冷たい飲み物ばかりに目がいってしまった夏、9月をむかえてもやはり残暑厳しく、アイスティーやアイスコーヒーに身体がホッとするのを感じます。でもそろそろ暑さに疲れた身体をいたわりたいと思う頃。実りの秋は美味しいものもたくさん出てきます。夏の疲れを少しずつ癒し、とりのぞいておきたいもの。日々の食事や運動に気をつけている方も多いことでしょう。忙しく動き回った季節も一段落。ひと息いれるティータイムを工夫してみませんか。

カモミールティーで気分をゆったりと

ハーブティーは薬がなかった頃の人間の賢い知恵。西洋の物語を読んでいるとよく出てきます。カモミールティーはその代表的なもの。『ピーター・ラビットの物語』をご存じですか? イギリス湖水地方の自然の中で暮らすうさぎの一家を中心とした物語です。作者ビアトリクス・ポターが描くイラストの愛らしさでも人気です。うさぎのピーターは決して入ってはいけない、と言われたマクレガーさんの畑-実はピーターのお父さんはこの畑で捕まりラビットパイにされてしまったという過去がありますから、ここに入るのはそれは大胆なことなのです-そこに好奇心一杯で入って行き作物を食べているところを見つかり、新品のジャケットも靴も失くして命からがら家に帰ってきます。恐ろしさにふるえるピーターをベッドに寝かせたお母さんうさぎがピーターに飲ませるのがカモミールティーです。少し甘さのあるこのお茶は気分を鎮めて身体を温めるといわれます。風邪気味だなと思った時、疲れているとき、興奮気味でよく眠れないときにはぴったりですね。お風呂上がりに飲むと香とともに気分がゆったりとしていくことでしょう。
同じイギリス生まれのミステリー作家アガサ・クリスティーが生み出した名探偵、ミス・マープルにもこのお茶が登場していました。人をじっくり観察して推理するのが得意なミス・マープルは、事件にでくわし興奮する婦人にそっと「カモミールのお茶を召し上がれ」と気遣うのです。いつも冷静で頭が切れるだけではない気づかいの女性ミス・マープルが持つお茶の文化にもとても惹かれます。

カモミールの花とお茶
カモミールの花とお茶

アップルパイとミルクティー

忙しさにかまけてランチを食べ損ねてしまった、なんていうことはありませんか。そんな時は少しボリュームのあるティータイムでエネルギー補給といきましょう。筆者のオススメはアップルパイとミルクティーです。甘く煮たりんごにシナモンが香り、さくさくしたパイの食感が心地よく響きます。『赤毛のアン』ではカナダのプリンス・エドワード島で実ったりんごをたっぷり使ったアップルパイを焼いていました。家事をきっちりとこなす厳格な性格のマリラがつくるお菓子はどれももちろんアンのお気に入り。美味しくておなかが満足するアップルパイは家庭の温もりを感じる素朴な味わいです。できたて熱々のパイを切ったときにとろりとはみ出すりんごが食欲をそそります。火傷に注意しながらゆっくりいただきましょう。一緒にミルクたっぷりの紅茶はいかがですか? お昼を抜いた空っぽのおなかの食欲を充分満たして、次の仕事への元気も湧いてくることでしょう。ぜひお試しあれ!

グリーンティー、そして抹茶は最強のお茶!?

夏の疲れを癒すお茶、日本人なら日本茶、グリーンティーかもしれません。今ではペットボトルの日本茶はあたりまえになりました。いつでもどこでも美味しい日本茶が飲めるのは嬉しいことです。そして抹茶はもはや国際的な味になっています。抹茶味のお菓子が空港のお土産屋さんで飛ぶように売れているのをみて驚くとともに嬉しくなります。少し前までは抹茶は茶道とともにあり、誰でも気軽に楽しむ、というわけにはいきませんでしたから、今の人気は想像を越えています。鮮やかな緑色はいかにも元気をくれそうな葉緑素、もちろん身体にいいことも嬉しいですね。苦味も味わいのアクセントになっています。洋菓子も抹茶の緑を使うことでバラエティが一気に広がった気がします。
抹茶味のクリームももちろん美味しいのですが、煎茶や番茶の香りにふーっと息を吐き、甘いあんこに癒され人心地つくという方も多いことでしょう。日々のなにげないひととき、あたりまえに供されるお茶にちょっと心を留めてみて下さい。緑色の美しさや透明感にあらためて気づかされるのではないでしょうか。ちょっとした気づきでその日一日が豊かになっていく、そんな経験も暑さに疲れた身体には効果的な癒しになりますよ。ひとときのお茶の時間を大切に過ごすってステキです。