あすが仕事納めで、あさってから年末年始の休暇に入られる方が多いかもしれません。家族や親戚が集まり、暖房の効いた部屋で楽しい時間を過ごした後で廊下に出ると、冷え切った空気に体がブルブルっとすることはありませんか?このような暖かい部屋から寒い部屋への移動など、温度の急な変化が体に与えるショックを「ヒートショック」といいます。ヒートショックは冬の入浴事故の原因の一つとされており、年々増加傾向にあります。
そこで、ヒートショック対策として、部屋と部屋の温度差を小さくする「温度のバリアフリー化」を実現するにはどうしたらよいのかについてお話したいと思います。

厳冬地域ほど家全体が暖かい!?

ある調査で、入浴中に心肺停止状態に陥る発生頻度を高齢者1万人あたりの数で比較したところ、最も頻度が低いのは沖縄県、次が北海道でした(*出典1)。冬は最高気温が0℃未満の真冬日となる日が多い北海道で、なぜ頻度が低いのか意外に思われるかもしれませんが、屋外の気温の低さだけが発生要因となるわけではないようです。
別の調査で、冬期の全国の都市における住宅の温熱環境を比較したものがあります。その中で札幌と大阪を比べてみると、札幌では部屋間(リビング・浴室・脱衣所)の温度差が小さく、家全体が比較的暖かいことが分かりました。一方、大阪は札幌に比べて部屋間の温度差が大きくなっています(*出典2)。
北海道など厳しい寒さに見舞われる地域でも、住宅の断熱や住まい方次第で、部屋の冷え込みや部屋間の温度差を調節することができ、部屋間の温度差を小さくすることが入浴事故の対策になっていると考えられます。

部屋間の温度差の例
部屋間の温度差の例

部屋の温度差は5℃以内を目標に

平均室温が18℃未満の住宅では入浴事故のリスクが高いとされる熱めのお湯(お湯の温度が42℃以上)で入浴する確率が高くなるという調査結果があります(*出典3)。寒い部屋で過ごすと、熱めのお湯のお風呂に入りたくなる傾向があるのかもしれません。
ただ、こうした急激な温度変化でヒートショックが起こり、それによって血圧が乱高下することが入浴事故の要因の一つと考えられます。
ヒートショック対策として大切なのは、家の中でできるだけ寒い部屋を少なくして部屋と部屋の温度差を小さくする、「温度のバリアフリー化」を図ることです。
暖かい部屋と寒い部屋との温度差は5℃以内が理想的とされていますので、浴室や脱衣所は、衣服を脱いで寒いと感じないくらいの温度(20℃前後を目安)に暖めておくと良いでしょう。
暖房設備がない場合は、お湯をはるときにシャワーを使い、浴槽のふたを外しておくと、蒸気で浴室の温度が上がるので効果的です。
寒さが厳しくなるこの時期、心地よく入浴を楽しむためにも、年末年始に家族でヒートショック対策として「温度のバリアフリー化」について考えてみてはいかがですか。
日本気象協会では、ヒートショックの知識や対策をより多くの人に知ってもらうため、ヒートショックの啓発プロジェクト「STOP!ヒートショック」をサポートしています。また、日本気象協会は東京ガスと共同開発した「ヒートショック予報」について、tenki.jpでも提供していますので、ぜひご活用ください。

◎出典元
(*1) 東京都健康長寿医療センター(2014)わが国における入浴中心肺停止状態(CPA)発生の実態
(*2) 大中ほか(2007)冬期における浴室温熱環境の全国調査 ,人間と生活環境 14(1), 11-16
(*3) 国土交通省(2019)住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告・別添資料