週末はクリスマス・イブ、そして今年もいよいよ残りわずかですね。2017年を振り返りながら、今日は子どもの頃のクリスマスを思い出してみましょう。心からサンタクロースを信じていた幸せな時……。なつかしくも、ちょっとせつない気持ちになってしまうかもしれませんね。でも、サンタクロースが残してくれた大切なものが、今もあなたの心の中に輝いているのをご存じですか。

「サンタクロースって、いるの?」と、子どもに聞かれたら

あなたは何歳までサンタクロースの存在を信じていましたか。クリスマスの贈り物に心を踊らせ、翌朝を楽しみに眠りについたあの日々。この季節になると、サンタクロースを待ちわびていた幼い自分を思い出す人も多いかもしれませんね。しかし、やがてサンタクロースが実は両親だったという秘密を知ることなります。その存在が子どもの心から去っていく日は、いつか必ずやってくるのです。
もし、子どもに「サンタクロースって、いるの?」と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。「本当はいないのだから、いるというのは良くない」、「サンタクロースの話をするのは、子どもをだますことになるのではないか」。日々厳しい現実に直面している大人からすると、たしかに、これはもっともな意見かもしれません。でも、安心してください。「サンタクロースがいる」ということは、決して子どもをだますことではないのです。

「ふしぎの住める空間」を、心にもつということ

ディック・ブルーナの「うさこちゃん」シリーズの翻訳でも知られる児童文学者・松岡享子さん(1935年3月12日〜)は、サンタクロースが子どもの心に与える影響について、このように語っています。
「心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。」
この「心の空間」は、サンタクロースという目に見えないものを信じることによってつくられる、想像力のキャパシティといえるかもしれません。魔法使いや妖精、言葉を話す動物、タイムマシーンなど、サンタクロース以外にも、実際には目に見えない「ふしぎなもの」が大好きな子ども時代。空想物語やおとぎ話を読みふけって、登場人物になり切ってわくわくした記憶。ふしぎなものをたっぷり心の中に蓄える空間をもつことこそ、私たちがサンタクロースを大切にすべき理由なのですね。

サンタクロースが去った後に、残してくれる宝もの

幼い日に、心からサンタクロースの存在を信じることは、その人の中に、信じるという能力を養います。大切なのは、サンタクロースそのものではなく、サンタクロースが子どもの心にはたらきかけて生み出すこの能力なのです。
「のちに、いちばん崇高なものを宿すかもしれぬ心の場所が、実は幼い日にサンタクロースを住まわせることによってつくられるのだ。」と、松岡さんは記しています。
遠い昔に去ってしまったサンタクロースは、大切な宝ものを心の中に残してくれました。あなたの心の空間には、いま何が宿っていますか。

参考文献
松岡享子 『サンタクロースの部屋 子どもと本をめぐって』こぐま社 2015
引用
松岡享子 「サンタクロースの部屋」朝日新聞 1973