土・空気・水を循環している窒素。窒素の増加は環境的にはどうなの? 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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土・空気・水を循環している窒素。窒素の増加は環境的にはどうなの?

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温室効果ガスについて考える時、空気の8割を占める窒素の存在が欠かせません。窒素は私たちの体を作るうえで大切な元素であり、地球上の土、空気、水など、あらゆるところに存在しますが、窒素が農業用の肥料として使われることで収穫量が画期的に増大するという大革命が起きました。ところが、窒素肥料で収量があがると、地球環境的には様々なことが起きています。6月は環境月間です。身近に存在する窒素について、改めて考えてみましょう。

窒素は生き物の体を形成する重要な元素。空気の8割を占める

窒素(元素記号N)は生物の体を形成するタンパク質やDNAの原料です。つまり、生物にとって不可欠な元素のひとつです。
また一方で、窒素はN2やN2Oといったガスとして大気中に存在したり、NO3-といった形で水の中に漂うこともあります。
大気中のガスの約8割は窒素。元素的に非常に安定した形で、私たちの住む地球に存在している窒素は、有機物(動植物を構成している物質)として生物の体の一部になることもあれば、大気中や水中で存在することもあります。
このように、私たちの暮らしに身近に存在する窒素は、それゆえに、現代の環境問題において重要なカギとなっているのです。

土壌→植物→動物→大気→河川…。循環する窒素

私たちの住む地球の土壌には、たくさんの窒素が含まれています。大地はまるで窒素のタンクのようなもので、ここが窒素の循環の土台を担っているといえます。
土壌の中の微生物が生物の死骸を分解すると、窒素が土壌中へと流出します。流出した窒素は、一部は植物が根から吸収して自身の体を作り、その植物を動物が食べることで、今度は地上へと運ばれます。一方、植物に吸収されなかった窒素は、土の中で微生物の働きでガスとなり、大気中へと放出されたり、水に溶けて近隣の河川へと流出します。
大気中の窒素ガスは安定しているので、ほとんどの生物はそのままでは利用することができませんが、一部の土壌中の微生物が有機物へと固定化することができるため、この働きによって、再び土の中へと運ばれます。自然界において、気体の窒素が有機物に固定される経路の大部分がこの経路です。
このように、地球上の窒素は土壌を中心として、水や空気に、さらには動植物の体を介して循環しているのです。

窒素が肥料に使われ、農産物の生産量が爆発的に増えた

このような窒素の循環の中で、人間が窒素を獲得する方法は、唯一、他の生物からの獲得に限られます。
1906年には、工業的に大気中の窒素ガスを人間が利用できる形へ固定するハーバー・ボッシュ法という画期的な方法が生み出されました。この方法によって、人間は窒素を簡単に利用することが可能となり、様々な分野への利用が始まりました。
特に恩恵を受けたのが農業です。化学的に窒素肥料を合成することが可能となり、農産物の生産量が爆発的に増加するようになりました。植物の成長にとって窒素は必要不可欠な元素ですが、植物に化学窒素肥料を与えることで、窒素を無制限に獲得できるようになったのです。窒素を利用した肥料の利用は「空気からパンを作れるようになった」と比喩されるほどの革命で、これ以降、化学窒素肥料の大量施用、農産物の大量生産が始まりました。

でも、化学窒素肥料を利用すればするほど…

窒素肥料がたくさん使用されるようになると、それだけ環境へ流出する窒素の量も増えてきました。たとえば、N2O(亜酸化窒素)は二酸化炭素の約250倍の温室効果を持つ温室効果ガスに、NO(一酸化窒素)はオゾン層を破壊するガスに、さらには、NOxは酸性雨の原因となって、環境に大きく影響を与えるガスとして放出されるようになりました。
また、土壌中の窒素の一部は生物が利用しきれないため、水とともに河川に流出しますが、この量が多いと水中のプランクトンの栄養となり、富栄養化という水質汚濁の問題を引き起こしてしまいます。
窒素を含んだガスや窒素そのもののは、農地に使われる化学窒素肥料の量が増えるにしたがって、その量も増えてしまいます。しかし、一方で、窒素肥料を利用しなければ作物の収量は満足に得られません。
窒素肥料の量を減らすと地球環境にはいいかもしれませんが、減らすことによって農作物の収量が減ってしまう…。この大いなる問題を解決するべく、世界各国の農学関係の研究者たちが様々な研究が重ねています。
世界の農業分野では、化学窒素肥料だけに頼らなくても十分な収量が得られるように、農作物の品種改良や作づけシステムの見直し、灌漑システムの改良など、様々な目線で、より効率のよい農作を可能とするための調査や研究が行われています。
6月は環境月間です。温室効果ガスを削減するためにも、農学分野の研究のさらなる発展に期待したいものです。


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