「ウワバミ」に呑まれる! ── 夏真っ盛りが舞台の落語「夏の医者」

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うだるような暑さが続いていますが、一説によると32〜35度以上の気温になると、蚊は活動を停止するとかしないとか……。日本では白黒ゼブラの「ヒトスジシマカ」や、赤っぽい色の「アカイエカ」を多く見かけますが、実は110種以上の蚊が生息しているそう。ちなみに「くわれる」「刺される」「咬まれる」の表現の違いには明確な地域の線引きはなく、例えば「くわれる」なら九州の長崎、鹿児島、北海道の人々が使っているようです。みなさんはどの表現を使っていますか?
さて今回は、昼寝などしようものなら足や腕、首元や顔に激しいかゆみを感じる、今時分の夏の昼下がりを舞台にした落語「夏の医者」をご紹介しましょう。

ウワバミの腹からの大脱出劇

夏の真っ盛り。ある田舎の百姓・勘太は、暑さにやられたのか、食が進みません。
普段はもっと食べるのに、ここ数日はごはんを七〜八杯しか食べないので、勘太の息子は心配になって隣村に住んでいるという医者に診てもらうことにしました。隣村といっても、医者が住んでいるのは六里(約24キロ)も先です。
車などない時代。なんとか歩いてたどり着き、往診を頼みます。すると「ああ、心配だな。行ってやろう」という返事が……。当時の医者といっても、半分はお百姓をしているような人です。
多少は近道になるからと山越えの道を息子と医者が頂上まで来ると、突然あたりが闇に包まれてしまったのです。

視界の先に見えた光は、お尻の穴の光?

「あれ、どうしたかな」と思っていると、なんだか体全体が生暖かい感触に包まれて……。
「いやー、こりゃ山に住んでいるウワバミに呑まれたな」
ウワバミというのは大きな蛇のこと。ここでは人間を呑んでしまうような大蛇を指します。
「うふぇ〜! どうなっているんだ! こうしている間に体とじわじわ溶けてしまうよ〜」。息子は悲鳴にも似た言葉を発します。
一方、黙って考えていた医者は、持参していた薬箱から取り出した大黄(だいおう)という名の強力な下剤を、ウワバミの腹の中にありったけまくことにしました。
すると効果てきめん。ウワバミはのたうち回って苦しみ始めたのです。その動きにつられて二人はウワバミの腹の中で上へ下へと転げまわります。すると、視界の先に一筋の光が!
「あの光は、きっと尻の穴だ!」
二人はなんとかウワバミのお尻の穴から外に放り出される(脱出する)ことに成功。医者の知恵のおかげで命からがら大蛇の体内から逃れ、九死に一生を得たのです。

薬箱を腹の中に忘れてきた!

やっとのことで勘太のもとにたどり着いた二人。とはいえ、なにしろ体中が生臭いので、井戸端で水を浴びてサッパリした医者は、さっそく勘太の診察に臨みます。
「こりゃ食あたりだな。何を食べた?」
「おとっつぁんの好物のチシャ(レタスに似た野菜)のゴマあえをたくさん食べました」
「ああ、それはいけない。夏のチシャは腹にさわる(よくないことがある)」
ところが薬を処方しよういう段になって、なんと薬箱をウワバミの腹の中に忘れてきたことに気がついたのです。
「これはまずい、取りに行かなくては」と、医者は仕方なく山へと戻り、先ほど二人を苦しめたウワバミを見つけます。
ウワバミは下剤の効果が持続していて、木の陰で苦しそうにあえいでいます。
医者はウワバミに「腹の中に薬箱を忘れてきたので、もう一度呑んでもらいたい」……。
そう頼むのですが、ウワバミは苦しそうな切れ切れの息で、ひと言こう言ったのです。
「いや、夏の医者(イシャ)は腹にさわる」
これがオチです。解説するまでもありませんが「チシャ」と「イシャ」の洒落ですね。
── 田舎の夏の気だるい空気感と、大事件が起こっているのにどこかのんびりとした、おかしみに満ちた噺(はなし)「夏の医者」は、六代目三遊亭圓生や桂枝雀の口演が有名です。ゴロンと横になった夏の午後のお昼寝タイムにぴったりな噺ですね。

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