秋風が立ち始めました。夏が暑かったぶん爽やかな風が一層心地よく感じられますね。一方で台風がもたらした大きな被害に、私たちが当たり前のように恩恵を受けてきた地球資源に対する考え方への反省を促されている気がして、胸が痛みます。自然が持つ素晴らしさと脅威を知るがゆえに、自然を大切に守りながらの共存を願わずにはいられません。
地球温暖化対策のひとつとして、都会にも緑を意識的に増やそうという流れがあります。私たちの生活を支える鉄道のターミナルや、高速道路のジャンクションに、オアシスのような庭園があるのをご存知ですか? 日々の忙しさの中で、つい通り過ぎてしまいがちな場所ですが、チャンスがあったらぜひ立ち寄ってみてくださいね。

屋上庭園から見る新宿副都心のビル群
屋上庭園から見る新宿副都心のビル群

JR大阪駅、見あげれば屋上に天空農園も!

大阪駅を挟んで建つ二つの高層ビルが大阪ステーションシティです。そのひとつノースゲートビルディングには10階に和(やわ)らぎの庭、11階に風の広場、そして14階には天空農園が配され、高層ビルならではの開放感のある空間が広がっています。和らぎの庭は緑と石を組み合わせた四季を感じる和の庭園、風の広場は、ゆっくりと風を感じながらベンチでくつろいだり、散歩を楽しんだりできる芝生やウッドデッキのある憩いの空間です。そして天空農園は、果物のなる樹や、季節の野菜、ハーブなどが植えられ、その収穫をも楽しめる、人々の憩いの場となっています。
筆者的には、大阪といえば広大な地下街でのショッピングや賑やかな夜の街での食べ歩き、都会の喧騒を楽しみに行く場所という印象を持っていました。久しぶりに訪れてみて、明るい陽射しと緑にあふれる晴れやかな様子に目を見張るものがありました。大阪駅のすぐそばグランフロント大阪のビルにも、緑ゆたかな屋上テラスガーデンがあります。都会のビル群の中で、気づかぬうちに広がっていた癒しのエリア。ホッと心が和みました。

グルグルまわってどこへ行くの?そのてっぺんは、公園なんです

高速道路は街が都市として発展して行くシンボルのような存在です。高速道路で行きたい方向に進路を変更する車が交差するのがジャンクションです。大橋ジャンクションは渋谷のすぐ近く、大きさは新国立競技場(仮称)のグランドと同じくらいのサイズとのこと。施設内は4層ループのトンネル構造になっており、その中を高速道路が走っています。都心から東名方面へ、東名から都心方面へと進路を選んで車はグルグルと楕円形の建物の中をまわりながら走ります。その建物の屋上部分が天空庭園として整備されているのです。大橋ジャンクションが開設された当初は、規模の大きさ、騒音や大気汚染などの環境に配慮した設備などが、大きな話題となりました。
さらに、屋上の換気所を使って、昭和初期の目黒川周辺の原風景を再現した「自然再生緑地『おおはし里の杜』 」は、地域に生息する鳥や昆虫の生態系を守り、近くの代々木公園や駒沢公園とともに、生き物のネットワークをつなげる働きも考えられているとのこと。都市開発と自然、人間との共存はこれからも大切なテーマです。都心に作られた自然をこのまま守り育てていきたいものですね。「おおはし里の杜」については下記にあげた「首都高の取り組み」をご覧下さい。

目黒・大橋ジャンクション 天空庭園
目黒・大橋ジャンクション 天空庭園

水辺のやすらぎ、睡蓮の庭が池袋に⁉

印象派の画家として名高いモネですが、何といってもさまざまな表情を描いた「睡蓮」はどなたもご存知のテーマではないでしょうか。モネが睡蓮を描くために造った日本庭園は、フランスはパリの近郊ジベルニーにありますが、なんと西武池袋本店の屋上にも、このような風情の庭が造られているのです。本当にささやかですが見つけた時は、あ~っ!と声をあげてしまいました。水面に映る垂柳の深く静かな影、蓮の葉が風に揺れるさま、眺めているだけで、心は静寂へと導かれていくよう。モネを連想させる睡蓮の庭を造るのはきっと大変だったろうと思います。一人の画家が追い求めた水と緑がゆらめく世界は、誰の心にも穏やかな安らぎをもたらしてくれるでしょう。
喧騒の街にふと現れるこんな場所。時には立ち止まって探してみてはいかがでしょうか。