北海道では紅葉も終わり、そろそろ冬が迫ってきました。そんなときに恋しくなるのが、アツアツの汁物です。各地の郷土料理の汁物では、青森のせんべい汁をはじめ、のっぺい汁やだご汁などがありますが、北海道の郷土汁といえば、古くからある三平汁や鉄砲汁、そして、今や定番となったスープカレーがあります。すでにストーブの季節となった北海道。汁物で温まりたい季節になりました。

タラの三平汁。シンプルな塩味。
タラの三平汁。シンプルな塩味。

困ったときの三平汁。常備野菜と塩漬けの魚で、すぐに作れる定番の汁物

北海道は日本の中でも歴史が浅い土地ですが、そんな北海道で200年も前の江戸時代から食べられてきたのが三平汁です。名前の由来は、当時の松前藩にいた齊藤三平という人がはじめた料理だからという説や、有田焼の三平皿というやや深い皿に盛られたという説などがあり、はっきりとはわかりません。
材料はとてもシンプルです。メインは塩漬けした魚。サケやタラ、ニシンなどを使います。野菜は、大根、ジャガイモ、ニンジン、長ネギなど、どこの家庭にもある保存野菜。ほかに、あれば、豆腐やインゲンなども使います。
昆布のダシで魚と野菜を煮て、火が通ったら塩で味を調え、最後に長ねぎを入れればできあがり。汁は透明。塩漬けした魚の旨味が野菜に染み込んで、体の芯まで温まります。
「今日、何食べようかなあ…」と献立に困ったとき、魚も野菜も保存がきくもので作る三平汁は、まさにお助けメニュー。冬がしばれる北海道ならではの郷土料理といえるでしょう。
〈参考:農林水産省「日本各地の郷土料理 北海道 三平汁」〉
〈参考:北海道ぎょれん 鮭の三平汁〉

塩漬けした鮭の三平汁もおいしい。
塩漬けした鮭の三平汁もおいしい。

カニの脚が鉄砲の筒のようだから「鉄砲汁」。道東の花咲ガニが有名

カニを使った汁物は普通はカニ汁とよばれますが、北海道の特に道東では鉄砲汁とよびます。名前の由来は、ぶつ切りにしたカニの脚に箸を入れて黙々と身をほじくり出す仕草が、まるで昔の鉄砲を掃除している姿に似ていることから、鉄砲汁となったといわれています。
鉄砲汁にはタラバガニや毛ガニも使われますが、道東ではゴツゴツした花咲ガニが一般的です。こちらも作り方は簡単。カニと好みの野菜(なくてもよい)を煮込み(昆布ダシを使ってもよい)、味噌で味つけして、最後に豆腐とネギを入れれば完成。カニからいいダシが出るので、これだけでおいしい鉄砲汁になります。
根室名物のお土産では、「花咲がに てっぽう汁」が定番です。殻つきの花咲ガニの身とスープが入っているので、2~3倍の水で薄めて味噌で味を調え、豆腐とネギを入れたら完成。簡単に鉄砲汁を味わうことができるので、人気のお土産です。

みそ味で食べる。カニのダシがおいしい。
みそ味で食べる。カニのダシがおいしい。

もはや定番のスープカレー。札幌発祥。薬膳をヒントにしたカレー味のスープ

今や北海道の定番メニューとなったスープカレーは、札幌が発祥です。中国の薬膳と、インドネシアのソトアヤムなどをヒントにした、スパイスのきいた汁気が多いカレー味のスープです。2000年ごろから全国的に広まり、スープカレーブームがおきました。
汁物を大きくとらえた場合、今や北海道の郷土料理ともいえるスープカレーは、汁物としてくくってもいいのではないのでしょうか。
作り方の基本は、具とスープを別に調理します。スープはスパイシー。パプリカやコリアンダー、カルダモンなど、各店によって使われるスパイスが違いますが、基本的にサラサラです。具となる野菜や肉は大きくてぶつ切りです。骨つきのチキンと、ジャガイモやニンジン、タマネギが入るのが基本です。店によっては肉のかわりに魚介類を使ったり、カボチャやピーマン、ゆで卵が入ったりもします。
食べるときは、ご飯をスプーンですくってスープに浸しますが、もちろんスープをご飯にかけてもOKです。
肉や野菜がスパイスのきいたスープにゴロゴロ入っているのでヘルシーなスープカレー。最近はスープカレーの素も数多く出回っているので、手軽に作ることができます。
〈参考:北海道ファンマガジン「札幌市の新名物 スープカレーって何なの」〉
北海道ではもう雪の便りが届きはじめ、ストーブが必需品となっています。雪が積もってしまえば、逆に寒さにも慣れるのですが、道路に枯葉が舞い散るこの時期は、真冬よりもかえって寒い気がするから不思議です。そんなとき、夕食にアツアツの汁物があると、体の芯から温まります。北海道には三平汁や鉄砲汁以外にも、ごっこ汁やかじか汁など、魚介類を使った汁物が各地で好まれています。あなたの地域の定番の汁物は何ですか?