今日6月27日から第二十九候「菖蒲華」です。菖蒲(しょうぶ)の葉に似ていて美しい花が咲くことから「花菖蒲(はなあやめ)」と呼ばれていた花が、江戸時代中頃から略されて「菖蒲(あやめ)」と呼ばれるようになったそうです。
「色はいずれ? 似たりや似たり、杜若(かきつばた)、花菖蒲…」と能「杜若」にも謡われています。どれがどれだか? なかなか見分けはつきません。雨の多い今の時期だからこそ、天に向かって大きく開き咲き競う花の鮮やかさには目をうばわれます。花の種類や名前を気にすること無く、水辺の美しい花を静かに楽しむ、そんな季節といたしませんか。

2000年の眠りを経て大きく開いた花もあります

6月も末になると花菖蒲はそろそろ終わり。でも水辺に咲く花はほかにもあります。芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』の冒頭でおなじみの蓮の花です。お釈迦様が歩かれる極楽の池には「玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂いが、絶間なくあたりへ溢れて居ります」と蓮の花のようすを書いています。
澄んだ水ではなく泥の沼から生えても濁りに染まらずに清く美しく咲くことから、知恵や慈悲といった仏教の思想が託されています。蓮華座に座られている仏さまを寺院へ行けばよく目にしますね。水面に茎を真っ直ぐにのばしてふっくらとした蕾が開いたさまは、美しいだけでなく心を穏やかに包みこんでもらえるような安らぎを感じます。
今から70年近く前の1951年、千葉県検見川市の泥炭層からハスの実を発見したのは大賀一郎博士です。調査の結果およそ2000年を遡る弥生時代のものとわかりました。博士はこのハスの実の中からたった一粒発芽させることに成功し、翌年見事な蓮の花を咲かせたのです。世界最古の花「大賀蓮」として世界各地に根分けされ多くの場所で美しい花を咲かせています。2000年の長い眠りの後に、たった一粒が「今」という時機を得て息吹いた生命の力強さには大きく心を揺さぶられます。

「夏越しの祓い」で温度の変化や湿度で疲れた身体をリセット!

一年の半分が過ぎようとしている6月に、病や災い穢れを祓って次の半年を無事に過ごせますように、という気持ちをこめて神社で行われる行事です。農作業では田植えに忙しい時期ですし、雨の多い梅雨の季節からどうしても体調不良を起こしやすいもの。この時期を無事に乗り越えたいという気持ちが込められています。人の形を模した紙「ひとがた」を奉納して流したり焚いたり、ちがやで編んだ大きな茅の輪を境内に作りそこをくぐることで厄災から逃れ、残りの月のことなきを祈ります。
夏越しの祓いの日に食べる「水無月」というお菓子があります。白い外郎生地に小豆がのった三角のお菓子で、三角は氷をあらわし小豆の赤い色が邪気を祓うとされています。暑さの増すこの時期に、小豆のタンパク質と外郎のでんぷん質でしっかり栄養をとることができます。神社まで行かれない方は、健やかさと涼やかさの「水無月」をいただいて「夏越しの祓い」としてみるのもいいかもしれませんね。