「ゆ」の字ののれん、「〇〇湯」「××温泉」の看板、時代を感じさせるようなレトロな店構え……。
道を歩いていて、ふと銭湯に出くわし、懐かしい気持になることはありませんか?
「ゆ」と描かれたのれんは「湯のれん」というそうです。湯のれんをくぐって下駄箱、番台、脱衣場、浴場……。
古いテレビドラマや映画ではお馴染みの銭湯ですが、家庭風呂が普及して、わざわざ銭湯に行く必要もなくなり、どうせ行くならスーパー銭湯や温泉……と銭湯は激減してしまいました。
毎月26日は「風呂の日」。ついつい素通りしてしまう銭湯ですが、今日は「銭湯」について、知らなかったうんちくをいろいろ学んでいきましょう。

毎月26日は「風呂の日」
毎月26日は「風呂の日」

外国人は水着姿で温泉に入る!?

風呂好きの日本人。多くの日本人が毎日のように風呂に入りますが、欧米ではシャワー浴が主流です。
日本での入浴は、体の汚れを落とす以外にも、疲れを癒したり、精神面のリラックス効果などがありますが、海外では、「体の汚れを落として清潔にする」が風呂の目的になっています。そのためシャワーですませることが多く、湯船につかる習慣がほとんどありません。
他にも、日本と海外との風呂習慣の違いはいろいろあり、
寝る前に風呂に入るのは日本人だけ?
日本では、就寝前に風呂に入り、一日の体の汚れと疲れを洗い流して眠りにつく、というのが普通ですが、海外では、シャワーは朝、起床後に使うのが一般的。体を洗い、清々しい気持ちで一日をスタートさせる、ということですね。
また、高湿度の国では1日2回シャワーを浴びることもあり、同じアジア圏の中国でも、大半はシャワーを使うようです。
外国では、誰かと一緒に風呂に入る習慣はない
子どもが小さい頃など、親が一緒に入浴して子どもの体を洗う、というのは日本では一般的なことですが、海外では誰かと一緒に入浴する習慣はないようです。
アメリカでも大ヒットしたジブリアニメ「となりのトトロ」に、父親と娘たちが入浴するシーンがあります。日本ではほほえましい親子のコミュニケーションに見えますが、海外では戸惑いや議論があったそうです。
外国人は温泉に入るのに水着を着る
海外にも温泉はたくさんありますが、水着を着て男女で泳ぐように入浴するスタイルが主流のようです。日本でいうなら、温水プールのような感覚でしょうか?
(水着着用可の温泉も一部ではあるようですが)湯船にタオルもつけられない日本では、ちょっと考えられないことですね。
そもそも、日本でいうところの「裸の付き合い」という観念がないのかもしれませんね。
温泉入浴は医療行為というイメージが、ヨーロッパでは根強いということです。

海外では浴槽につからず、シャワー浴が主流
海外では浴槽につからず、シャワー浴が主流

江戸時代、銭湯は男女混浴だった!?

風呂の歴史は6世紀頃、仏教とともに中国から伝わったといわれています。
仏教の教えに「風呂に入ることは七病を除き、七福が得られる」というものがあり、寺院に「浴堂」が備えられるようになりました。これは僧侶たちの体を清めるという意味も含まれ、やがて、庶民も浴堂を使用するようになり、入浴の習慣が広がったといわれています。
各家庭に内風呂が普及するのは昭和20年代以降。それまで多くの人が銭湯を利用していましたが、その前身となるのが「湯屋(ゆや)」とよばれる公衆浴場でした。
1813年頃の江戸市中には、約600軒もの湯屋があったといわれています。しかもこの湯屋、なんと、江戸中期までは混浴だったというではありませんか! 当時は水も、湯を焚くための薪も貴重だったことが関係しているようです。
ちなみに混浴は「入込湯(いりこみゆ)」といったそうです。
ほどなくして「寛政の改革」によって男女混浴は禁止されるものの、改装費がかかることから、浴槽を板で仕切る程度で厳密に区別はされていなかったそうです。この様子に黒船でやって来たペリーは、
「江戸では男も女も裸体をなんとも思わず、互いに入り乱れて混浴している」
「日本遠征記」のなかでこのように語っています。さぞや、驚いたことでしょうね。
この曖昧な禁止令は明治時代まで続き、内務省の法令によって完全に禁止となったのは1900(明治33)年のことでした。

銭湯の店頭に掲げた木の板に「わ」「ぬ」の字。その意味は?

海外にはない、日本独特の風呂文化が花開いていったのがわかりますね。また銭湯には地域のコミュニティ的な役割もありました。ご近所や家族や親戚、友達同士など……背中を流し合ったり、湯につかりながら和んだり……おおらかな「裸の付き合い」が楽しめました。
今も東京の銭湯で使っている看板、
木の板に「わ」の字、その裏が「ぬ」の字
この意味、わかりますか?
答えは、
営業中は「わ」の字で、「板」の上に「わ」で、お湯が「わいた」
営業終了では「ぬ」の字で、お湯を「ぬいた」
また、弓矢が銭湯の看板で「弓射る(湯入る)」──。
ほのぼのとしていて、いいですね。
地方によって差はありますが、今、銭湯の料金は460円ほど。
自宅や部屋に風呂があれば、安くはないかもしれません。でも、広々とした浴槽で手足を伸ばしながら、ゆったりと壁絵を眺めてみるのはどうでしょう?
銭湯によっては薬草などを使った「日替わり湯」、ジェットバス(浴槽の下や横に穴を設けて、そこから気泡や湯が噴出する)や電気湯(弱電気を湯の中に流す)、サウナ、水風呂、露天風呂……(芋洗い状態ではない)すいている銭湯で、これらを悠々と楽しめるとしたら、たまにはいいのではないでしょうか?
毎月26日の「風呂の日」には、客に無料入浴券を配るなど、銭湯や温浴施設などでイベントが行われることも多いそうです。
この夏、ちょっとした冒険気分で、銭湯を覗いてみませんか?

富士山をのぞみながら、悠々と……
富士山をのぞみながら、悠々と……