2月も残りわずか。平成もあと2か月あまりとなりましたね。
このところ注目されている「非認知能力」という言葉をご存知でしょうか。IQ(知能指数)や学力など数値化が可能な「認知能力」に対して、可視化することができない多様な「人間力」を指します。具体的には、主体性、柔軟性、想像力、自制心、自己肯定感、自信、回復力、やり抜く力、社会性、協働力や共感力など、生きていくうえで欠かせないスキルのこと。
今回は、幸福感や社会的成功に密接な関係がある「目に見えない能力」についてご紹介します。

2020年の教育改革目前!「学力」よりも重要な能力があった

非認知能力が大きくクローズアップされたきっかけは、2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授によって行われた幼児教育の追跡調査によります。幼少期に身に付いた非認知能力の高さが、将来の社会的成功に繋がりやすいことが明らかになったのです。
アメリカをはじめ、グローバル社会での教育は、すでに試験の点数重視から人間力育成へとシフトしています。日本でも2020年度から教育改革が始まり、知識だけではなく「思考力、判断力、表現力」といった非認知能力がより重視されるようになります。国公立大学の入試内容も、従来のセンター試験で実施されているマークシート式問題の見直しが検討されています。求められる能力、教育内容、大学入試が大きく変わろうとしているのです。
非認知能力が、学力に影響を及ぼすことは間違いありません。まずは、自己肯定感、やり抜く力などの非認知能力を高めることが、結果的に認知能力アップにも繋がるのです。「非認知能力」と「認知能力」。このふたつのスキルを合わせた能力が、人としての「総合力」といえるのかもしれません。

注目のキーワード「グリット」と「レジリエンス」とは

非認知能力のなかでも、ぜひ知っておきたいのが、グリット(GRIT)とレジリエンス(Resilience)というふたつの言葉。
グリットとは「やり抜く力」のことで、ひとつの物事に継続して向き合い成し遂げる能力のこと。レジリエンスは、「回復力」あるいは「弾力性」ともいわれ、逆境から這い上がっていける力、簡単には折れないしなやかな心を意味します。
AIの加速度的な進化など、何が起こるか分からない、変化の激しい社会で生き抜くために必要な能力として、教育界でも重視されています。

すべては、家庭で育む「自己肯定感」から始まる!

「グリット」と「レジリエンス」を含め、全ての非認知能力のベースとなるのは「自己肯定感」であるといわれています。そのために必要不可欠なのは、幼少期からの親との信頼関係。親からの愛情は、自己肯定感をもたらし、成長を促します。
子どもの非認知能力は、日常生活や日々のコミュニケーションのなかで育まれます。まず、家庭で大切にしたいのは「ルールを守ること」。各家庭で守るべき大切なルールを決めます。そのルールのなかで、自由に発想させたり、意見を言わせたり、やりたいことをさせてみましょう。ルール決めには子どもも参加します。「自分たちで決めたこと」に責任感を持ち、守れたら自信も育ちますね。信頼できるルールがあるので、のびのびと自由に行動することができます。ポイントは、たくさんのルールを作りすぎない、子どもの年相応であることです。
親との対話や思う存分遊ばせることも、とても大事なことです。絵本の読み聞かせや対話など、親との豊かなコミュニケーションは脳の発達を促し、愛されているという実感にも繋がって自信を養います。遊びは自分自身と向き合う機会となり、問題解決能力を伸ばすなどさまざまな効用があるそうです。
非認知能力が最も伸びるのは、0~10歳頃。この時期の子どもの家庭での過ごし方は非常に大切で、非認知能力は家庭で育まれるといっても過言ではないのです。
親の自己肯定感が低いと、当然ながら子どもにも影響します。頑張るお母さんが陥りやすい「スーパーマザー症候群」。完璧を目指すのはやめて、あえて「やらない」選択もしてみましょう。お母さんの時間も体力も気力も限られています。精神的な余裕は、自己肯定感を高めてくれます。
日本でも積極的に育児に参加するお父さんが増えていますが、アメリカではさらに意識の高い男性たちが多いようです。彼らは、育児に参加しないことを「失われた機会」と捉えているのです。わが子の成長を知らずに長い年月を過ごすのは、「大切な機会を無駄にしている」ということに。男性も、人生の喜びに「育児」を加えてみませんか。
育児とは、大人も子どもと一緒に非認知能力を鍛える、最高の機会なのかもしれません。

参考文献
ボーク重子『「非認知能力」の育て方 心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育』小学館 2018