日々、新緑が色濃くなる中、今週末にお子さんの運動会を控えている親御さんも多いのではないでしょうか。
ひと昔前までは運動会といえば秋の定番行事でしたが、最近では5月に行われることも多くなっています。これには2学期に行事が集中するのを避ける……、残暑が厳しい中の練習など、子どもたちの負担を軽くする……、受験シーズン前の運動会を回避する……といった様々な理由があるようです。
さて運動会といえば、運動会の花形競技だった騎馬戦や棒倒しを思い起こすお父さん、お母さん世代も多いことでしょう。でも、最近の運動会では騎馬戦や棒倒しが競技種目から、外されてしまうことも多いようなのです。それはなぜなのでしょうか。

運動会の季節が到来。でも一昔前とは種目が違っているようです
運動会の季節が到来。でも一昔前とは種目が違っているようです

騎馬戦と棒倒しって、どんな競技だった?

お父さん、お母さん世代ならご存じでしょうが、若い世代の方は知らない人も多いようなので一応ご説明すると、騎馬戦とは、騎馬同士の戦いに似せた団体競技のこと。
前方に1人、後方に2人の形で組んで騎馬(馬の形)をつくり、3人で完成した騎馬上(腕/画像参照)に花形の騎手(騎馬武者)が乗るもの。これが一般的なスタイルですが、子どもの数が4で割り切れない時などは、必ずしも4人一組ではない場合もあります。
戦いは、相手の騎手のハチマキや帽子を取ったら勝ち、相手の騎手を騎馬から落としたら勝ちなど、そのルールはさまざまです。子どもたちは練習の段階で、正面から斬りこむか、あえて逃げの作戦をとるか、比較的小柄な子を騎手にして機敏に動くか、少し体の大きい(腕の長い子)を騎手にして力で相手を倒すか……といった様々な作戦を立てて本番に臨み、勝ち負けを競います。
一方、棒倒しは2組に分かれて、自チームの棒を倒そうとする相手チームからの攻撃を耐えつつ、それぞれ相手の陣地に立てられた棒を倒す競技です。自分たちの棒が倒れないよう守る人たちと、相手の棒を倒すために攻撃する二手に分かれて、それぞれの陣地で攻防を繰り広げます。
いずれも、ご両親や兄弟から大歓声がわく競技ですが、最近の運動会ではこれらの人気種目を目にする機会が減ってしまっているようなのです。

騎馬同士が競い合う騎馬戦。帽子を取ったら勝ちなど、学校によってルールも変化します
騎馬同士が競い合う騎馬戦。帽子を取ったら勝ちなど、学校によってルールも変化します

騎馬戦や棒倒しが運動会で敬遠される理由って?

騎馬戦も棒倒しも子どもたちが英知を結集し、いかにして勝つか……といった創意工夫も見どころですし、戦いがはじまってからの動きの激しさや、子どもたちが一致団結して熱戦ぶりを繰り広げる様は、観戦して側も思わず大きな声援を送りたくなってしまうほどの人気競技。運動会やリレーに並び、体育際の花形競技でもありました。
しかし、最近ではこうした競技が行われないケースも増えているようなのです。そして、その理由は事故防止のため。
団体戦ゆえに熱中しやすく、思わず力が入ってしまうことから、場合によってはケガを負うケースも! 「そうは言っても、かすり傷や打撲程度でしょ」という声も聞こえますが、実際には命にかかわる事故も起こっているのです。

楽しい運動会ですが、がんばりすぎてしまうとケガをしてしまうことも
楽しい運動会ですが、がんばりすぎてしまうとケガをしてしまうことも

騎馬戦・棒倒しの禁止の賛成意見と反対意見

では、騎馬戦や棒倒しは禁止するべきかどうか。この点については賛否両論あります。
まず、観客の立場からは、激しい競技があった方が運動会や体育祭が盛り上がるので、なくしてしまうのはつまらないといった意見もあります。また、自分たちが子どもだったころを懐かしんで、思い出の競技がなくなるのは寂しいといった声もあるようです。
次に親の立場で考えると、子どもたちにケガはさせたくありません。危険なことは避けたい意見が多いののも当然でしょう。一方で、危険だからということですべて排除してしまうと、子どもたちが団結して勝利を勝ち取る成長の機会を失ってしまうのでは……という声も上がっています。
また一部では、男女が一緒になって騎馬戦などをしていると「体に触れるから」といった理由で、男女混成では行わないとケースもありますし、反対にそうした理由で男女混合の競技をなくしてしまうこと自体に反対する人もいます。

騎馬戦と棒倒し。運動会の種目に入れるか否かについては賛否両論あります
騎馬戦と棒倒し。運動会の種目に入れるか否かについては賛否両論あります

組体操も危険な競技?

騎馬戦や棒倒し以外にも、危険性や安全対策上の問題が話題になっている競技のひとつに組体操があります。
自治体によっては、組体操を全面禁止したり、ピラミッドやタワーといった高いところで演技を行う演目をあえて外す措置をとっているところもあります。
危険な種目を成長の機会ととらえるか、否か……。
教育の在り方にもつながりそうな難しい問題のため、容易に正解は出せないのが現状ですが、せっかくの運動会。家族にとって大切になる楽しい思い出をたくさん残せる場にしたいという気持ちは、いつの時代も共通のようです。

組体操も演目によっては禁止したり、高さに制限を設ける自治体もあります
組体操も演目によっては禁止したり、高さに制限を設ける自治体もあります