知っているようで知らない、“染井吉野”と“八重桜”の違い

2018/04/07 16:30

4月に入って、春もいよいよまっ盛り。 この時期、なんといっても楽しみなのが桜の花です。先月中旬ころから咲き始めた染井吉野はそろそろ葉桜に。桜色の花と若葉が入り乱れるこの時期、日々少しずつ変化していく景色は、季節の移り変わりを目で見て感じることができます。 一方、これから見ごろの時期を迎えるのが八重桜です。どちらかというと儚いイメージのある染井吉野と比べ、八重桜にはどっしりとした安定感があるように感じます。 今回は染井吉野と八重桜、その違いをご紹介します。

桜の花。染井吉野と八重桜の違いをご紹介します
桜の花。染井吉野と八重桜の違いをご紹介します
違いその1、花びらの枚数が違う 染井吉野と八重桜、もっとも大きな違いには花びらの枚数があります。 染井吉野の花びらは5枚。一方、八重桜の花びらは枚数が決まっていません。だいたい10枚くらいから、多いものでは100枚以上にもなります。 同じ八重桜なのになぜ、花びらの枚数が異なるのかというと、実は八重桜というのは品種ではなく、八重咲き、つまりたくさんの花びらが重なっている桜の総称だからです。里桜や牡丹桜ともいわれ、その種類としては関山、一葉、普賢象、八重紅枝垂れ、鬱金などが知られています。また一輪の花に300枚近く花びらをつける、兼六園菊桜という桜もあります。 八百万の神という言葉もあるように、古くから日本では8という数字にはたくさんという意味がありました。さらに漢字で「八」書くとどこまでも交わらずに広がっていく、末広がりの数字として縁起の良い数とされています。 ちなみに、大きな掌のような形をした八つ手の葉も、8つに分かれているわけではありません。八重桜も八つ手の葉も、縁起の良さを担いでつけられた名前なのでしょう。
八重桜の花びら、多いものでは300枚近くになるものも
八重桜の花びら、多いものでは300枚近くになるものも
違いその2、開花時期が違う 染井吉野と八重桜では、開花時期にも違いがあります。 染井吉野がだいたい、3月中旬から下旬にかけて満開になるのに対し、八重桜の多くは開花時期が1週間から2週間ほど遅くなります。気候にもよりますがだいたい4月中旬くらいからでしょうか。 また、さっと咲いてさっと散っていく印象のある染井吉野に対し、八重桜は花が咲いている期間も比較的長く、5月上旬ころまで楽しめます。
葉桜もきれいな染井吉野。八重桜は染井吉野の満開からやや遅れて見ごろを迎えます
葉桜もきれいな染井吉野。八重桜は染井吉野の満開からやや遅れて見ごろを迎えます
違いその3、歴史が違う さて、今では桜と言えば染井吉野というほど、全国に広がっている品種ですが、その歴史は江戸時代から。染井(今の東京都豊島区)の植木屋さんで売り出したのがはじめといわれています。その当時は吉野桜と呼ばれていましたが、明治時代になって染井吉野と名付けられました。 一方、八重桜は古くから親しまれています。平安時代の歌人、伊勢大輔も「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」という一首を詠んでいます。 このほか染井吉野は種ではなく、接ぎ木で増やすという違いもあります。 全国各地で植えられている染井吉野は、元をたどっていくとほぼ同じ木に行き当たるクローンなのだそうです。数が多く遺伝子も同じということから、桜の開花予報には染井吉野が主に使われています。 江戸時代からクローンなんて、なんとも驚きですね。
全国にある染井吉野。実はクローン桜でした
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