梅雨とは言え、夏至を過ぎて高原の植物たちは鮮やかな競演を繰り広げはじめています。青空のもとで見るのはもちろん、雨露にきらきらひかる様子もまた美しいものです。夏の季語に「お花畑(おはなばたけ)」があります。太陽が燦燦と降り注ぎ、梅雨や台風が訪れる、少し植物には厳しいと思われる夏に、なぜ「お花畑」が季語になったのでしょうか。6月から7月に咲く花々とともにご紹介しましょう。
※「お花畑」…夏の季語、「花畑」…秋の季語(俳句歳時記より)

今が盛り~箱根の花・サンショウバラ

平地では紫陽花が一雨ごとに色を変えている頃に、高原の湿原ではサンショウバラがピンク色の花を咲かせています。名前の由来は茎が山椒に、花が薔薇に似ているためと言われています。日当たりを好み、木の少ない火山のある地域に根付いたことから、今では富士箱根地域の植物となり、箱根町の花になっています。梅雨の晴れ間に初夏の日差しをうれしそうに浴びているところに出会いたいですね。

正式名称は「禅庭花(ゼンテイカ)」~日光黄菅(ニッコウキスゲ)

高原に咲く夏の花というと、ニッコウキスゲは外せません。栃木県の戦場ヶ原に多く自生していたことから、日光黄菅(ニッコウキスゲ)と名付けられたと言われていますが、実は正式名称は「禅庭花(ゼンテイカ)」と言い、戦場ヶ原を中禅寺湖に見立てたため、この名が付きました。今では戦場ヶ原だけでなく、尾瀬ケ原や霧ヶ峰、仙石原などほかの地域の高原にも群れ咲くようになりました。夏の登山やピクニックの際に、目を癒してくれる花の代表と言えるでしょう。

夏の高原は緑の額縁の花園!

都市部ではすでに見ごろを過ぎた花菖蒲も7月に入ってから見ごろを迎えます。このように、夏の高原でさまざまな花が色とりどりに咲く様子を表わす「お花畑」という言葉が夏の季語となりました。他に似たような季語に「夏野」と「青野」がありますが、どちらも花というより植物全体が生い茂る様子を言います。都心から比較的近い箱根湿性花園では、毎日2回ガイド付きの案内があり、雨の日も整備された湿原を歩くことが出来ます。予約なしで参加できるので気が向いたらふらっと訪れるのも一興ですね。

参考・出典

・季節の花300
・俳句歳時記「夏」 角川学芸出版