9月4日はその語呂合わせで「くしの日」です。「くし」といえば「櫛」や「串」を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。美容関係者らによって制定された「くしの日」は、1979年に発足した美容週間によって美容技術の発表や、美容について広くアピールするために「くしの日キャンペーン」として様々な取り組みが行われてきました。一方、「串の日」を制定したのは香川県三豊市に本社を置く株式会社味のちぬや。片手で手軽に食べられる串料理をもっと食べて欲しいという願いを込めて制定されたそうです。また、それとは別に2010年に生誕100周年を迎えた大阪の新世界でもその日を串の日とし、様々なイベントが行われているようです。今日はくし・串の日にちなんで、「櫛」と「串・串料理」についてご紹介します。

櫛を髪に挿せば霊力を授かり、魔除けになる!? という言い伝え

用途も使う場所も異なる「櫛」と「串」ですが、語源は同じで「不思議なこと」=奇し、「霊妙なこと」=霊(くし)びという言葉からきているそうです。櫛は古事記や日本書紀などに記されている日本神話で、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が櫛の歯を折り火をおこすなどの櫛に関する不思議なエピソードが残っています。また、縄文時代から主に髪飾りとして使われ、その歴史の中で神事や神祭が行われる際に、神子の髪には櫛がつけられていることが多いと言われ、もっと身近な言い伝えでは、櫛を挿すことで魔除けとなったり霊力を授かるとされ、また、その語呂から「苦死」を連想し落ちている櫛を拾ってはいけないという言い伝えもあるそうです。このように櫛は神聖なものとして扱われてきました。現代では櫛を髪に挿す人を見かけることはほとんどなく、髪を清潔に保つための櫛の役割は洗髪の習慣が広まってからブラシに取って変わってしまいましたが、櫛の神聖さを改めて感じられた方は今一度、美しい櫛を手に取ってみてはいかがでしょうか。

祈りを込めて神に捧げる「串」の歴史

「串」というと美味しい食べ物を連想するほど串料理が広まっている現在ですが、「串」の歴史も古く、神事を行う場所で使われており、今も目にすることがあります。呼称の由来はいくつか説があるようですが、木竹などの串に玉がついたものをお供えしていたことから「玉串」と呼ばれ、神事のお供え串がありました。今では榊や竹に麻や木綿、紙などをつけたものになっています。食べ物や酒、水などのお供えと異なる点は、礼拝する者の敬意や、神威を受けるために祈りを込めて捧げるものとして、特別な意味を持つということです。「玉串礼拝」のように呼ばれることもあります。
そして、現在多くの人に身近となっている方の「串」。そう聞いて最初に思いつくものは、やはり、串焼きなどのやきとりや、串カツといった食べ物ではないでしょうか。歴史ではやきとりが一番古く、平安時代に肉を小さく切って串刺しにして焼いたことから広まったそうです。現在では、野菜やその他の食材を串刺しして焼いたものも「やきとり」と呼ばれるようになっています。串カツは大阪・新世界が発祥で、野菜や肉、魚介類を一口サイズでひとつの串に一食材が串刺しされ、目の細かいパン粉を使った衣をまとい、油で揚げられた串料理です。串カツにつける専用のソースはテーブルごとにステンレス製の器に入れられており、次に使うお客さんも気持ちよく食事ができるように「二度漬け禁止ルール」が設定されていることは、多くの方がご存じではないでしょうか。最近では、食べ放題や、セルフ揚げ、天婦羅のような出で立ちの串カツなど、様々な串カツのサービススタイルがあるようです。また、関東では串揚げと呼ぶこともあるそうです。今夜の食事に串料理はいかがでしょうか。