暑い!と言葉にするのはもったいない!── 落語「しわい屋」

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「もったいない」がいきすぎると、「ドケチ」「吝... (18:30)tenki.jp

「もったいない」がいきすぎると、「ドケチ」「吝... (18:30)tenki.jp
「命にかかわる危険な暑さ」というキーワードを頻繁に耳にした今夏。 私たちは人と会うたび「暑いですねぇ〜」「いやぁ〜本当にもう……」とあいさつを交わしていましたが、実はこのあいさつ、考えてみると「暑さ」を確認し合うことで、さらに暑さを自覚することになりますし、「暑い」と言ったところで暑さがまぎれるわけでもありません。 そのため暑い時に「暑い」と言い合うのは労力の無駄で、時間ももったいない! 今回はこの「もったいなさ」に引っかけた落語「しわい屋」をご紹介しましょう。 鉄の釘を打ったら、金槌が減る? 今回ご紹介する古典落語「しわい屋」は、始末の極意を素材にした古典落語の演目のひとつです。ケニアのワンガリ・マータイさん提唱する「もったいない」は、いまや「MOTTAINAI」と世界のアイコトバとして認知されています。でも「もったいない」「倹約ぶり」「節約ぶり」がいきすぎた人を「ドケチ」「吝嗇」「せこい」と呼びますね。 ── では早速、筋金入りの「ドケチ」ばかりが登場する噺をご紹介しましょう。 旦那が小僧に言います。 「雨戸を修繕するから、お隣りから金槌(かなづち)を借りておいで」 小僧が隣へ借りに行くと、主人は、 「何を打つんだい、鉄(かね)の釘か竹の釘か、どっちだ?」 小僧が鉄の釘だと答えると、 「それじゃあ貸せねえ。鉄と鉄とぶっつかれば、金槌が減っちまうから」 仕方なく帰った小僧、事情を話すと旦那は、こう言ったのです。 「ちぇっ、しみったれた野郎だあ。じゃあ、うちのを出して使おう」 いわずもがな……自宅に金槌があるのに金槌を借りるなんて! それにしても、借りるほうも貸すほうも、なんとまあドケチなのでしょうか。 ドケチきわまれり。扇子が減るのを防ぐため自分で○を振る? 「えー、あなたの持ってる扇子(せんす)は、どのくらいお使いになりますか?」 「この扇子は十年くらい使います」 「ほー、十年……で、どんなぐあいに?」 「半分、開きまして、最初五年使います」 「ははあ」 「それがダメになったら、残りの半分を開いて、これを五年使います。都合、十年」 「ふーん、しかし、どうも扇子の半開きというのはおもしろくないね、あたしなら威勢よく全部開いちゃう」 「へえ」 「みんな開いて、扇子を動かすと、扇子の傷みが早いから、自分で首を振る」 鰻の匂いをおかずにご飯を食べるドケチの勝利! たいそうケチな人が鰻屋の隣りに引っ越しました。食事時になると、隣りで焼く鰻の匂いを嗅いで、それをお菜(おかず)にご飯を食べるという徹底したケチぶり。 ある日、隣の鰻屋がやって来て、 「お勘定をいただきにまいりました」 「なに? 俺のとこじゃあ、鰻なんか食った覚えはねえぞ」 「いいえ、召しあがった代金ではございません。鰻の匂いの“嗅ぎ賃”をいただきに……」 「……うーん、やりやがったな。……うん、よし、よし。今払ってやるから待ってろよ」 そう言うと、懐中から金を出して、ちゃぶ台の上へチャリン……。 「さあ、おまえさんは“嗅ぎ賃”と言ったな。だから音だけ聞いて帰れ」 梅干しをお菜にご飯を食べる、ドケチ同士の争いの結果は…… 家の天井から、石を縄で吊るして話をする人(吝兵衛・けちべえ)がいます。 「なんです。頭の上に吊るしてある石は?」。そう客人が尋ねると、 「こうしていると、冷や汗が出るんでな、暑い時季だって扇子もいらないよ」 確かに……、石が落ちてくるかもしれない気がして、暑さなど忘れてしまいそうです。 ここで交わされるのが、梅干しをお菜にいかに飯を食うかという話題。どうやら、客人も吝兵衛に負けず劣らずの吝嗇のようです。 「まず朝飯の時に梅干しの半分、お昼に残りの半分をいただきます」 「それでは晩のお菜がなくなるだろう」 「晩には種をしゃぶって、それだけではたりませんから、なかを割って中身もみんないただきます」 すると、吝兵衛はこう言い放ちます。 「それは贅沢だ。梅干しが日に一つというのは穏やかではないよ」 客人が身を乗り出して吝兵衛の話に聞き入ると、 「ご飯をよそったら、梅干しを食べずにじっとにらむんだ」 「梅干しをにらむ?」 「ああ、決して口にしてはいけない。そうすれば、相手は梅干しだ。だんだん口の中がすっぱくなってくるだろう。そのすっぱい水がたまったところで、ご飯を食べてしまう。梅干しは少しも減らない、どうだ」 「しわい屋」の「しわい」は、「ケチな」「しみったれた」の意 今回ご紹介した噺「しわい屋」の「しわい」とは、「ケチな」「しみったれた」の意。 落語ではこうしたおかしみある人物が数多く登場しますが、「味噌蔵」「位牌屋」「片棒」などのケチを題材にした噺の枕に挿入されることも多いようです。思わず「これは参った!」とうならされる筋金入りの「ドケチ」「吝嗇」の機智に富んだ着想は、一点突破の勢いすら感じますね。 ── 暑いときこそ、「チリン」と鳴る風鈴に涼味を感じる。 あるいは、木陰に入って涼やかな風を感じる。 さらにはかき氷、団扇(うちわ)、浴衣(ゆかた)、花火、そうめん、祭り……に一服の涼を得る……そんな夏も残すところわずか。みなさんの周囲にはきっとケチでしみったれた人が一人や二人いるはず。それとも、もしかしてあなた自身が「しわい屋」ですか(笑)?

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