9月も後半にはいりました。夏に巣立ったツバメもこの時期南の国へと渡っていきます。4月のはじめ第十三候「玄鳥至(つばめきたる)」から半年、越冬を終え帰って来たツバメが卵を孵し、雛を育て再び南の国へ。季節が変わるとは雛の成長も意味しているのですね。ツバメが去るということは秋の深まりが進んでいる、ということになるのでしょう。ツバメが去って行く今の秋を眺めてみましょう。

野には秋の花「秋明菊」が咲いてきます

菊というと真っ直ぐに伸びた茎の先に咲く大輪の花を思い浮かべますか? 鮮やかな色と大きさは見事なものですね。「秋明菊」にはそんな華やかさはありませんが、日本の野山に生える種々の草の中にそっと小さく開く花です。秋の里山を明るく照らす、そんな思いが花の名前になったのかもしれません。花言葉「淡い思い」はぴったりな気がしませんか。
京都の貴船にたくさん見られたところから「貴船菊」ともいわれるそうです。実は菊の仲間ではなくキンポウゲ科、アネモネと同じ仲間なんです。
「菊の香や垣の裾にも貴船菊」 水原秋桜子
近所の公園や郊外を散歩する時、歩みをゆるめて見まわしてみると名前は知らないけれど目を惹く美しい花があちこちに咲いているのにきっと気づきますよ。

お出かけは秋の味覚を食べに「ぶどう狩り」もいいですね

黒い色の巨峰、赤い小粒のデラウェア、緑のマスカットなどぶどうはたくさんの種類が出まわっています。ぷるんとした粒はジューシーで甘味がたっぷり。食卓をいろどる秋の果物ですが、ぶどうは私たちにとって季節を越えた身近な食材です。干しぶどうはパンやお菓子、ジュースそしてワイン。古代エジプト王朝時代の壁画にぶどうの圧搾機やワイン保存の壺が描かれ、紀元前4000年にはもうワインの醸造が行われていたことがわかります。三代文明のひとつチグリス・ユーフラテス川の流域から古代オリエント世界を通じ、ぶどうの栽培とワイン造りは西へ東へと広がっていきました。葡萄はギリシア神話の酒の神ディオニソス(バッカス)の持ち物となり、キリスト教ではパンをキリストの肉体、葡萄酒を血として聖体拝領が行われるなど、古くから文化の中に浸透しているのがわかります。またぶどうは葉や蔓をデザイン化して葡萄唐草模様となり、ユーラシア大陸を通るシルクロードを運ばれ日本にも伝えられました。ヨーロッパや中東地域、中央アジアなどを旅すると葡萄の模様が遺跡だけでなく、現代社会でも使われているのを見かけることがあります。何千年もの間変わらずに実り続けているぶどうの恵みを今年もたくさん頂きましょう!

食卓には秋の味覚「秋刀魚」があれば夏バテも快復するかもしれません

細くシャープで銀色に輝く秋刀魚は秋の味覚の代表ですが、近年漁獲量が減り庶民の手が届きにくくなってきたのではないかと心配されています。先日のニュースでは今年は大いに秋刀魚を楽しむことができそうと聞きましたが、海水温や天気に左右される心配はのこります。
網焼きにして一匹まるまる一人で食べる秋刀魚で秋を満喫する、ささやかな幸せです。そうそう大根おろしもたっぷり添えてください。
ひとり暮らしでなかなか秋刀魚を一匹買ったり、煙を立てて焼くのはどうも・・・と躊躇される方は、ぜひサンマ缶を試して下さい。定番の蒲焼きはもちろん塩焼きや水煮などもあります。なんといっても手軽なのが缶詰の嬉しいところ。パスタに和えたり、トマト煮にしてバジルやルッコラといった野菜を使ってイタリアンにしてもステキです。もちろん熱々ごはんにサンマの蒲焼きをのせた丼も食欲をそそります。
昔から食べられてきた秋刀魚が今年もちゃんと食べられる幸せは、大切にしていきたいものです。