2月も残すところ、あと1週間となりました。2月19日からは二十四節気の「雨水」に入っていますが、「雨水」とは雪が雨に変わり、積もった雪が解けて水になる、の意味。雪国では、ようやく春の気配を感じ始めるころですね。
春は多くの植物が芽を出し、花を咲かせる季節。実際、春の歳時記に記載されている植物の数は四季の中でダントツに多いのです。
観賞用の花や草花のほか野菜も含まれているのですが、その中から今回は野菜の季語をご紹介。身近でありながら意外な旬の野菜を調べてみました。

そうだったの?意外と知らない春の野菜

あらためて「旬」とは何でしょうか?
広辞苑では『野菜・魚介・果物などがよくとれて味の最もよい時期』とあります。特に何気なく食べている野菜には旬があるのですが、歳時記には驚きの野菜も含まれていましたよ。
一年中あるのに「菠薐草(ほうれんそう)」
アカザ科の一年または多年草でイラン原産。「菠薐国(ペルシャ)」から東西に伝わり、中国では7世紀ころ、日本には江戸初期長崎に伝わったのが日本菠薐草。秋蒔きで春に収穫、寒さに強い品種で、茎は赤く葉は薄い。現在は春蒔きの西洋菠薐草が中心だが、12月~2月ころに出回る「寒じめほうれん草」は寒さで糖分をためるため甘い。葉は良質のアミノ酸、ビタミンAと鉄分が多く含まれる。
聞けば納得「水菜(みずな)」
水菜といえば京都では古くから栽培してきたアブラナ科の野菜。関東では京菜と呼ぶ。旬は12月~3月ころで、霜にあたるほどほど柔らかくなる。冬の鍋料理にも使われるが、2月~3月ころの水菜は口当たりがよく、サラダに最適。水菜を改良したのが壬生菜(みぶな)で、こちらも旬。
春がつくからやっぱり「春菊(しゅんぎく)」
キク科の一年草で地中海地方原産。江戸時代に伝わったとみられる。11月~2月ころが旬で鍋物などに欠かせない。葉を食用とするが、黄または白の花を観賞用とするので春の季語となっている。
セリ科の仲間「三つ葉(みつば)」
セリ科の多年草で、日本で栽培が始まったのは江戸時代から。旬は3月~4月。原種は自生している。同じくセリ科の「芹(せり)」は12月~4月が旬で、春の七草の一つ。原種は水田や野川に自生し、水のきれいなところに生えるので、春の水の中の様子を表す「芹の水」という季語もある。ビタミンB1やビタミンCを多く含んでいるといわれる。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/旬の食彩カレンダー)

芹の水
芹の水

春の海は、なんと野菜だらけ!?

春の野菜といっても地上だけではありません。海の中も地上と同じ畑。春には多くの植物が生え旬を迎えます。そんな海の植物をご紹介しましょう。
旬があったの?「若布(わかめ)」
若布はコンブ科の一年生藻類で、地域によって形状が異なる。旬は2月~5月ころで、三陸海岸の南部若布は有名。日本では千年以上前から食していたが、近年は養殖も盛ん。多くは塩漬けなど保存食とするが、特に生で食べる新芽の「春若布」が最も美味しいといわれる。おすすめは「しゃぶしゃぶ」で、湯にくぐらせると鮮やかな緑色と触感に驚くこと間違いなし。
漢字で書くと「鹿尾菜(ひじき)」
形が鹿の尾に似ていることからこのように書く。ホンダワラ科の海藻で、北海道の一部を除いて全国に分布。旬は3月~4月ころ。生では食べられず、釡で煮て天日干ししたものが出まわる。
これも意外かも「海苔(のり)」
海苔の養殖は江戸時代から始まったとされる。旬は11月~3月ころ。初めて採れる海苔を新海苔というが、中でも春に収穫されたものは光沢も香りも高いといわれている。天然でも採取するが、現在はほとんどが養殖。有明や瀬戸内が有名。
海藻なのに旬が違う「昆布(こんぶ)」
昆布の旬は春ではなく、7月~9月の夏である。「日高昆布」「利尻昆布」など昆布の大半は北海道が産地で、東北地方でも採れる。舟を出し、大きな鎌のようなもので刈り取り、浜に干す。「昆布刈り」「昆布干す」といい、夏の風物詩となっている。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版)

旬の季節感を大切に

いかがでしたか?── 言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
現代では一年中手に入らない野菜はありません。しかし、よく調べると季節季節の旬があるのがわかります。そこにはきちんとした理由と先人の知恵が詰まっていました。特に初物は昔から身体によいといわれています。
今まで何気なく食べていた野菜も、旬だと思えばいっそうありがたみが増すかもしれませんね。