令和になって1カ月、いよいよ6月に入りました。二十四節季では6月6日が「芒種」、6月22日が「夏至」を迎えます。芒種とは、禾(のぎ)のある植物を播く、の意味を持ち、田植えが始まり、天候が梅雨めいてくる時期でもあるのです。
さて、沖縄・奄美地域ではすでに梅雨入りをしていますが、そろそろ各地でも梅雨入りのニュースが聞かれる頃なのではないでしょうか。とはいえ、この頃の季節外れの暑さには雨も待ち遠しいですね。
梅雨は、じめじめとした陰湿な季節と思いがち。けれども日本にとっては必要で大事な時季。そこで、今回は梅雨の意味や、夏の雨の季語に関して調べてみました。

「梅雨」の意味と夏の雨の季語

「梅雨」とは、もともと「入梅」という時候の季語であり、暦の上では6月11日か12日、太陽の黄経80°に達したときをいいます。その後約30日間が梅雨の時期とされますが、実際は年や地域で異なり、一般的には6月中旬から7月下旬ころをさします。
古くは「五月雨(さみだれ)」といわれ、江戸時代になって梅雨と呼ばれるようになったそうです。
梅雨の語源は、梅の実の熟すころからとも、黴の生じやすい天候のための黴雨(ばいう)とも呼ばれているそうですよ。
次は夏の雨の名前です。ポピュラーなものから順にご紹介します。
明るさが特徴「夏の雨」
もちろん夏に降る雨のことですが、梅雨の雨ではなく、背景に明るさを感じる雨をいいます。なかでも新緑の季節に降る雨「緑雨(りょくう)」は、ひときわ明るい感じがありますね。
梅雨とは違う? 「五月雨」
旧暦5月に降る長雨をいい、古くから和歌でも詠まれてきました。五月(さつき)の「さ」と水垂れ(みだれ)を結んだ言葉だといわれています。梅雨が時季を含んだ言葉であるのに対して、雨そのものをいいます。
たくさんの「梅雨」の季語
梅雨を含んだ季語は多くあります。入梅前の梅雨は「走り梅雨」、雨が少ない梅雨を「空梅雨」または「旱(ひでり)梅雨」、激しい梅雨の雨を「荒梅雨」「男梅雨」とも。ほかにも「梅雨の月」「梅雨の星」など。
夏の雨といえば「夕立」
夏の夕方に降る局地的な激しい雨。急激に暗くなり、雷を含んだ大粒の雨を降らせます。やんだ後は、からりと晴れ涼気を誘うことも。「ゆだち」「よだち」とも読み、前が見えないほどなので「白雨(はくう)」、「驟雨(しゅうう)」とも呼ばれます。

雨乞いのお蔭? 「喜雨(きう)」
日照りが続き、田畑が干からび、草も枯れかけたときに、ようやく降る恵みの雨のこと。「雨喜び」ともいい、古くは雨乞いなどが行われていたそうです。
いにしえのロマンス「虎が雨」
旧暦5月28日に降る雨のこと。親の仇討(かたきうち)ののち討たれて亡くなった鎌倉時代の武士、蘇我十郎祐成の愛人であった大磯の遊女、虎御前が十郎の死を悼んで涙の雨を降らせるという言い伝え。
夏なのに「氷雨(ひさめ)」?
氷雨とは、雹(ひょう)の別名で、れっきとした夏の季語です。今年のゴールデンウィークに雹が降ったニュースは記憶に新しいところですね。積乱雲がもたらす現象で、予報がしづらく、農作物に甚大な被害を与えることがあります。
渋い! 「卯の花腐し(うのはなくたし)」
旧暦4月を卯月(うづき)といいますが、そのころ降り続く霖雨のこと。卯の花という白くて小さい花を腐らせる雨の意味を持ち、使い方が上級者向きの、あまり一般的には知られていない渋い季語です。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/広辞苑)

白雨(夕立)
白雨(夕立)

季語は俳句のためだけにあらず

知っている言葉、知らなかった言葉、たくさんありましたね。
近年地球環境の変化に伴い、異常気象が当たり前、それと同時におどろおどろしい気象用語ができあがりました。けれども、私たちの先祖はこんなにも美しい言葉を残してくれています。
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
梅雨は農作物や日本にとって必要な季節でもあり、あらためて四季に恵まれた日本に感謝したくなりますね。ちなみに、雨ではありませんが「虹」も夏の季語です。雨上がりに、夏の強い太陽の光で最も輝く季節だからなのですが、雨と関連づけて覚えておきたいですね。

卯の花
卯の花