山好きが高じて山梨県で気象キャスターデビュー 新型ウイルスで登れない日々 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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山好きが高じて山梨県で気象キャスターデビュー 新型ウイルスで登れない日々

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山梨県で気象キャスターを始めた矢先に流行拡大したコロナウイルス。ひとりの山好きとして、すぐそばに見えている山に登れない日々はつらいものでした。徐々に自粛ムードが解除される中、努力次第で減らせるリスク「気象遭難」をどうやったら減らせるのか思案中です。


山梨で気象キャスターに挑戦 決め手は山だった

「気象予報士として天気の仕事をしています」

こう切り出すと毎日テレビで見る気象キャスターのことを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、気象予報士の全員が気象キャスターというわけではないのです。企業やメディア向けに気象情報を提供したり、天気の研究や予報そのものを作ったりする仕事をしている気象予報士もいます。最近では気象サービスを利用する登山者が増え、tenki.jp登山天気アプリなどの登山者に向けて情報を配信する仕事もあります。スタジオからお茶の間に向かって天気の解説をする業務は、気象予報士のたくさんある仕事のひとつでしかないのです。

そんな数ある仕事の中で、気象キャスターは大勢に見られる仕事なので「天気をわかりやすく伝える」ために天気以外のことにも気をつかう必要があります。例えばしゃべり方や動き方です。ちょっとした動作でも強いクセや違和感があると見ている人は気が散って、肝心の天気が頭に入ってきません。私はこれまで、公の場での発表なんてしたこともなかったので、「山梨県で気象キャスターに挑戦してほしい」と言われたときには自分に務まる仕事なんだろうかと不安に思ったことを憶えています。(今でも、ちゃんと務まっているのか不安ですが)それでも毎日テレビに出演して天気の解説をするなんて、なかなかできる体験ではありません。新しいことを学ぶチャンスと考えて志願しました。

志望理由を語るときに欠かすことができないのが山梨県という勤務地の魅力です。一時期、毎週末のように東京から中央線に乗って山梨・長野の山に通っていたので、その地に住んで仕事ができることは願ってもない幸せだったのです。「もしかしたら番組の企画で山に連れて行ってもらって、山頂から天気をリポートできるかもしれないぞ」そう考えると山梨県で気象キャスターをすることが楽しみで仕方なくなりました。もちろん、夏山シーズンになったら山梨県を訪れるたくさんの登山者が安全に山に登れるように、山の天気情報を手厚くお伝えする心積もりでした。


キャスターの仕事は緊張の連続

甲府市に移住したのは今年3月初旬。現在、私は山梨県のケーブルテレビ会社、日本ネットワークサービス(NNS)の気象情報室に所属して、NNSや山梨放送(YBS)で気象キャスターをしています。それまで気象予報士としてやってきた仕事といえば、気象会社のオフィスからメディア向けの原稿提供がほとんどで、自分の考えを発表するような経験は学生時代に1度か2度したきりです。モノを書くのは好きでしたが、人前でしゃべることは得意ではありませんでした。そんな私にテレビ局の方は親切で、3月末の本番になる前に何度も何度もリハーサルをして、なんとか尺(制限時間)内にしゃべりきれるまでに鍛えていただきました。中でもよく覚えているのは、あすから出演というときにベテランアナウンサーの方にかけていただいた「伝えることはすごく楽しい仕事なんだ!まずは楽しんで!」という言葉です。それでも、初めての本番でカメラが私を向いたときには体が震えるほど緊張したことを憶えています。


コロナ禍で状況が一変

山梨に引っ越すのと同時期に、新型コロナウイルスの感染が国内で急速に広がってしまいました。3月中は私自身まだピンと来ていませんでしたが、4月7日、東京都などに緊急事態宣言が発出されました。山梨県は関東との距離が近く往来が盛んです。このころから山梨県も状況が一変し、私の危機感も高まっていきました。

4月25日、山梨県北杜市は登山の自粛を呼びかけ登山道を閉鎖しました。北杜市と言えば、甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳などの県内でも名だたる山が位置する自治体です。どうなってしまうんだろうかと思っているうちに、山梨県がゴールデンウィーク期間の登山自粛を呼びかけるようになりました。そして、5月1日、山梨県はついに夏期富士登山道の閉鎖を決定します。そのあとすぐに静岡県も登山道の閉鎖を決めたので、今年の夏は富士山の山頂に立ち入ることができなくなりました。

天気コーナーはどの番組でも終わりの方が定位置なので、番組中、気象データの最終チェックをしている最中に登山自粛のニュースが次々と読み上げられます。今年の登山は難しいかもしれない。やってみたかった富士山中継も今年は困難です。仕方がないことですが、とても残念な気持ちになりました。


登山の形が変わっても「山と天気」は変わらない

6月に入り富士スバルラインが開通しましたが、いまだに5合目より上の登山道に立ち入ることはできません。富士山と並んで人気のある南アルプス周辺でも、ことしは営業しない予定の山小屋がたくさんあります。それでも、少しずつ日常を取り戻そうという動きも出てきています。コロナウイルスには細心の注意を払いながら、できる範囲の登山を楽しんでいただきたいし、私も楽しみたいと思っています。

ただしコロナウイルスの感染拡大が収束しない限り、登山のリスクは以前よりも高くなっています。遭難して医療従事者に迷惑をかけることはできる限り避けなければいけません。以前にも増して慎重な行動が求められていますから、減らせるリスクはひとつずつ減らす努力が必要です。その中で気象遭難は努力で減らせるリスクの好例だと思います。いままで天気にあまり関心がなかった人は、山の天気をチェックすることを習慣づけてみたり、すでに天気をチェックする習慣がある人は、さらに一歩進んで天気予報がそうなっている理由を考えてみたりすると良いでしょう。天気予報の理由を考えるのはおすすめで、予報がずれたときにも柔軟に対応しやすくなります。

登山の形が変ったとしても、山と天気が変わるわけではありません。これからも山の天気は変わりやすいですし、多くの人が週末の天気予報に一喜一憂するでしょう。安全に登山をするためには天気を読むことが重要です。私も、多くの人に山梨の山を楽しんでもらうため、ハイカーに向けてなにか情報提供ができないかを模索しています。


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