寒い冬から少しずつ春らしい暖かな陽気の日も多くなってきた3月。そんな冬から春にかけてのこの時期は、おいしい食材がたくさん。
なかでも、旬の時期に食べておきたいのが「鯛」です。入学や卒業、就職など節目の時期が近いこともあり、縁起物とされる鯛を見かけるタイミングは、他の季節に比べ多いかもしれません。
鯛といえば恵比寿様が掲げていたり、お祝いごとで食卓にのぼったりと、昔から縁起物として重宝されています。でもなぜ、鯛は縁起がよいといわれているのでしょうか?

縁起物として人気の「真鯛」
縁起物として人気の「真鯛」

日本人から愛される紅白の体

ご存じのとおり、鯛の体の色といえば「赤」ですね。水引などにも見られるように、日本人にとって赤と白の組み合わせは縁起のよい色の代表です。鯛もまさに赤と白の組み合わせであることから、華やかなイメージがもたれています。
鯛の中でも、祝いの席によく出てくるのは「真鯛」です。真鯛が赤い理由は、「海老」をたくさん食べているからというから驚きですね。
たしかに海老も赤い生き物ですが、海老の殻には「アスタキサンチン」という赤い色素が含まれているため、その海老を大量に食べる鯛の体にも、同じ色素が影響しているとされています。真鯛は春の産卵の時期に向けて栄養を蓄える準備に入るので、蓄えが多い春が旬といわれています。

鯛はやっぱり「めでたい」

お祝いのときの鯛といえば、姿焼きを想像される方も多いでしょう。
頭から尾まで、丸ごと出される姿焼きのことを、昔からまたの名で「目出鯛」(めでたい)と呼ばれていました。いたって単純な理由ですが「おめでたい」と「たい」の語呂合わせと、目の前の食卓に「めでたい」ものが皿に盛られることで、お祝いの宴席にふさわしい縁起ものとされていきました。
また、高級魚である鯛は、さまざまなことわざにも登場します。例えば、「腐っても鯛」や「海老で鯛を釣る」などといったことわざは、鯛が他の魚と比べて上位ランクであることを示しています。

お祝いの席には鯛の姿焼き
お祝いの席には鯛の姿焼き

江戸時代から愛された「鯛の鯛」

色や語呂からくる縁起のよさもありますが、その「形」も縁起がよいとされてきました。
鯛が縁起物と呼ばれるようになったのは、江戸時代までさかのぼります。鯛の体内には「鯛の鯛」と呼ばれる、まさに鯛のような形をした骨(胸鰭を動かす時に使われる、肩帯の骨)があるのです。この骨を持ち歩いていると金運アップ、厄除けにきくという言い伝えも。まさに、自然が生んだ開運グッズなんです。
東京築地の「幸乃屋」では、江戸時代からの縁起ものとして、さまざまな大きさ、色合いの“鯛の鯛”を販売しています。気になる人はチェックしてみてくださいね。
さらに他の魚であっても、同じように鯛のような形の骨を見つけると、縁起物として持ち歩いていたともいわれています。たとえば「ホッケの鯛の鯛」や「カンパチの鯛の鯛」もそのひとつ。なんともややこしいネーミングですが、そのような代用品も存在していたそうですが、ダントツの人気を誇っていたのは、やはり鯛だったといいます。
── 鯛は縁起物であるだけでなく、栄養価が高い魚としても知られています。ぜひ、お祝いごとがあったときは奮発して鯛を食べて、ゲンを担ぎたいものですね。食べているときに「鯛の鯛」をみつけられたら、いいことがあるかもしれませんね!

鯛のような形の骨「鯛の鯛」
鯛のような形の骨「鯛の鯛」