登山をするにあたっては、天候のチェックが欠かせません。今回は、普段はあまり目にしない、登山に役立つ気象予測ツールを紹介します。既にtenki.jpをご利用の皆さまには、いまさらですが…。

高層天気図を読み解く

私たちが普段見かける天気図は、地上天気図と呼ばれる標高0mの天気図です。しかし、雲が発生したり、流されたりするのは上空であるため、大気の影響を詳しく把握するためには高層天気図の解読が欠かせません。
実際に天気を予報する際にも、数多くの高層天気図を見て、それを空間的に捉えることが大切です。高層天気図が読めるようになると、雲の動きや天気の変化がイメージしやすくなり、登山をするうえで役立つようになります。登山では、高層天気図と同じ高さまで登ることもあるため、登山者にとっては身近な天気図ともなりえます。
高層天気図は、標高0mで気圧の等しい所を結んだ「等圧線」が引かれた地上天気図と違い、特定の気圧での高さが等しい地点を結んだ「等高度線」で描かれます。標高が高くなるほど空気が薄くなるため、気圧も低くなります。
季節や日によって変わりますが、気圧と高さのおおよその関係は、300hPa(ヘクトパスカル)で地上約9,000m、500hPaで地上約5,500m、700hPaで地上約3,000m、850mで地上約1,500mとなります。
高層天気図で基本となるのは500hPaの天気図です。この天気図では気圧の谷と気圧の尾根がどこにあるかを見つけます。等高度線は基本的に、北が低く、南で高くなっています。そのため、南に凹んでいるような部分では周りより気圧が低く、気圧の谷となります。逆に、等高度線が北に膨らんでいるような部分では周囲より気圧が高く、気圧の尾根となります。気圧の谷が近づくと天気は下り坂となって雨が降りやすくなり、気圧の尾根が近づくと天気は次第に回復し、晴れやすくなります。

レーダを使いこなす

最近では、250m四方の解像度で気象庁から高解像度降水ナウキャストが提供されています。高解像度降水ナウキャストは5分ごとに、実況と予測が提供されます。予測は5分後~60分後までを1km四方の解像度で表示します。その先の予測として、降水短時間予報があります。山の局地的な雨雲の変化は捉えにくく、天気の予想も難しいですが、これらをうまく活用することで、6時間先までの予測がとてもやりやすくなります。

雷ナウキャストを利用する

山で遭遇すると危険なもの代表格として雷があります。山では急に雷雲が発生することもあり、雷注意報が出されているときや「大気の状態が不安定」といわれているときには特に注意が必要です。雷のより詳細な情報を得るには、雷ナウキャストを有効に利用すると便利です。雷ナウキャストは、1kmの解像度で解析され、10分後から10分ごと、60分先までの雷の予想が10分おきに発表されます。雷の活動度が4段階で表現され、山においては活動度2以上で非常に危険な状態となります。なお、活動度が示されていないからと言って必ずしも安全というわけではありません。山の天気は変わりやすいので油断はしないようにしましょう。

※この記事は、平成29年6月に成山堂書店から発刊された「60歳からの夏山の天気」(一般財団法人日本気象協会)をtenki.jpサプリ用に編集して掲載しております。