新年度が始まりましたが、あなたは自分の「日本語力」に自信はありますか?
とくに、仕事の場やあらたまった席では、正しい言葉づかい・適切な表現を心がけたいもの。ただ、普段の会話やメールなどで見聞きする言葉や慣用句の中には、本来の意味と取り違えて使われているものが結構あるようです。たとえば、文化庁の「2017年度・国語に関する世論調査」によると、7割近くの人が「檄(げき)を飛ばす」の意味を誤って理解しているとか。
そこで今回は、間違って使われがちな慣用句や、使用を避けたい重ね言葉・二重表現をピックアップ。この春、新社会人になった皆さんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

意味を取り違えやすい言葉・慣用句

【檄(げき)を飛ばす】
本来の意味は「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」。2017年度の文化庁の調査では、「元気のないものに刺激を与えて活気づけること」と勘違いしている人が約68%、意味を正しく理解している人は約22%でした。
【なし崩し】
本来の意味は「少しずつ返していくこと」です。同じく文化庁の調査では、「なかったことにする」と勘違いしている人が約65%、意味を正しく理解している人は約19%にとどまりました。
【煮詰まる】
会議や仕事などで「これ以上いいアイデアが出ない、議論が行き詰まって結論が出ない」というネガティブな意味で使われがちですが、本来の意味は「議論や意見が十分に出尽くして、結論が出る状態になること」。つまり「煮詰まる」のは、歓迎すべきことなのです。
【失笑】
「笑いも出ないぐらいあきれること」という意味で使われがちですが、本来の意味は「面白すぎて、こらえきれずに吹き出して笑うこと」。「あきれて笑うこと・あざ笑うこと」を表現したい場合は「冷笑」「嘲笑」などを用います。
【役不足】
本来は「その人の力量の割には見劣りする役」という意味なのですが、「その人の力量に対して役目が重すぎる」という正反対の意味で使われているのをよく耳にします。結婚式の司会などを頼まれて、「役不足ながら、務めさせていただきます」なんて決して言わないように! 「力不足ながら……」と言いましょう。
【姑息】
「卑怯」「ずるい」と勘違されやすい言葉ですが、本来は「一時的」「その場しのぎ」という意味です。たとえば、「姑息な手段」とは「卑怯でずるいやり方」ではなく、「一時しのぎの手段」ということになります。
【敷居が高い】
「高級すぎて(店などに)入りにくい」と誤解して使われているケースが多いようです。本来の意味は「相手に不義理などをしてしまい、そこに行きにくい」状況のこと。親の反対を押し切って駆け落ちした娘・息子が、実家へ帰りにくいような場合に使います。
【確信犯】
「悪いとわかっていながら行った行為・犯罪」という意味で使われがちですが、本来の意味は「信念に基づいて、本人が悪くないと信じて行った行為・犯罪」のこと。つまり、やった本人に悪意はないということです。

知らずに使いがちな「重ね言葉」「二重表現」

【一番最初(最後)・一番ベスト】
最初・最後の「最」や「ベスト」には一番という意味があります。よって「一番最初(最後)に登場した」「一番ベストな方法」という使い方は間違いです。正しくは「一番に登場した・最初(最後)に登場した」「一番よい方法・ベストな方法」となります。
【後で後悔する】
「今やらないと後で後悔するよ」というのは間違い。後悔という言葉には「後」が入っているので「後で」は不要です。正しくは「今やらないと後悔するよ」「今やらないと、後で悔やむよ」となります。
【満天の星空・満面の笑顔】
「満天の星空」といった表現をよく見聞きしますが、満天の「満」は「いっぱい」、「天」は「空」という意味なので、星空の「空」とダブって「空いっぱいの星空」と妙な表現になってしまいます。正しくは「満天の星」です。
同じように、満面の「面(=つら)」は「顔」という意味なので、笑顔の「顔」とダブります。正しくは「満面の笑み」となります。
【させていただきます】
謙譲を示す「させていただきます」を言葉に付けると丁寧に聞こえるので、つい多用してしまいがちです。ただ、謙譲の意味をもつ動詞に付けると二重敬語になり、回りくどく聞こえるだけでなく、日本語の文法上でも誤りとなります。
たとえば「拝見」は謙譲語なので、「拝見させていただきます・拝見いたします」は間違い。正しくは「拝見します」となります。その他、「伺わせていただく」「申し上げさせていただく」「頂戴させていただく」なども二重敬語となりますので、「伺う」「申し上げる」「頂戴する」とシンプルに言い切りましょう。
また、「車に乗らさせていただく」「休まさせていただく」のような「さ入り言葉」も、大人として避けるべきNG表現です。本人はへりくだって言っているつもりでも、相手には無礼・稚拙に聞こえます。正しくは「車に乗せていただく」「休ませていただく」「休みをいただく」となります。 ── さて、あなたはどれぐらい正しく理解していましたか?
日本語って本当に難しいですよね。言葉は時代によって変わりゆくものとはいえ、正しく理解して使わないと人間関係がギクシャクしたり、人格や人間性を疑われたり……なんてことにもなりかねません。言葉はその人の心を表わすものです。品格と教養を備えた社会人として、やはりきちんとした美しい日本語を使いたいものですね。
※参考/文化庁「国語に関する世論調査」