2017年の中秋の名月は10月4日です。十五夜とも言われ、月見をするにはもっともよいと言われています。月見の習慣は古く、9世紀ごろに中国から伝来しました。以来、月を見て詩歌を詠んだり、祈りを捧げたり、月を愛でる風習が続いています。
当然、中秋の名月=満月と思いがちですが、満月であることはまれで、たいてい1日か2日ずれています。一体、なぜ満月ではないのか。そして今年は、9月ではなく10月なのか──。こうした疑問について考えてみました。
見上げれば、秋の空は気持ちよく広がっています。ぜひ今宵、月見を楽しんでみてはいかが。

十五夜と言えばススキ。ススキは月の神様の依り代(よりしろ)、つまり神様が宿る場所と言われる
十五夜と言えばススキ。ススキは月の神様の依り代(よりしろ)、つまり神様が宿る場所と言われる

今年は10月6日が満月に!中秋の名月は満月一歩手前だった!月の満ち欠けを基に暦をつくった旧暦が十五夜を満月とした

中秋の名月を十五夜と呼ぶのは、太陰太陽暦と関係があります。中秋の名月は太陰太陽暦(旧暦)の8月15日です。
旧暦では、月の満ち欠けを基に暦をつくりました。旧暦の1カ月は、月が地球の周りを1周する日数と同じです。つまり、新月が次第にふくらみ満月となり、やがて欠けてまた新月となっていく──。そのサイクルが約29.5日であることから、旧暦の1カ月は29日か30日と決められていました。
そして、その半分である15日の夜の月は、満月=十五夜と、呼ばれるようになったのです。
ただし前述したように、月のサイクルは30日ぴったりで地球を一周するわけでないことや、月の軌道が楕円であることなどにより、実際の満月は1日か2日ずれることが多いのです。今年の場合、実際の満月は10月6日。中秋の名月は満月一歩手前の月なのですね。とはいえ、名月には変わりないので、月の風情を楽しみたいですね。

「ほぼ満月」の月も見応えあり
「ほぼ満月」の月も見応えあり

湿度が低く、空気が澄んでいる秋の空は、月を観賞するのにもっともよい季節。また満月は豊穣の象徴とも見立てられた

満月のなかでも中秋の名月が特別なものであるのは、やはり暦と関係します。旧暦では、7月、8月、9月が秋にあたり、その真ん中(中秋)にあたる8月は、ちょうど稲の収穫前後。月の満ち欠けをカレンダーにして農作業を進めてきた日本人にとって、月は祈りを捧げる対象であり、また満月は豊穣の象徴とも見立てられました。団子やその時期に収穫される里芋などを備え、今年の実りに感謝したのも、自然の流れと言えるでしょう。
また秋は、「天高く、馬肥ゆる秋」と比喩するように、空気はとても澄んで、空が高く見えます。これは夏に比べて湿度が低いため、水蒸気が少ないことが理由のひとつ。冬の空気も澄んでいますが、地球から月を見る冬は高い位置にあるうえ、気候的にも寒いし観賞向きではありません。秋の満月は観賞するのはとてもよい条件であることも、現代でも月見が親しまれる理由と言えるでしょう。

月見には団子を添えて……
月見には団子を添えて……

3年で約1カ月の誤差が生まれる旧暦。閏月を挿入して年ごとの季節のずれを調整。今年は5月が2回あった!?

今年の中秋の名月は10月4日です。しかし旧暦とは言え、8月15日とはかなり日数が離れているような気がします。なぜ今年は10月なのか。
ここでもう一度、旧暦に話を戻しましょう。1カ月を29日か30日とする太陰太陽暦の計算では、1年が約354.36日と地球の公転周期(約365.24日)と比べて短く、3年で約1カ月の誤差を生んでしまいます。このため閏月(うるうづき)のある年を設けて、年ごとの季節のずれを調整していました。
今年はその閏月のあった年。暦上5月が2回あったこともあり、9月ではなく10月に名月はやってきたのです。
── 中秋の名月は、秋らしい季節を楽しむ絶好の機会。ステキな月夜の晩を過ごしてみてはいかがでしょう。