漢字の世界の広さに驚く──デジタル化できない『大漢和辞典』

tenki.jp

『大漢和辞典』 (18:30)tenki.jp

『大漢和辞典』 (18:30)tenki.jp
入試シーズンまっただ中。長い時間をかけて準備してきただけにインフルエンザや天候など、受験生にとって心配事は尽きませんが、試験会場には辞書や参考書の持ち込みは禁止されています。もちろんスマホも禁止されていますね。
ひと昔前と比べて、現在はネット上にも辞書がありますし、たいていのことはスマホで調べられます。ところが、スマホにも登録されていない辞書があるのです。ご存じですか?

5万字を収めた最大級(全15巻)の漢和辞典

『大漢和辞典』(大修館書店)は、日本人の漢学者・諸橋轍次(もろはし てつじ/1883年〜1982年)によって編まれた漢和辞典です。
全15巻(索引・語彙索引・補巻含む)、見出しに挙げられている「親字」は約5万字。
基本的な文字の意味だけではなく、熟語も53万語収められているという最大級の漢和辞典です。中国の古典を読むには、何はなくとも必須の辞典です。
中国では古代から膨大な数の歴史書、物語、経典が編まれてきました。
『大漢和辞典』は、それらの書物に使われている漢字や言葉を集めたものです。言うまでもなく、これらの言葉や漢字は日本語にも入り込んでいます。したがって東アジアにおける百科事典的な意味合いもあり、中国の古典だけでなく、時として日本の古典文学を読む際にも必要な辞書なのです。

31年におよび、25万8000人がかかわった膨大な編纂(へんさん)作業

『大漢和辞典』の編纂(へんさん)作業は、困難を極めるものでした。
1929年から始まり、全13巻が一応の完成を見たのは1960年。31年におよぶ年月の中で、かかわった人はのべ25万8000人とも言われます。
用例の収集、原稿の執筆から校正、印刷のための組版など、気が遠くなるような作業が必要なのはもちろんのことですが、1945年には戦争で印刷用の版がすべて焼かれてしまいます。この時には疎開してあった校正刷りから戦後に版が復元されました。
さらに、著者代表の諸橋轍次は第一巻完成を前にして白内障によって失明してしまいます(後に手術が成功して目は見えるようになりました)。

収録5万字。漢字の迷宮に入り込むためのパスポート

現在の常用漢字は約2000字。
ただし、日本人が日常的に必要とする漢字は10000字程度で十分だ、という説もあります。『大漢和辞典』に収録された5万字のうち、想像上の生き物の名前など、特定の文献のみにしか登場せず、ほとんど使われないような漢字も含まれています。
『大漢和辞典』を眺めていると、単に言葉を調べる、という目的を超えて、漢字の迷宮に入り込むためのパスポートであることを実感します。
もともと漢和辞典は、デジタル化しにくいと言われています。膨大な数の漢字の検索が大変だからです。もちろん『大漢和辞典』にも音読み、訓読み、画数などの索引が備わっていますが、部首とその仕組みをある程度知っていなければ、読みや字形だけから漢字を探し出すのは困難です。パソコンのマウスで手書きした字形で検索する方法でも、なかなか簡単にはヒットしませんね。
──『大漢和辞典』は、たいていの公立図書館には配備されているはず。
受験生の方は吉報のあとにぜひ、受験勉強から解放された晴れ晴れとした気持ちで『大漢和辞典』を眺めてほしいものですし、大人の方もぜひ一度ひも解いて、豊かな漢字の世界に触れてみては!

続きを読む

この記事にコメントをする

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック