「かっこ面白い古語と俳句の世界」──〈其の五〉

2019/06/30 17:00

6月も今日で終わり、2019年も半分が過ぎようとしています。6月22日に二十四節気の「夏至」を迎えたことで、ここからの15日間は一年で最も日が長い時季であり、早寝早起きで一日をフル活用できそうですね。 さて、俳句はよく写真や絵画に例えられますが、それも、わざわざ行く絶景ではなく、身近なものから観察する「客観写生」が大切です。「客観写生」は何気ない身近な風景から、きらりと光る素材を見つけるのがポイントだともいわれています。 俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけのぞいてみませんか?

読めると楽しい古語「か行 き・く 編」 俳句を作るには、言いたいことを伝えるために何度も考え直す(推敲)が必要です。句の格式を高め、俳句という十七文字の文学を完成させるための言葉選びの一つが、古語なのです。 古語は名詞だけでなく、動詞・副詞などさまざまなジャンルがあるのですが、まずは名詞からご紹介しています。 ◆今回は「き・く」の名詞の読み方ですよ。レッツ・チャレンジ!! Q1 「階」  *ヒント:4文字 Q2 「桔梗」 *ヒント:4文字:ききょう以外 Q3 「切岸」 *ヒント:4文字 Q4 「陸」  *ヒント:2文字:りく以外 Q5 「種種」 *ヒント:4文字 Q6 「嚔」  *ヒント:3文字 Q7 「蛇」  *ヒント:4文字:へび以外 Q8 「庫裏」 *ヒント:2文字 Q9 「厨」  *ヒント:3文字 Q10 「鉄」  *ヒント:4文字 Q11 「久遠」 *ヒント:3文字 ◆答え合わせで古語の意味を覚えよう! 今回は古語ならではの読み方が多かったかもしれませんね。 答えと意味は以下の通りです。 A1 「階」 読み:きざはし 意味:階段 〈きざはしによべ(※ゆうべの意)の聖樹の星ひろふ〉能村登四郎 A2 「桔梗」 読み:きちかう(きちこう) 意味:ききょうのこと。秋の七草のひとつ。秋の季語 〈桔梗の空の広がる信濃なり〉阿部誠文 A3 「切岸」 読み:きりぎし 意味:絶壁 〈切岸へ出ねば紫雲英(げんげ)の大地かな〉 中村草田男
A4 「陸」 読み:くが 意味:りく。おか 〈鱚釣(きすづり)や青垣なせる陸の山〉山口誓子 A5 「種種」 読み:くさぐさ 意味:いろいろ。さまざま 〈古町の路くさぐざに秋の暮〉芝不器男 A6 「嚔」 読み:くさめ 意味:くしゃみのこと。冬の季語 〈嚔して円空仏と別れけり〉庄司圭吾 A7 「蛇」 読み:くちなは(くちなわ) 意味:へびの異名。夏の季語 〈畔草に乗る蛇の重さかな〉飯島晴子 A8 「庫裏」 読み:くり 意味:寺院の台所にあたる建物(庫裡とも書く) 〈花の庫裡白き襖に仕切られし〉大野林火 A9 「厨」 読み:くりや 意味:厨房。台所 〈飯蛸をめでたきものとして厨〉高野素十 A10 「鉄」 読み:くろがね 意味:鉄の和名 〈くろがねの丹田ひかる甘茶仏〉野澤節子 A11 「久遠」 読み:くおん 意味:長く久しいこと。永遠 〈堂塔の月も久遠や花会式〉水原秋櫻子 (参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社/合本俳句歳時記/俳句開眼100の名句 ひらのこぼ・著 草思社)
尾道の石段
尾道の石段
古語はこれから学ぶ新しい日本語 今回は一文字で意外な読み方をする漢字がありましたね。おそらく授業では習わなかった読み方もあったのでは? 古語を新しい日本語としてとらえれば、新鮮な気持ちになれるのではないでしょうか。 「かっこよくて面白い古語の世界」……まだまだ続けていきます。

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