2019年7月19日公開の映画『天気の子』は、その名の通り天気が重要な要素となっています。日本気象協会を訪れた主人公とヒロインを演じた声の主演2人──醍醐虎汰朗(だいごこたろう)さんと森七菜(もりなな)さんは、映画のアフレコを通じて自分はどう変わったか、天気についてどう感じるようになったかをテーマに対談を行いました。MC役は、気象予報士の奈良岡希実子(ならおかきみこ)さんです。

『天気の子』のアフレコについて語る森七菜さん(右)と醍醐虎汰朗さん(中)
『天気の子』のアフレコについて語る森七菜さん(右)と醍醐虎汰朗さん(中)

声優初挑戦の2人に、新海監督は

新海誠監督の新作ということで、誰が声優を務めるかにも注目が集まりました。醍醐さんも森さんも、高倍率の厳しいオーディションを経て見事に主人公とヒロインの座を射止めました。2人とも初の声優のお仕事ということもニュースになっています。
奈良岡 『天気の子』で声優初挑戦となったわけですが、アフレコの現場で監督がどう接していったのか興味があります。
醍醐 新海監督は、森嶋帆高(もりしまほだか)と僕が似ていると言ってくれたんです。でも、僕はあんまり似てるところはないんじゃないかと思いますが……。
森 いや、私から見たら全体的に似てると思いますよ。アフレコをしているうちに、だんだん帆高の細かい表情が見えてくるようになって。最初は線だけの輪郭だったのに、帆高が醍醐君に見えてきたというか。奈良岡 徐々に実態を持ってきたわけですね。確かに似てると思いますよ、私も。ご自分ではなかなか気付かないものですよね。天野陽菜(あまのひな)を演じた森さんはいかがですか。
森 私は新海監督に『天気みたいなところが似てるね』と。陽菜は笑っていると思ったら怒っていたり、泣いているかと思えば笑っていたりというところがあります。行動的のように見えて『やっぱりいいや』とすぐ止めてしまうとか。そういう気分屋のところは似ているんじゃないかって思います。
奈良岡 アフレコが進むにつれだんだんキャラクターになりきっていったんでしょうか。そういう点が、監督の手法なのかもしれませんね。

初めて声優を体験した2人。アフレコが進むうちにそれぞれのキャラクターに似てきたそう
初めて声優を体験した2人。アフレコが進むうちにそれぞれのキャラクターに似てきたそう

空を見上げて、気付かなかったことに気付くように

醍醐さんは東京生まれの都会っ子。自然の一部としての天気を、今まであまり意識せずに暮らしてきたのではないか、と奈良岡さんは感じたようです。
奈良岡 醍醐さんはこの映画に関わってから、天気についての見方が変わったということはありますか。
醍醐 ふだんから天気をあまり気にする方じゃありませんでした。雨の日は残念だなとか、晴れた日は暑いなぁとか、曇りの日は別に……という感じだったんです。でも、この映画を経験してから空を見上げることが多くなりましたね。
奈良岡 やはり空に関係のある内容だからですね。
醍醐 雲の間から太陽が動くのが見えたりとか、雨の日は水滴が空から落ちてくるのを見たりとか。アスファルトの水溜まりにポタポタ垂れている様子を、じっと見てたりもします。
奈良岡 今まで気付かなかったことを発見するようになったんですね。
醍醐 そうです。今まで僕って下を向いて歩いてたんだなと思って。意識的に上を見るようになりました。

このアフレコをきっかけに、毎日の気象に興味を持ちはじめた醍醐さん
このアフレコをきっかけに、毎日の気象に興味を持ちはじめた醍醐さん

スマホの中は雲の写真でいっぱい

一方、森さんは大分県在住。広い空の下で、東京に較べればたっぷりの自然を感じながら暮らしているのではないでしょうか。奈良岡さんは同じ質問を森さんにも投げかけました。
森 やっぱり私も空に注意を向けるようになりました。ふだんは大分から通っているんですが、飛行機に乗っているときに雲を突き抜ける瞬間を写真や動画に撮っています。だからスマートフォンのカメラロールは雲ばっかりになりました(笑)。
奈良岡 確かに、飛行機だと雲はたくさん見えますからね。予告映像にも空や雲の映像がいっぱい出てきて、とてもきれいだと思いました。この映画を観た皆さんも、空を見上げるようになってほしいと思います。
森 奈良岡さんが好きな空って、映画の中に出てきましたか。
奈良岡 私は、雲の切れ間から太陽の光がさっと差して地上に届く場面に見入ってしまいました。『天使のはしご』という、自分自身とっても好きな気象現象です。そうそう、雲に関しては今日別のコーナーでもう少し詳しく掘り下げますので、楽しみにしていてください。

スマホの中は雲の写真でいっぱいという、まさに天気の申し子の森さん
スマホの中は雲の写真でいっぱいという、まさに天気の申し子の森さん