最近のトマトは糖度が高いので、まるでフルーツのような甘さです。一方、昔のトマトはすっぱくて青臭かったので、そのままではおいしく食べることが難しかったため、何かをかけて食べていた人が多いと思います。さて、あなたの地域では子どものころ、トマトに何をかけて食べていましたか? 砂糖? 塩? それとも…。

昔のトマトはすっぱかった。嫌いな野菜の常連だった

今のトマトは果肉がジューシーなので、よく切れる包丁でカットしないと、実がつぶれてしまうこともありますが、昔のトマトは実がしっかりしていたので、包丁でスパッと切ることができました。色も今のような真っ赤な色ではなく、どことなく薄い赤色で、ところどころ色が抜けたように黄緑色になっていました。
今でこそ、イタリア料理などでトマトをふんだんに使うメニューが数多くありますが、イタリアンなんていう料理のジャンルがまだ浸透していなかった頃は、トマトは青臭くてすっぱくて、子どもの嫌いな野菜ランキングの上位に必ずといっていいほど入っていました。
今はカプレーゼやパスタ、ピザやサラダなど、トマトを使った料理を当たり前のように食べていますが、昔はトマトを食べる時は、料理に利用するというよりも、トマトを切って皿に並べただけのものが食卓に並んでいて、トマトが単品でおかずになっていました。
でも、このトマト。かなりすっぱかったので、それだけで食べると「おいしい」というにはほど遠いものでした。だから、何かをかけて食べている人も多かったのです。

砂糖をかけるのは東北と北海道に多い

東北も北海道も料理によく砂糖を使い、甘じょっぱい味つけにする傾向があります。一時期、「あまちゃん」で流行った「まめぶ」をはじめ、納豆に砂糖をかけたり、アメリカンドッグに砂糖をまぶしたり、茶碗蒸しに栗の甘露煮を入れたり、お赤飯に甘納豆を混ぜたりなどなど。
このように、東北や北海道の人は料理に砂糖を使うことに慣れているので、すっぱいトマトには砂糖をかけて食べる人が多かったようです。当時はイチゴもすっぱかったので、砂糖や練乳をかけて食べていましたが、それと同じようにトマトにも砂糖をかけて食べていたのかもしれません。

ご飯のおかずだから、塩をかけるのが一般的か。醤油派も多い

今の甘いトマトなら、冷やして切ってオリーブオイルと塩・コショウをかけるだけで、立派な一品になりますが、昔のすっぱいトマトは、何かをかけなければ食べられないほどすっぱくて青臭かったので、とりあえず塩をかけて食べていた人も多いと思います。また、塩だけでなく、当時は醤油をかけていたという話もよく耳にします。今ならトマトに醤油?? と思われるかもしれませんが、昔は当然のようにトマトに塩や醤油をかけて食べていました。
今のトマトは甘いので、湯剥きして、あえて砂糖やハチミツに一晩つけて、フルーツ感覚で食べたりもしますが、昔は切ったトマトはそのままで「ご飯のおかず」というカテゴリーだったので、塩派だった人から見れば、ご飯のおかずに砂糖をかけて甘くして食べるなんて考えられなかったかもしれませんね。

今やトマトは好きな野菜の第1位

嫌いな野菜の常連だったトマトですが、甘くてジューシーに生まれ変わったあとは一転して、今では好きな野菜ランキングの常連となりました。タキイ種苗の「好きな野菜」の調査によると、トマトは毎年、一番人気で、2018年度では大人は10年連続、子どもは7年連続の第1位を獲得しています。
すっぱくて青臭くて、何かをかけなければ食べづらかったトマトですが、いまや人気ナンバーワンの野菜。まだまだ日差しがまぶしい季節です。赤くて甘いトマトを食べて、暑さを乗り切りたいですね。
〈参考:タキイ種苗㈱「8月31日は野菜の日! 2018年度 野菜と家庭菜園に関する調査」〉
最近はフルーツトマトという品種があるように、まるで果物のような甘さのトマトが出回っています。そんな甘いトマトに、わざわざ砂糖をかける必要はなく、そのままで十分においしく食べることができます。昔から比べると野菜や果物の糖度が高くなり、全体的に甘くなっています。「こんな甘いトマトはトマトじゃない」と、昔ながらの味を懐かしむ人もいるでしょう。甘いトマトに慣れてしまった今、昔のトマトを食べたらどんなふうに感じるのか、ちょっと食べてみたい気もします。