令和元年の5月も終わりに近づきました。二十四節季では、万物の気が満ちる「小満」の時季にあたりますが、梅雨入りのニュースもぼちぼち聞かれるようになりました。
民放の芸能人による俳句番組も相変わらず人気とのことですね。最近は先生の添削がない句を詠まれる方も多くなりましたが、それでも添削がズバッと決まった時は、日本語の持つ広がりに感心する方も多いのでは?
俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけのぞいてみませんか?

読めると楽しい古語「か行 編」

同番組で先生もよく使われているのが文語や古語。
俳句は、たった十七文字しかないので、物語や映像を入れるための言葉選びが大切です。言いたいことを伝えるには何度も考え直す(推敲)が必要であり、また句の格式を高める役割をするのが古語なのです。
今回は「か行」の名詞を集めてみました。
いくつ読めるかな? レッツ・チャレンジ!!
<か行>
Q1 「筧」 *ヒント:3文字
Q2 「彼処」 *ヒント:3文字
Q3 「形代」 *ヒント:4文字
Q4 「片方」 *ヒント:3文字
Q5 「彼方」 *ヒント:3文字
Q6 「川狩」 *ヒント:4文字
Q7 「蝙蝠」 *ヒント:4文字:動物です
Q8 「土器」 *ヒント:4文字
Q9 「峡」 *ヒント:2文字
Q10 「腕」 *ヒント:3文字:うでではありません
Q11 「雁」 *ヒント:4文字
Q12 「顔」 *ヒント:4文字

答え合わせで古語の意味を覚えよう!

今回は普段から目にする漢字が多かったですね。
答えと意味は以下の通りです。
A1 「筧」 読み:かけい(かけひ)
意味:竹などを使い、庭などへ水を引くためにかけ渡した樋(とい)
〈春雨や少し濁りし筧水〉  高野素十
A2 「彼処」 読み:かしこ
意味:あそこ
〈端居せしかしこを濡らす夕立(ゆだち)かな〉  前田善羅
A3 「形代」 読み:かたしろ
意味:禊(みそぎ)などで人体の代わりになる撫で物。夏の季語
〈形代の襟しかと合ふ遠青峰(とおあおね)〉  能村登四郎
A4 「片方」 読み:かたえ(かたへ)
意味:かたわら。そば
〈鶯や母をかたへにパン切れば〉  中村汀女
A5 「彼方」 読み:かなた
意味:あちら
〈麦の穂のかなたの村の夕汽笛〉  飯田龍太
A6 「川狩」 読み:かわがり(かはがり)
意味:川などで魚を大量に捕るため堰を作る手法。夏の季語
〈川狩のうしろ明りの木立哉〉  小林一茶
A7 「蝙蝠」 読み:かわほり(かはほり)
意味:コウモリの古い呼び名。夏の季語
〈かはほりや夕されば希望獲る奇癖〉  中村草田男
A8 「土器」 読み:かわらけ(かはらけ)
意味:素焼きの陶器
〈かはらけの空とんでゆく二月かな〉  桂 信子
A9 「峡」 読み:かい(かひ)
意味:山と山との間
〈峡深き日はうつうつと杉の花〉  西東三鬼
A10 「腕」 読み:かいな(かひな)
意味:二の腕
〈ぼろ市やかひなに着せて女物〉  上田五千石
A11 「雁」 読み:かりがね
意味:雁(がん)に同じ。春に北に帰る渡り鳥。秋の季語
〈焼跡にかりがねの空懸りけり〉  大野林火
A12 「顔」 読み:かんばせ
意味:かお。かおつき
〈かんばせを日に照らされて墓詣(はかもうで)〉  川端茅舎
(参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社)

古語はこれから学ぶ新しい日本語

いかがでしたか? 日常で使う漢字でも、古語の読み方では大きく違っている漢字もありましたね。古文の授業が苦手だったという方も、新しい日本語としてとらえれば、かえって新鮮な気持ちになれるのではないでしょうか。
「かっこよくて面白い古語の世界」まだまだ続きます。

神護寺のかわらけ投げ
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