年間お祀りしたお札やお守りを炎の中へお返しする焚き上げ法要などが行なわれ、一年間の守護を感謝する日とされています。

縁日とは神仏の世界に何らかの由来のある日、つまり有縁(うえん)の日のこと。縁日にお参りすると、神仏の世界と縁を結ぶことができ、よりご利益があるとされています。代表的な縁日は、5日の水天宮、8日の薬師、18日の観音、21日の弘法、24日初地蔵、25日の天神、28日の不動などがあります。12月は最後を締め括る「納めの縁日」、年明け1月の年初めの縁日も特別なものとして、「初縁日」と呼ばれています。

不動明王は宇宙!?

不動明王は密教の最高仏である大日如来の化身とされ、「お不動さま」と呼ばれ親しまれています。大日如来は非常に崇高な存在のため直接拝むのは恐れおおく、その化身である不動明王を拝むようになったといわれています。密教では大日如来は宇宙の真理を現しており、宇宙そのものを指しています。不動明王を拝むということは大日如来を拝むこと、宇宙に向かって拝むということになるのですね。

不動明王は、右手に心のあらゆる迷いを断ち切る利剣、左手には物事を正しい方へ導くための羂索(けんさく)という縄を持ち、堅固な御心を表す磐石(ばんじゃく)という大きな岩にお座りになり、あらゆる障害を焼き尽くす火焔(かえん)を背負っています。

明王が存在するのは、人間界と仏の世界の間にある天界「火生三昧(かしょうざんまい)」という炎の世界です。火焔を背負い、髪を逆立て、武器を手に持った不動明王。その怒りの表情は人々の心の迷いや煩悩を取り除き、すべての人を救うという心の決意をあらわした姿だとされています。

怒りの形相の下にある慈悲の心

忿怒の形相や炎に包まれたお姿から恐ろしい戦いの仏のように見えますが、実際は悪を断ち切って人々の煩悩を消し去るよう導いてくれるお不動さま。除災招福・病気平癒・疫病退散・身体健全・家内安全・国家安泰といった現世利益のご利益があるとされ、古より「敵国退散の守護神」「疫病退散の守護神」として崇められてきました。

有事に手を合わせたくなるお不動さまは、怒りの形相の下に、すべての人を導き一切の災いを祓う力をもつといわれる慈悲深い仏なのです。

参考サイト

成田山新勝寺

天台宗 青蓮院門跡

参考文献

岡田芳朗・松井吉昭『年中行事読本』創元社