目にも涼やか。まだまだ知らない刺身の“あれこれ”

2019/06/19 19:00

まぐろに鯛、サーモン、えび、うに……。わさびや青じそ、小菊、大根などの刺身のつまに彩りよく盛られた刺身は、目にも涼やかでご馳走感もあり、暑さを忘れますね。食欲のないときにも、刺身の皿を前にすれば、生唾ごっくん……ではないでしょうか? 日本人が大好きな刺身。そのうえ刺身は低カロリーで栄養価が高く、ヘルシー……。さらに刺身の便利なところは、加工調理することなく、買ってきた刺身を(柵なら切り分けて)皿に盛ればいいだけ。ちょっとした和皿につまごと盛れば、それだけで贅沢な一皿に……。 今回は、夏だからこそ楽しみたい、まだまだ知らない刺身の“あれこれ”をご紹介しましょう。

食べ飽きない刺身
食べ飽きない刺身
「刺身」と「造り」に違いはあるの? そもそも、どうして「刺身」なのでしょう? また、「活き造り」「姿造り」……というように、「造り」という呼び方もしますね。「刺身」と「造り」、違いはあるのでしょうか? 日本は海に囲まれた島国なので、昔から生の魚を食べる文化があり、多種多様の魚を切り身にして食べていました。 刺身の語源は、魚を切り身にして盛り付ける際、その魚の種類がわかるように魚の鰭(ひれ)を切り身に刺し、区別できるようにしたのが始まりといわれています。 また、「刺身」を「切り身」と言わないのは、「切る」という言葉が人を「切る」につながるということで、武家社会から嫌われたとされています。 さらに「刺身」という名前も「身を刺す」に通じ縁起が悪いとされ、関西地方では「造り」と呼ばれるようになりました。 また、生け簀に泳がせていた魚を活きたまま調理する「活き造り」のイメージから、大皿やこだわった盛り付け方のものを「造り」、普通に盛り付けられたものを「刺身」と呼び分けられることもあるようです。 あの、まぐろのトロが、「猫またぎ」だった!? 刺身の原形は鎌倉時代に始まったとされています。もとは、魚を薄く切って生のまま食べる漁師の即席料理でした。この頃はまだ醤油がなかったため、膾(なます=生魚を細かく刻み、酢で味つけする調理法)にしたり、ワサビ酢やショウガ酢で食べていました。 刺身と醤油とは切り離せない関係にありました。 室町時代に醤油が登場し、その相性のよさから醤油につけて刺身を食べるようになりますが、この頃にはまだ醤油は高級品であったため、刺身を食べることができたのは一部の人々だけだったようです。 一般庶民に刺身料理が広まったのは、醤油が庶民にも普及した江戸時代の末期からといわれます。江戸では刺身を専門に扱う「刺身屋」という屋台も出るほどでした。 現在では刺身の代表格、高級魚として定着している「まぐろ」ですが、江戸時代に刺身で食べられていたのは赤身だけ。 「口のなかでトロっととろける食感」から「トロ」と名付けられたトロは、赤身に比べて腐りやすく味が落ちるため、「猫も嫌って食べずに、またいで通る」=「猫またぎ」と呼ばれ、捨てるか畑の肥料にされていたようです。
高級なトロ……
高級なトロ……
刺身のひと手間レシピ それでは、簡単にできる、刺身のひと手間レシピをご紹介しましょう。 【漬けまぐろ】 材料 まぐろ しょうゆ 大さじ3 みりん 大さじ1.5 料理酒 大さじ2 〈1〉みりん・酒はさっと弱火にかけアルコールを飛ばす。この際、火にかけ過ぎると水分も飛んでしまうため、短時間でさっと行う。 〈2〉〈1〉にしょうゆを加えて混ぜたあと、マグロを入れて冷蔵庫で漬ける。 ・漬け時間は、10分程度から美味しく食べることができる。 ・丼にする場合はご飯にしそ・卵黄など。 【昆布じめ】 材料 鯛、平目、すずきなどの白身魚 昆布 日本酒 〈1〉ペーパータオルに日本酒を含ませ、昆布の表面をまんべんなく湿らせる。 〈2〉昆布の上に刺身を一切れずつ並べ、昆布をもう1枚のせて挟む。 〈3〉ラップで全体をぴったりと包み、昆布のうまみを早く移すために重石を昆布にのせる。 〈4〉冷蔵庫に入れて寝かせる。 ・薄切りの場合3~4時間後が目安。薄切りではなく「柵」で作った場合は、昆布で挟んだまま最低1日は寝かせ、昆布を外し、食べる分だけその日に切って4~5日で食べきる。 【カルパッチョ】 材料 鯛、鯵、サーモン、ぶり、たこなど オリーブオイル、レモン果汁、塩、ブラックペッパー(各適量) 具材(刺身)にソースをふりかける。 ・香味野菜と一緒に、サラダ感覚で!
サラダ感覚で食べたいカルパッチョ
サラダ感覚で食べたいカルパッチョ
日本人の「刺身」へのこだわり 和食の店などに行って刺身を注文すると、きれいに切られた刺身に、つまや大葉、わさび……が職人芸といっても過言ではないような、絶妙な配置で盛り付けられて出てきますね。スーパーなどで販売される刺身にも、つまの他にわさびやしょうが、ものによってはねぎや塩などが添えられていたりします。 刺身には、日本人特有の誇りやこだわりのようなものが感じられます。刺身そのものの美味しさ以上に、「目で味わう」……日本人の美意識があるのではないでしょうか? 暑いし忙しいし、気力も余裕もない……日常のなか、好みの刺身をちょっと気取った和皿に盛って、ゆっくりと味わってみては……? 今では色んな醤油が出まわり、チューブのわさびにも各種あります。そして、ビールに日本酒、焼酎に白ワインもいいですね? ゆったりと刺身を味わいながら、風鈴の音に耳を傾けるのも夏の醍醐味……。 ── 最後に、刺身のつまは殺菌や消化を助ける働きもあるので、残さずに食べましょう。小菊も「食用菊」なので、「花びらだけ千切って醤油の中に入れ、刺身と一緒に食べていただく」のが正しいそうです。香りもよくなり、シャキシャキした花びらの食感も楽しめるそうです。
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